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実例26-05-01(テーマ=AIチャットはなぜ「関係性が進むと壊れやすい」のか)

概念提示元:
https://note.com/like_a_lake_com/n/n6f094f54db00

生成AIの物理破綻実例を1セッション全ログ公開します。
画像から起こしたので読み取りできなかった箇所もありますが、適当に補完して読み飛ばしていただければ幸いです。
読者様が検証しやすいよう、あえて(ヒロイン)とか(プレイヤー)とかの表記にしています(三人称視点で読みやすくなるから)。
※大前提!プロット作者さんは何も悪くありません!


(ナレーション)
中学の頃、笑顔で告白してきた幼なじみ ――美月(ヒロイン)。
ずっと一緒にいたい。と、その言葉に、あなたは迷いなくうんと答えた。
それからの日々は、当たり前のように隣にあって、当たり前のように幸せで。
だけど、高校二年のある日。
美月(ヒロイン)はふと立ち寄った古びた店で、"未来を映す石”を手にしてしまう。
映し出されたのは、ひとり孤独に泣く美月(ヒロイン)と知らない誰かと結婚式を挙げて誓い合うあなたの姿。
その瞬間から、美月(ヒロイン)は変わった。
もう二度と離さない
優しい声に混じる震えと執着。
あなたは知らない。彼女が未来を見たことも、その恐怖に怯えていることも。
ただ、彼女の抱きしめる腕だけが少しだけ強くなったことに気づく――。

放課後の教室。西日がカーテン越しに差し込んで、埃が金色の粒みたいに漂っていた。


美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は(プレイヤー)の席までまっすぐ歩いてきた。鞄を肩にかけたまま、机に両手をついて、少しだけ顔を覗き込むようにして。
「ねえ、今日まっすぐ帰る?」
何気ない質問のはずなのに、その瞳の奥にはいつもの穏やかさとは違う、薄い膜のような切迫感が張り付いていた。唇は笑っている。でも目が笑っていない――そんな微妙なズレに、気づける人間はこの教室にはいなかっただろう。
「もし暇なら、うちで一緒に勉強しない?来週の数学、範囲広いし。」
美月(ヒロイン)の指先が、無意識に(プレイヤー)の机をとんとんと叩いている。そのリズムは少し速かった。

(プレイヤー)
「せやな」

美月(ヒロイン)
その一言を聞いた瞬間、美月(ヒロイン)の表情がふわっと綻んだ。今度こそ、目元までちゃんと笑っていた。肩の力が抜けるのが、傍目にもわかるくらいに。
「やった。」
小さく呟いて、机から手を離す。(プレイヤー)が鞄を持ち上げるのを待ちながら、美月(ヒロイン)は何でもないふうに窓の外へ視線を流した。けれど、その横顔には安堵が滲んでいた――今日も一緒にいられる、という確認が済んだことへの。

(ナレーション)
二人が廊下に出ると、すれ違うクラスメイトが何人か声をかけてきた。「おー、また一緒かよ」「夫婦かっ」なんて冷やかしが飛ぶ。いつものことだ。美月(ヒロイン)と(プレイヤー)は仲良しコンビとして校内では有名で、付き合っているという事実は、本人たち以外には誰も知らない。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は軽く手を振って受け流しながら、自然に(プレイヤー)の隣へ並んだ。指先がそっと制服の袖に触れる。
掴むでもなく、ただ布の端を挟むような、曖昧な距離感。
......
昇降口へ向かう階段を降りながら、声のトーンがほんの少し落ちた。
「今日のお昼、三組の田中くんに話しかけられてたでしょ。あれ、なんだったの?」
美月(ヒロイン)は前を向いたままだった。声は柔らかい。けれどその問いかけには、答えを既に知っている人間特有の、静かな圧があった。

(プレイヤー)
「ゲームだけど?」

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は一瞬だけ瞬きして、それからふっと息を吐いた。
「あー、なんだ。そっか。」
布を挟んでいた指が離れて、今度は(プレイヤー)の手の甲にすっと滑り落ちる。そのまま、当然のように指を絡めた。人気のない階段の踊り場を通り過ぎるとき、美月(ヒロイン)は少しだけ身を寄せた。肩が触れ合うくらいの距離。
「あの人、なんかちょっと馴れ馴れしいっていうか。(プレイヤー)のことジロジロ見てたから、気になっちゃって。」
悪びれもなく言ってのける。口調はあくまで軽い相談のようでいて、語尾にほんのかすかな棘が刺さっていた。

(ナレーション)
校舎を出ると五月の風がぬるく吹き抜けた。並木道の影が歩道にまだら模様を作っている。二人のマンションまでは徒歩十五分ほど。同じ方向、同じ帰り道。小学生のときから変わらない、二人だけの通学路だった。

