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わたしだけじゃない 「10円拾わず人生を拾う」~元小学校の先生の自動販売機との思い出~

#自販機の思い出


相棒がいない!!


「いってきまーーーす!」と、家のドアを勢いよく開けたまではよかった。最寄り駅に着く直前で、青ざめた。
「え、水筒ないやん。」
いやいやいや、今日、教員採用試験なんですけど?!
人生かけた一大イベントなんですけど?!
喉を潤すはずの相棒を、玄関に置き去りにしてきたことに気づいた瞬間、私の顔から血の気が引いたのは言うまでもない。

電車か10円か、どっちかや!

喉カラッカラで、半ば白目を剥きながらホームへ駆け上がると、そこに救世主(に見えた)のがそう、自動販売機
「神様、仏様、自販機様ー!」
と心の中で叫んだ、たぶん・・・覚えてないけど(笑)

乗る予定の電車が来るまで、あと2、3分。
お茶をちゃっちゃと買って、すーっと乗れば、間に合うやん。
そう確信した私は、財布から小銭を取り出そうとした。その時( ゚Д゚)

チリンチリン!

鈴の音ちゃう💦
まるで漫画の効果音のように、私の指からスルリと抜け落ちた10円玉。
吸い込まれるように自動販売機の下へ、まさかのダイビング

喉が爆発寸前やった私。
泣く泣く別の10円玉を投入し、無事にお茶をゲット。
メーカー?アサヒちゃうなぁ…たしかダイドーだったような…いや、もうそんなんどうでもええんちゃうかな。

お茶をバッグにねじ込み、いざ、失われた10円玉を救出せんと自動販売機の下を覗き込むと…

何これ、10円玉の宝庫やん?!」

5、6枚の10円玉がキラキラと転がっているではないか。
どれが私の血と汗と涙の結晶である10円玉なのか、もはや判別不能。
とにかく届きそうなヤツを狙って、腕を必死に突っ込んだ。

なんでなん!
腕、細い方やけど!
腕長いから成人式の着物直してもらったけど!
そんな自慢の腕でも届かない!
あとちょっと!
あと、ほんの数ミリなのに!

その間にも、電車を待つ人々がチラッチラッと私を見ている。
「あ、なんか変な人おんで。」みたいな視線が痛い!
恥ずかしさで顔が爆発しそうになりながらも、
「早く取らなあかん!」
と焦っていると、非情にも電車の到着アナウンスが・・・
ゴォーという音とともに、電車が近づいてくるのが聞こえる🚃

ああ、あと少しで届きそうやのに…!
でも、この電車を逃したら、私の教員人生は始まれへん!
電車が扉を開けるその瞬間まで、私は諦めずに指を伸ばし続けた。

しかし、無情にも扉が開き、私の10円玉は、闇の底へと消えていった…。(正確には自動販売機の下に置いていったのだが)


10円、ありがとう、そしてさようなら!

恥ずかしい思いをした上に、さっき私をチラ見していたであろう人々と、まさかの同じ車両に乗り合わせるという罰ゲーム。
うつむき加減で座席に座り、バッグから取り出したお茶をゴクリ。

その時のお茶の味は、間違いなく人生で一番美味しかった。
喉の渇きと、10円との悲しみの別れ。
そして未来への希望が混じり合った、
複雑な味だった…はず…覚えてへんけど。

ふと冷静になって、あの自動販売機の下に転がっていた、私の以外の10円玉たちのことを考えた。
きっと、私と同じように諦めた人たちがいたんやろうな、と。
もしかしたら、もっと高額な硬貨を諦めた人もいたかもしれない。
でも、10円玉ばっかりやった覚えがあるから、
百円玉やったらみんな諦めへんかったのかも(笑)

そう考えると、なんだかフッと力が抜けた。
私だけじゃなかったんや…!」と。
10円と時間、どちらを選ぶかという究極の選択に迫られ、泣く泣く電車に乗った戦友が、他にもいたんやと。

そして、そのおかげで、私は見事、教員採用試験に合格することができた!就職氷河期世代だったにも関わらずだ!
あの時、10円玉を拾わなかった私の選択が、
私の小学校教師としての人生を切り開いてくれたと言っても、過言ではない!
「人生を拾ったんや!」

あの日の10円玉は、私に大切な教訓と、そしてちょっぴり笑える思い出をくれた。
何かを諦めることで、意外な「ご褒美」を手に入れた経験は誰にでも1度はあるだろう。
教職人生を諦めた私にはこの先どんな人生が待っているのか・・・
楽しみでしかたない( *´艸`)

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