【CoCシナリオ公開】1時間で回せる短編タイマンシナリオ『名もなき花束』【TRPG】
おはようございます、早坂いのるです。
今回は、**「植物・花葬・記憶の開花」**です。
『名もなき花束』
「綺麗だね。君がこれまで積み上げてきたその物語さえ、僕(私)にとってはただの枯れゆく『養分』なんだ。……たとえこの一輪が、誰の供えられることもない雑草だったとしても。」
■シナリオ概要
システム: 新クトゥルフ神話TRPG(第7版)
形式: KPCとのタイマン
推定時間: 1時間(ボイスセッション想定)
推奨技能: 〈目星〉〈心理学〉〈図書館〉〈芸術または製作(花や植物に関するもの)〉
舞台: クローズド(色鮮やかな花々が咲き乱れる、静謐な温室)
テーマ: 記憶の風化、美しき犠牲、植物メタフィクション
■あらすじ
暗転。次に目を開けると、君たちは見たこともない極彩色の花々が咲き乱れる「温室」にいた。KPCの身体からは蔦が這い出し、その足元には「かつての思い出」が色鮮やかな花として咲いている。ここは神が摘み取った「美しい結末」の貯蔵庫。二人は自分たちの「心(根)」を守り抜き、この温室に根を張ってしまう前に、現実へと踏み出さなければならない。
■ハンドアウト(HO)
PC:『手折る者』 君はこの世界の「剪定(取捨選択)」を行う権利を持つ。
KPC:『咲き誇る供物』 君はこの庭の「苗」だ。花が開くほど、君の意識は甘い香りに溶け、ただの静物へと変わっていく。
■五章構成:1時間で駆け抜ける「開花」と「脱出」
第一章:芳香の檻(10分)
一面の花園。KPCは自分の腕から咲いた白い花を見つめ、「僕(私)たち、最初から誰かの部屋を飾るだけの『切り花』だったんだね」と、微睡むような声で囁く。
描写: 花に触れると、その場面の感情が「香気」として脳内に流れ込む。
判定: 〈目星〉あるいは〈心理学〉。自分たちの存在が、急速に「植物化」し、自我が光合成の多幸感に飲み込まれていることに気づく(SAN 0/1D4)。
第二章:キャラシの種子(10分)
周囲に散らばる「種子(技能やバックストーリー)」を拾い集める。
アクション: 〈図書館〉あるいは〈芸術〉。土に埋もれた「大切な人の名前」や「得意技能」を掘り起こし、自分の心臓(中心)に強く抱く。
結果: 成功すればKPCの浸食が止まる。失敗すれば、PCのバックストーリーが一つ「肥料」として吸収され、その記憶が物理的に「花」となって地面に固定される。
第三章:脚注(フットノート)の剪定(10分)
温室の壁に、二人の物語を批評する「神のメモ」が貼られている。そこには「この愛はここで枯れるのが最も美しい」という残酷な結末が記されている。
ロールプレイ: 押し付けられた「美しい死」を拒絶し、泥臭くとも「生きたい」という意志をKPCと確かめ合う。
判定: 〈精神分析〉あるいは〈任意の交渉技能〉。神のプロットを自らの手で「剪定(書き換え)」する。
第四章:確率の暴風(15分)
出口の扉を阻むのは、空から降り注ぐ巨大な「棘の雨」。それは一撃ごとにPCの「POW」や「DEX」を刺し貫き、強制的にその場へ「植え付け」ようとする。
ギミック: PCは「最大正気度」を5削ることで、その棘を「自身の枝葉」として受け入れ、ダメージを最小限に抑えて突き進むことができる。
判定: 嵐の中を駆け抜ける〈DEX〉あるいは〈幸運〉。
第五章:決断・最後の摘蕾(15分)
出口となる「巨大な蕾」。脱出するには、PCのキャラシにある「最も高い技能」か「最も大切なバックストーリー」の一つを、扉をこじ開けるための「果実(代償)」として永久に失わなければならない。
真相: 自分の一部を「庭」に残さなければ、二人は温室の外へは出られない。
クライマックス: 1D100の最終ロール。真っ白な花びらが舞う中で、二人はどんな「最後の一言」を交わすのか。
■結末:分岐する3つのエンディング
Happy End:『野に咲く二人』 (自分の一部を代償に生還。現実に戻った二人の手元には、もう名前も知らない枯れた花が一輪。決まった色ではない、自分たちの明日を歩き出す。)
Normal End:『ドライフラワーの記憶』 (生還するが、KPCの感情の一部が「結晶化」し、時折冷たい無機質な反応を示すようになる。それでも、隣に君がいるだけで十分だと寄り添い合う。)
Bad End:『永遠の標本』 (脱出失敗。二人は最も美しい姿のまま、温室の土に還る。次に誰かがこの庭を訪れたとき、そこには寄り添うように咲く、見たこともない二輪の花があるだけである。)
■ストーリーに関するあとがき
今回は**「1時間の濃密な体験」**を重視し、描写の美しさとメタ的な決断に焦点を絞りました。キャラクターシートを「植物の養分」に見立て、大切に育てた「設定」を切り売りして生存を掴み取る、背徳的でエモーショナルな物語です。
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