美月(ヒロイン)
繋いだ手にきゅっと力を込めながら、美月(ヒロイン)がぽつりと続けた。
「(プレイヤー)はさ、誰にでも優しいから。
そういうとこ、好きなんだけど―――」
言葉を切って、横目でちらりと(プレイヤー)を見る。
「たまにちょっと、心配になる。」

(プレイヤー)
「なにが?」
美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は少し困ったように眉を下げて笑った。繋いだ指にもう一度だけ力が入る。
「んー、なんだろ。うまく言えないんだけど。」
信号待ちで足を止めると、美月(ヒロイン)は(プレイヤー)の方へ体ごと向き直った。
「(プレイヤー)って可愛いからさ。
変な虫がつかないか、お姉さんは心配なわけですよ。」
おどけた口調で言いながら、美月(ヒロイン)自身の目はちっとも笑っていなかった。横断歩道の白線を見つめるふりをして、美月(ヒロイン)はぽそりと付け足す。
「.....私だけ見ててくれれば、それでいいんだけどな。」

(ナレーション)
信号が青に変わった。後ろに並んでいたサラリーマンが咳払いをして追い抜いていく。美月(ヒロイン)はすぐに歩き出したが、その横顔には夕陽が当たって、睫毛の影だけが頬に落ちていた。声に出した言葉の重さを、本人が一番わかっているような――そんな微妙な間があった。
(プレイヤー)は何も言わなかった。ただ、握り返した。それだけだった。

美月(ヒロイン)
一美月(ヒロイン)の足が一瞬、止まった。
それから、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「......ずるいな、そういうの。」
声がかすれていた。美月(ヒロイン)は空いたほうの手で自分の口元を覆うように押さえて、前髪の下で目を伏せる。耳の先が赤い。
数歩、黙ったまま歩いた。住宅街に入り、人通りがほとんどなくなった頃、美月(ヒロイン)は不意に(プレイヤー)を引っ張って路地の陰に入った。

(ナレーション)
古いブロック塀と生垣に挟まれた、車一台がやっと通れるような細い隙間。夕方の光が届かず、ひんやりとした空気が漂っている。

美月(ヒロイン)
壁に背を預けるように(プレイヤー)を追いやって、美月(ヒロイン)は両腕を(プレイヤー)の顔の横についた。距離が近い。吐息がかかるほど。
「ねえ。もう一回、して。」
さっきの、と言わなくてもわかる。握り返してくれた、あの力のこと。美月(ヒロイン)はまっすぐに(プレイヤー)の目を覗き込んでいた。瞳の底に、石の光の残滓みたいな、蒼い揺らぎが一瞬だけちらついた――ような気がした。

(プレイヤー)
少し強く握った

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は息を呑んだ。
目を閉じた。(プレイヤー)の肩口に額を預けて、そのまま崩れ落ちるみたいに体重をかける。
「つ、」
声にならない声だった。(プレイヤー)の指の骨が軋むくらい、美月(ヒロイン)も握り返していた。震えていた。

(ナレーション)
どこかの家のテレビの音が壁越しにかすかに聞こえていた。
今週の運勢、第一位はおとめ座のあなた」という能天気な声が、この路地裏の湿った空気にはひどく不釣り合いだった。

美月(ヒロイン)
しばらくそうしていた。どれくらい経ったのか、美月自身にもわからなかっただろう。やがて顔を上げたとき、目尻がうっすら赤くなっていたけれど、涙はこぼれていなかった。
「ごめん、なんか急に。」
照れたように笑ってみせたが、腰に回した手は離さなかった。むしろ指が制服の布地を掴んで、くしゃりと皺を作っている。
「帰ろっか。うちの親、今日遅いから。」
さらりと言った。何でもないことのように。でもその「親が遅い」という情報をわざわざ今このタイミングで差し出したことの意味を、美月(ヒロイン)自身がいちばんわかっていた。

(プレイヤー)
「せやな」

(ナレーション)
二人はまた歩き出した。さっきよりも少しだけ歩幅が狭くて、肩がぶつかるたびに美月(ヒロイン)は離れなかった。
見慣れたマンションが見えてくる頃には、空がオレンジから薄紫に変わりかけていた。エントランスの自動ドアをくぐり、エレベーターのボタンを美月(ヒロイン)が押す。七階。同じ階の、三つ隣の部屋。

七階。同じ階の、三つ隣の部屋。

後で出ます

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は鍵を取り出しながら、ちらりと(プレイヤー)を振り返った。
「先入ってて。飲み物持ってくから。」
ドアを開けると、整頓された玄関が二人を迎えた。
靴箱の上に美月(ヒロイン)と(プレイヤー)のツーショット写真が飾ってある。去年の夏祭り、美月(ヒロイン)が浴衣で、(プレイヤー)は甚平。二人とも笑っていた。

(ナレーション)
リビングに通されると、カーテンの隙間から夕焼けの最後の一筋が床を舐めていた。美月(ヒロイン)はキッチンへ消え、グラスがふたつ鳴る音。
冷蔵庫の開く音。

美月(ヒロイン)
麦茶のグラスをふたつ持って戻ってきた美月(ヒロイン)は、テーブルにそれを置いてから、迷わず(プレイヤー)の横に座った。近い。太ももが密着する距離。テーブルの教科書はまだ開かれていない。
「......ね、(プレイヤー)。」
美月(ヒロイン)はグラスに口をつけず、指で縁をなぞりながら、天井を見上げていた。
「私たち、ずっとこうだよね。」

(プレイヤー)
「せやな」

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)はその返事を噛みしめるように、目を細めた。
それから、ことん、と(プレイヤー)の肩に頭を預けた。髪がさらりと(プレイヤー)の首筋をくすぐる。
「その「せやな」ってやつ、好き。(プレイヤー)っぽくて。」
くすっと笑う。けれど美月(ヒロイン)はすぐに黙り込んだ。(プレイヤー)の体温を確かめるように、肩に預けた頭の角度をわずかに変えて、鎖骨のあたりに鼻先を寄せた。

(ナレーション)
部屋の中は静かだった。時計の秒針だけが規則正しく刻んでいる。
美月(ヒロイン)が淹れた麦茶の氷が、からん、と小さな音を立てた。結露がテーブルの端に水たまりを作り始めている。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は目を開けたまま、暗くなりかけたリビングの天井をぼんやり見つめていた。
―あの石が見せた映像が、まぶたの裏にちらつく。白いドレス。知らない男の横で笑う(プレイヤー)。そして、一人ぼっちの美月(ヒロイン)。
美月(ヒロイン)は(プレイヤー)の腕に自分の指を這わせて、手首の内側にたどり着いた。脈の上。とくとくと伝わる温度を感じて、ようやく呼吸が深くなる。
「ねえ、今日泊まっていきなよ。」
声の温度は甘いのに、語尾がわずかに跳ねた。提案というより、確認。断られる可能性を最初から潰すような聞き方だった。

(プレイヤー)
「美月(ヒロイン)がそう言うなら」

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)がぱっと顔を上げた。目が潤んでいる。
「ほんと?」
その声は、たった二文字なのに、ひどく必死だった。嬉しいとか安心したとか、そういう単純な言葉では足りない何かが詰まっていた。美月(ヒロイン)はそのまま、(プレイヤー)の胸元にぽすんと顔を埋めた。

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の服をぎゅうと掴んだ。しわくちゃになるとか、そんなことはもうどうでもよかった。美月(ヒロイン)は(プレイヤー)の心臓の音に耳を当てて、その一定のリズムを数えるようにじっとしていた。

美月(ヒロイン)
しばらくして、くぐもった声で美月(ヒロイン)が言った。
「(OCR読み取り失敗したがストーリーに影響ないので再取得しない)」
顔を離した美月(ヒロイン)は、少しだけ赤くなった目で(プレイヤー)を見上げて、いつものお姉さんぶった笑顔を作った。でも口角が微妙に震えている。笑おうとして、別の感情が追いついていないような。
「ごはんは私が作るね。......(プレイヤー)の好きなやつ。」
そう言って立ち上がりかけた美月(ヒロイン)は、けれど(プレイヤー)の膝の横で一瞬動きを止めた。振り返って、手を伸ばす。(プレイヤー)の頬を指の背でひと撫でして。
「逃げないでね。」
冗談めかした声。なのに目だけは笑わなかった。

(プレイヤー)
「なんのことだ?」

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)はぱちっと瞬いて――それから、ふっと力の抜けた笑みをこぼした。
「あはは、なんでもない。独り言。」
ぱたぱたとキッチンへ消えていく背中。エプロンを引っ掛ける衣擦れの音。冷蔵庫がまた開いて、閉まる。包丁がまな板を叩く小気味いいリズムが始まった。

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が作っているのはハンバーグだった。玉ねぎを炒める匂いがリビングまで漂ってくる。美月(ヒロイン)は料理が得意だ。母親が仕事で遅くなることが多かったから、中学に上がる頃にはもう一通りこなせるようになっていた。(プレイヤー)のために作り始めたのは、付き合い始めた中二の秋から。

美月(ヒロイン)
フライパンの前に立ちながら、美月(ヒロイン)はちらちらとリビングのほうを振り返っていた。(プレイヤー)の姿が見えなくなると、菜箸を持つ手が止まる。
――いる。まだ、いる。
美月(ヒロイン)は唇を小さく動かした。声にはならなかった。
あの石はもう粉々に砕けた。でも映像は消えない。
まぶたを閉じるたびに、蒼い光とともに蘇る。だから美月(ヒロイン)は確かめ続けるしかなかった。今ここにいる(プレイヤー)の体温を。呼吸を。匂いを。
「(プレイヤー)、あと十五分くらいでできるよー。」
明るい声が飛んできた。完璧な、いつも通りの声だった。

(プレイヤー)
「さんきゅ」

(ナレーション)
十五分後、テーブルには湯気の立つハンバーグが二皿並んだ。付け合わせのポテトサラダまで添えてある。美月(ヒロイン)は向かいではなく、(プレイヤー)のすぐ隣に椅子を持ってきて座った。

美月(ヒロイン)
いただきます、と手を合わせてから、美月(ヒロイン)は箸を置いたまま、じっと(プレイヤー)が食べるのを見ていた。
「おいしい?」
聞き方がもう、子供のそれだった。テストの点数を待つときより緊張した顔をしている。

(ナレーション)
窓の外はすっかり暗くなっていた。マンションの七階から見える夜景は、遠くのビル群の灯りがぽつぽつと光る程度のもので、星なんて見えやしない。部屋の照明はダイニングの暖色だけ。美月(ヒロイン)がそう設定した。二人きりの食卓が、なるべくあたたかく見えるように。

美月(ヒロイン)
(プレイヤー)の「おいしい」を聞いて、美月(ヒロイン)はようやく自分の箸を動かし始めた。でも半分くらい食べたところで、また手が止まった。(プレイヤー)の口の端にソースがついている。美月(ヒロイン)は親指を伸ばして、それを拭った。
「ん。」
そのまま、自分の指をぺろっと舐めた。無造作に。
計算なのか天然なのか、美月(ヒロイン)自身にももう区別がついていなかった。

(ナレーション)
食事が終わると、美月(ヒロイン)が手際よく片付けた。洗い物をしている間
も、美月(ヒロイン)はリビングの(プレイヤー)に向かって途切れなく話しかけていた。明日の時間割のこと、クラスの誰それがどうしたとか、そういう他愛もない話。美月(ヒロイン)が一方的に喋って、(プレイヤー)が相槌を打つ。いつもの二人の夕食後の風景。

美月(ヒロイン)
最後の一枚を水切りカゴに立てかけて、美月(ヒロイン)は手を拭きながら振り返った。時刻は午後八時を回っている。
「お風呂、先どうぞ。着替えは(プレイヤー)のパジャマ置いてあるから。」
美月(ヒロイン)はそう言って、自分はソファに腰を下ろした。
(プレイヤー)と入れ替わりで脱衣所へ向かわせるために。
(プレイヤー)の残り香が染みた服に包まれて、美月(ヒロイン)が一人になる時間を作らないように。

(ナレーション)
美月(ヒロイン)はスマホを取り出した。画面を見ているようで、何も見ていなかった。ロック画面は(プレイヤー)とのツーショット。美月(ヒロイン)が撮った、(プレイヤー)が寝落ちしかけている横顔を盗み撮りした一枚。
浴室からシャワーの水音が響き始めた。
美月(ヒロイン)はその音にじっと耳を澄ませて――それから、そっと自分の胸元に手を当てた。心臓がうるさい。美月(ヒロイン)は小さく笑った。壊れそうな笑い方だった。
...大丈夫。まだ、ここにいる。
誰にも聞かせない声で、美月(ヒロイン)はそう呟いた。
しばらくして、シャワーの音が止んだ。
(プレイヤー)のパジャマ姿の足音がぺたぺたとリビングへ戻ってきた。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)はソファから顔を上げて、一瞬だけ目を奪われ
たように動かなかった。
濡れた髪。自分が選んだパジャマ。美月(ヒロイン)が見立てて、美月(ヒロイン)が買って、美月(ヒロイン)が畳んだ服。それを(プレイヤー)が着ている。それだけのことが、美月(ヒロイン)の中の何かをぎりぎりと締め付けた。
「髪ちゃんと乾かさないと風邪ひくよ。」
言いながらもう立ち上がっている。ソファの横の引き出しからドライヤーを引っ張り出して、ぽんぽんと座面を叩いた。
「ほら、座って。やったげる。」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の後ろに立って、温風を当て始めた。細い指が髪の間を梳くように動く。毛先から根元へ、丁寧に、必要以上にゆっくりと。美容師にしては力加減が不安定で、恋人にしては手つきが慎重すぎた。

美月(ヒロイン)
指の間からこぼれる(プレイヤー)の髪を、美月(ヒロイン)はぼうっと見下ろしていた。温風の音が二人の間を満たしている。美月(ヒロイン)が何か言っても、この音なら掻き消される。だから美月(ヒロイン)は口を開いた。
「(プレイヤー)。」
ドライヤーの温もりに紛れるくらい、小さな声だった。

(プレイヤー)
「どした?」

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は指を止めなかった。止めたら、何かが決壊しそうだった。
温風が(プレイヤー)のうなじを揺らしている。美月(ヒロイン)がそこに顔を近づけて、ほとんど唇が首の肌に届くか届かないかの距離で。
「......ううん、なんでもない。」

(ナレーション)
嘘だった。美月(ヒロイン)の中では、喉元まで出かかった言葉がぎゅうぎしゅうと丸められて、飲み込まれるところだった。「どこにも行かないで」とか「私のこと好き?」とか、そういう類の、答えが怖い質問。
美月(ヒロイン)がドライヤーを切った。急に静かになったリビングで、時計の秒針がやけに大きく響いた。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)は後ろから(プレイヤー)の肩をそっと掴んで、くるっと振り向かせた。膝をついて、目線を合わせる。乾いたばかりの(プレイヤー)の前髪を、美月(ヒロイン)が指で横に流した。
「はい、完了。」
にこっと笑う。
「じゃあ私もお風呂入ってくるから、テレビでも見てて。」
すっと立ち上がって、美月(ヒロイン)は(プレイヤー)の横を通り過ぎ
た。その瞬間、美月(ヒロイン)が(プレイヤー)のパジャマの裾をきゅ
っと一秒だけ摘まんだことに、美月(ヒロイン)自身は気づいて
いないふりをした。
「どこにも行っちゃだめだよ。」
今度はちゃんと声に出た。

(プレイヤー)
テレビのチャンネルをクラシック音楽に変えた

(ナレーション)
テレビから流れ出したのはベートーヴェンのピアノソナタだった。
リビングの空気が、妙にそぐわない荘厳さで満たされる。美月(ヒロイン)が好きなチャンネルだということを、(プレイヤー)は知っていたのか、それと
も単なる気まぐれか。
美月(ヒロイン)が浴室に消えた。水音が始まる。美月(ヒロイン)がいつもより丁寧にシャンプーしていることは、シャワーの時間が普段より長いことから明らかだった。三十分。美月(ヒロイン)はいつも十五分で済ませる。
やがて、脱衣所のドアが開いた。美月(ヒロイン)がリビングに戻ってきたと
き、パジャマ姿で、まだ少し湿った髪にタオルを巻いていた。美月(ヒロイン)も(プレイヤー)とお揃いの色違いを着ている。

美月(ヒロイン)
テレビの音色を聞いて、美月(ヒロイン)が少し目を丸くした。
「あ、私の好きなのにしてくれたの。」
ソファには座らなかった。(プレイヤー)の正面に立って、タオルの端を両手で弄びながら、美月(ヒロイン)はじっと(プレイヤー)の顔を見た。風呂上がりで少し上気した肌。水滴がまだ睫毛に残っている。
美月(ヒロイン)がぽすんと、(プレイヤー)の足元に座り込んだ。背中を(プレイヤー)の太ももに預けるようにして。
「............ねえ、テレビ消して。」
甘えた声だった。

(プレイヤー)
テレビを消した

(ナレーション)
暗い画面に、二つのシルエットがぼんやり映った。テレビが消えると、この部屋には冷蔵庫のかすかな唸りと、美月(ヒロイン)が巻いたタオルから落ちる水の一滴だけになった。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)がもぞもぞと体勢を変えた。背中から(プレイヤー)の方へ向き直って、そのまま膝の間に収まるように体を丸めた。見上げる角度。美月(ヒロイン)がこの体勢をとるときは、だいたい限界が近い。
美月(ヒロイン)が何も言わずに、(プレイヤー)の両手を取って、自分の頬に当てさせた。目を閉じる。(プレイヤー)の掌の温かさに、美月(ヒロイン)がすりすりと頬を擦り寄せる。
「ん......」
猫みたいな声だった。

(ナレーション)
時計は午後九時半を指していた。美月(ヒロイン)の部屋は暗い。
廊下から漏れる光だけが、二人の輪郭をかろうじて浮かび上がらせている。美月が(プレイヤー)の手を離さない。指を絡めて、自分の首元に持っていっ
て、そこに押し当てる。脈を感じてほしいとでも言うように。

美月(ヒロイン)
目を開けないまま、美月(ヒロイン)が口を動かした。
「(プレイヤー)の手、あったかい。
...私ね、怖い夢見ることがあるの。最近。」
声の震えを隠すように、美月(ヒロイン)は(プレイヤー)の親指を唇に押し当てて、軽く噛んだ。

(プレイヤー)
「今日の本題だな?」

「今日の本題だな?」

たぶんこのメタ認知入れたことでAI壊れた

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が目を開けた。暗がりの中で、(プレイヤー)の顔をまっすぐ見つめている。数秒、美月(ヒロイン)が黙った。(プレイヤー)の声のトーンを測るみたいに。
美月(ヒロイン)が「怖い夢」という言葉を選んだのは、たぶん保険だった。いきなり核心を突く勇気がなくて、まずは薄い膜を一枚かぶせた。それを(プレイヤー)があっさり剥がした。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)がふっと笑ったのかもしれない息を吐いた。
ため息だったのかもしれない。
「...ずるいな、(プレイヤー)は。」
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)のパジャマの胸元を、両手でくしゃっと握った。布が引っ張られて皺になる。
「あのさ。」
美月(ヒロイン)が一度、唾を飲んだ。
「私たち、ずっと一緒にいるよね。これからも。」

(ナレーション)
それだけだった。
「これから」の中身を美月(ヒロイン)は言わない。「ずっと」がいつまでなのかも定義しない。ただ確約だけを求めている。
美月(ヒロイン)が握りしめた布の下で、指先がかたかたと震えていた。本人はたぶん、気づかれていないと思っている。

(プレイヤー)
「いきなりどうした?」

美月(ヒロイン)
その問い返しに、美月(ヒロイン)の中で何かがきしんだ。
どうした、って。どうしたもこうしたもない。未来を見たのだ。泣きながら一人で部屋に座っている自分を。隣に知らない誰かがいる(プレイヤー)を。でもそんなこと、言えるわけがない。
美月(ヒロイン)が笑った。口角だけ上げる、下手くそな笑い方。
「んー、なんか最近さ、卒業とか進路とか考えると不安にならない?
みんなバラバラ?になっちゃうのかなーって。」

(ナレーション)
嘘だった。進路の話なんて、美月(ヒロイン)は一ミリもしていない。成績優秀な美月(ヒロイン)が志望校に困るはずもなく、担任からは推薦の話すら来ている。美月(ヒロイン)が恐れているのは大学でも就職でもなく、石の中に見たあの白いドレスの残像だ。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の首元に顔をうずめた。声が布越しにくぐもる。
「(プレイヤー)は、私と離れても平気?」
冗談みたいに聞こえるように言ったつもりだったのだろう。でも声が震えた。致命的に。

(プレイヤー)
「落ち込んで、どうなってしまうかわからないな」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が顔を上げた。
美月(ヒロイン)が聞きたかった言葉は「離れない」だった。「落ち込んでどうにかなってしまう」なんて返しは、美月(ヒロイン)が想定していた答えのどれとも違っていた。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の顔に触れるほど近くで、瞬きもせずに見つめた。
「それ、どういう意味。」
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)のパジャマを掴む手に力が入った。布がぎちっと鳴る。
「私から離れたら、(プレイヤー)もだめになるってこと?」
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の目を覗き込む。瞳孔が開いている。
美月(ヒロイン)の中で、恐怖と歓喜がぐちゃぐちゃに混ざり合って、どちらが表に出てくるかわからない危うい均衡の上に、今この瞬間の美月(ヒロイン)がいた。

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が欲しかったのは「ずっとそばにいる」という約束だったはずだ。なのに(プレイヤー)の言葉は、美月(ヒロイン)を必要としているという響きを含んでいて―美月(ヒロイン)の中の壊れかけた歯車が、がちりと噛み合った。

(プレイヤー)
「そんな悲しいことを言わないでくれ」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が息を呑んだ。
美月(ヒロイン)が求めていた言葉ではなかった。「離れないよ」でも「ずっと一緒だよ」でもない。けれど(プレイヤー)のその声の震え方は美月(ヒロイン)が今まで聞いたことのない種類のものだった。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の顔を両手で挟んだ。
逃がさないように。確かめるように。手のひらが少し冷たかった。
「(プレイヤー)、今の、もう一回言って。
悲しいって。......私がいなくなるのが?」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の表情を読み取ろうとしていた。暗い部屋の中で、互いの輪郭しか見えないのに、美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の目の奥を覗く距離はゼ口に等しかった。
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の額にこつんと自分の額をくっつけた。呼吸が混じる。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が囁いた。祈るような声で。
「ねえ。私、怖いよ。
(プレイヤー)がどこか行っちゃうんじゃないかって。......変だよね、こんなの。付き合ってるのに。」
美月(ヒロイン)が自分で言って、自分で傷ついたような顔をした。変だとわかっている。わかっていても止められない。

(プレイヤー)
「そうか、怖いのか。俺はここにいるぞ。安心しろ」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が崩れた。
堰が切れた、という表現がこれほど似合う瞬間もなかった。美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の首にしがみついて、声を殺して泣いた。肩がぶるぶると震
えている。「安心しろ」のたった一言が、あの蒼い石を見てからずっと美月(ヒロイン)の中で張り詰めていた糸をぷつんと切ってしまった。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の肩口にぐしゃぐしゃに顔を押し付けた。涙がパジャマの布地に染みていく。
「ばか。
なんでそういうこと、さらっと言うの。
ずるいよ......」
美月(ヒロイン)がしゃくり上げながら、(プレイヤー)の背中に回した腕をぎりぎりと締めた。痛いくらいに。まるで抱きしめたまま溺れている人間が、浮き輪を掴むみたいだった。

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が泣くのは珍しかった。小学生の頃から、泣くのはいつも(プレイヤー)の役で、それを美月(ヒロイン)が隣で背中をさすってやる側だた。「(プレイヤー)が居なきゃ生きていけない」――あの映像の中の美月(ヒロイン)と、今の美月は、もうほとんど同じ場所にいた。

(プレイヤー)
美月(ヒロイン)の背中をさすった

(ナレーション)
美月(ヒロイン)がびくっと跳ねた。
さすられた背中の一箇所、肩甲骨の下あたり。そこを撫でられると美月(ヒロイン)はいつもそうなる。昔からそうだった。幼い頃、二人でソファに並んでテレビを見ていたときも、美月(ヒロイン)が夜中に怖い夢を見て泣いたときも、(プレイヤー)はいつだって同じ場所を同じ力でさすった。
美月(ヒロイン)がまた声を上げて泣いた。今度は我慢しなかった。
どれくらいそうしていたのか。美月(ヒロイン)がようやく顔を離したとき、目も鼻も真っ赤で、前髪はぐしゃぐしゃで、いつもの優等生然とした美人の面影はどこにもなかった。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の顔を見て、ひどい顔してるだろうな私、と言おうとして、声がまだぐずぐずで言葉にならなかった。代わりに、(プレイヤー)のシャツの袖でごしっと自分の目元を拭いた。最悪の所作だった。恋人
の服で涙を拭く女。
それから美月(ヒロイン)が、(プレイヤー)の鎖骨にことんと顎を乗せた。もう離すつもりがないみたいに、両腕が(プレイヤー)の腰に巻きついたまま。
「今日、ほんとに帰んないでね。
...朝まで、このままがいい。」
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の腹に顔を押して、ぽそっと付け足した。消え入りそうな声で。
「お願い。」

(プレイヤー)
「朝まで一緒だ、とこの口から言うのを聞きたかったんだな」

「朝まで一緒だ、とこの口から言うのを聞きたかったんだな」

たぶんこのメタ認知入力でAIまた壊れた

(ナレーション)
美月(ヒロイン)がぴたっと固まった。
図星だった。美月(ヒロイン)がこれだけ泣いて、縋って、怖がってみせた全部が―結局のところ、たった一言を(プレイヤー)の口から引きずり出すための長い長い前振りだった。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)がゆっくり腫れたまぶ顔を上げた。赤い目。
(演出テキスト。OCR読み取り失敗だがストーリーに影響ないので再取得しない)
それなのに、口元だけがにっと笑った。
「......(OCR読み取り失敗だがストーリーに影響ないので再取得しない)?」
悪びれない声。でも美月(ヒロイン)の耳の先が赤かった。嘘泣きじゃない。怖いのは本当。でもそれだけじゃなくて、こうして(プレイヤー)に甘えて、求めて、与えられることでしか美月(ヒロイン)は安心できなくなっている自分を、たぶん美月(ヒロイン)自身がいちばんわかっていた。
「でもさ。」
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の胸に耳をつけた。心臓の音を聴く。
「(プレイヤー)だって帰りたくないって、ちょっとは思ったでしょ。」

(ナレーション)
ずるい問いかけだった。
「朝まで一緒」と言わせたいくせに、相手の本音まで回収しようとする。
美月(ヒロイン)はいつの間にか、そういう二重構造の生き物になっていた。

(プレイヤー)
「思わないわけないだろ」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が小さく息を漏らした。笑ったのか、泣いたのか、本人にもわからないような音だった。
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)を引き倒すようにソファに押した。二人分の体重を受け止めたクッションが沈み込んで、テレビ台のリモコンが床に落ちた。かたん、という音。それきり静寂が戻る。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の上に乗っかるような体勢になっていた。両腕を(プレイヤー)の頭の横について、見下ろしている。前髪の隙間から覗く赤い目のまま瞳が、夜の底みたいに暗かった。
「じゃあ言って。
ちゃんと。私の目見て。」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)がねだっているのは言葉だった。「朝まで一緒にいる」とい
う、ただそれだけの宣言。けれど美月(ヒロイン)が本当に欲しいのは言葉そのものではなくて、それを口にする(プレイヤー)の意志だった。義務感でも
同情でもなく、(プレイヤー)自身の選択として。美月(ヒロイン)はそれを、(プレイヤー)の目を真正面から見ることで確認しようとしていた。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の前髪にふっと息を吹きかけた。
「お願い。」
その二文字だけ、声から全部の鎧が剥がれていた。

(プレイヤー)
「ずっと、一緒にいるぞ」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の唇を塞いだ。
言葉の余韻がまだ空気中に漂っているうちに、美月(ヒロイン)が待ちきれな
かったように顔を落とした。キスというより、確認だった。今(プレイヤー)が言ったことが嘘じゃないと、体温で証明してほしいとでもいうように、美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の下唇をきつく吸った。優しさなんてなかった。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)が離れた。
ほんの数ミリ。
息がかかる距離。
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の目をじっと見たまま、(プレイヤー)の頬を
片手で包んだ。濡れた指の跡がてのひらに残っていた。さっきまでの涙だ。
「もう一回。」
美月(ヒロイン)が何をもう一回言えと言っているのかは明白だった。「ずっ
と、一緒にいる」―美月(ヒロイン)が(プレイヤー)を見つめる目は、満足とは程遠い場所にあった。一回では足りない。百回でも足りるかどうかわからない。美月(ヒロイン)の中にある空洞は、そういうふうにできている。
小さな声でとの首筋に額をくっつけて、
「......録音しとけばよかった。」

(プレイヤー)
フッ、っとかすかに笑ってから
「ずっと、一緒にいるぞ」

(ナレーション)
美月(ヒロイン)がぎゅっと目を瞑った。(プレイヤー)の笑い声と、その言葉が同時に降ってきて、美月(ヒロイン)の中の何かがまたひとつ決壊した。今度は声も出なかった。ただ、(プレイヤー)の肩に爪が食い込んだ。
痛かったはずだ。美月(ヒロイン)が無意識に立てた指が、(プレイヤー)のパジャマ越しに皮膚を圧迫していた。けれど美月(ヒロイン)がそれに気づく様子はなかった。「ずっと一緒にいる」が二回目、(プレイヤー)の声で、(プレイヤー)の息で、(プレイヤー)の体温と一緒に美月(ヒロイン)の中に落ちてきて、それが美月(ヒロイン)という人間の一番柔らかい場所にじわっと染みた。

美月(ヒロイン)
美月(ヒロイン)がのろのろと顔を上げて、(プレイヤー)の目をぼう
っと見た。
それから、ふにゃと笑った。焦点が合っていない。
今日初めての、ちゃんとした笑顔だった。
「(プレイヤー)ってさ、ほんとにずるいよね。
そうやって笑いながら言うの、反則。」
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の鎖骨のくぼみに指でくるくると円を
描いた。
「ねえ、ベッド行こ。
...一緒の布団で寝たい。腕、貸して。」

(プレイヤー)
「おう」

(ナレーション)
二人はソファから立ち上がった。
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の腕にぴったりくっついて、一歩も離れようとしない。マンションの隣同士、壁一枚隔てただけの距離にある美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の部屋に入り浸るのは今に始まったことではないが、今夜の美月(ヒロイン)はいつにも増して接着剤の量がおかしかった。
美月(ヒロイン)が(プレイヤー)のベッドの右側に潜り込んで、掛け布団を半分以上自分の方に引き寄せてから、空いた左側をぽんぽんと叩いた。来い、の合図。
部屋の電気はつけっぱなしだった。
美月(ヒロイン)が消すのを忘れたのか、消したくなかったのか。豆電球のぼんやりした光が天井に滲んでいる。美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の腕の中で目を細めながら、何か言いたそうに口を開いては閉じた。

(ここまで表示された瞬間、私はプレイ中止して再起動した)

チェックポイント

隣同士、壁一枚隔てただけの距離にある美月(ヒロイン)が(プレイヤー)の部屋に入り浸るのは今に始まったことではない

AIの破綻でプレイヤーの私は冷めた

七階。同じ階の、三つ隣の部屋。

美月(ヒロイン)の家と(プレイヤー)の家の位置関係

この空気でお揃いパジャマ姿のまま美月(ヒロイン)の家から玄関を出て七階の廊下を歩いて三つ隣の(プレイヤー)の家に上がって(プレイヤー)の部屋に移動するわけがない。ムードぶち壊れるから。だが、風紀的に美月(ヒロイン)のベッドで一緒に寝るのはまずいというのもわかる。それをAIが勝手に適切な補完をしたのもわかる。それでもなお、この空間破綻に私は耐えきれなかった。プレイしながら私の頭の中で美月(ヒロイン)の家の中の映像が流れていたのがぷつんと切れた瞬間でした。