なぜビヨンセは“メトロポリス”を繰り返し引用するのか ― 未来身体・機械美学・ルネサンスへ続くSF表現史
はじめに
BeyoncéのライブやMVには、繰り返し現れるイメージがあります。
銀色のメタリック衣装。
ロボットのように精密な身体。
無機質なのに神秘的な女性像。
そして、“人間を超えた存在”としてのステージング。
『Sweet Dreams』
『Single Ladies』
『I Am... World Tour』
『Renaissance World Tour』
『Alien Superstar』
こうした表現の奥には、1927年の映画『Metropolis』へ繋がる、巨大なSF美学の系譜があります。
一見すると、
「100年前の白黒サイレント映画」と、
現代ポップスタービヨンセは結びつかないようにも見えます。
しかし実際には、ビヨンセのパフォーマンス史を読み解く上で、『メトロポリス』は極めて重要な参照元の一つです。
この記事では、
映画『メトロポリス』とは何か
なぜファッション界・音楽界に巨大な影響を与えたのか
ビヨンセはどこでメトロポリス的美学を引用しているのか
なぜRenaissance(ルネサンス)期に再び“機械身体”へ戻ったのか
を深掘りしていきます。
Beyoncé performing at the BET AWARDS (2007)
— Future Rockstar GF (@fendifaguette) July 2, 2020
Metropolis (1927) pic.twitter.com/ewYwPeV70X
『メトロポリス』とは何か ― SF映画史の原点
『メトロポリス』は、1927年に公開されたドイツ映画です。
監督はフリッツ・ラング(Fritz Lang)。
現在では、
SF映画史
映像デザイン史
ファッション史
ポップカルチャー史
における“原点”の一つとして扱われています。
未来都市を描いた最初期の巨大映画
『メトロポリス』の舞台は、超巨大未来都市です。
富裕層は地上で優雅に暮らし、
労働者階級は地下で機械のように働かされる。
つまりこの映画は、単なるSFではなく、
資本主義
階級社会
労働
テクノロジー
人間性
をテーマにした作品でした。
現代から見ると驚くほど、“今の世界”に近いテーマです。
“機械人間マリア”という革命
『メトロポリス』最大の象徴が、“機械人間マリア”です。
銀色の女性型ロボットであり、映画史上もっとも有名なアンドロイドの一つと言われています。
このデザインは後の、
マドンナ(Madonna)
レディー・ガガ(Lady Gaga)
ジャネール・モネイ(Janelle Monáe)
ダフト・パンク(Daft Punk)
アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)
ティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)
ビヨンセ(Beyoncé)
など、無数のアーティストへ影響を与えました。
特に重要なのが、
「女性身体 × 機械」
というテーマです。
『メトロポリス』のロボット女性は、
美しい
魅惑的
危険
支配的
人間を誘惑する存在
として描かれました。
これは後のポップスター表現において、
“未来的女性像”
の原型になっていきます。
おはようございます。今日はブリギッテ・ヘルム誕生日。SF映画の名作「メトロポリス」のマリア役として片や清純な労働者の娘、片や半裸でセクシーに踊り民衆を熱狂させる偽マリアを演じました。アンドロイドの着ぐるみは本人が着てたのですね。ナチスを嫌い1935年に夫と共にスイスに移住したそうです。 pic.twitter.com/87UtKBuzMp
— 阿乱隅氏 (@yoiinago417) March 16, 2021
なぜロックミュージシャンは『メトロポリス』に惹かれたのか
この映画は、後の音楽カルチャーに巨大な影響を与えました。
特にロック、ポップ、エレクトロ、インダストリアル系アーティストたちは、「メトロポリス」の美学を繰り返し引用しています。
理由は明確です。
「メトロポリス」には、
未来都市
巨大機械
アンドロイド
メタリックな身体
支配社会
退廃
セクシュアリティ
という、“音楽スターが好む象徴”が大量に含まれているからです。
理由は大きく3つあります。
① “未来的スター像”を作りやすかった
『メトロポリス』の機械人間マリアは、
人間を超越した存在
性的魅力
危険性
非現実性
を同時に持っていました。
これは、ロックスターが作りたかった
「神話的スター像」
と非常に相性が良かったのです。
② “人工的身体”がロックと結びついた
1970年代以降のロックでは、
厚化粧
金属衣装
アンドロジナス
SF人格
宇宙人設定
など、“人間離れした身体”が重要になります。
これは完全にメトロポリス的です。
③ テクノロジー社会への不安
『メトロポリス』は、
機械化
資本主義
大衆化
労働
人間性喪失
を描いた作品でした。
ロック音楽もまた、特に1970〜80年代には、
「機械化される社会への不安」
を重要テーマとして扱っていました。
特に影響が大きいアーティスト
デヴィッド・ボウイ
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)は最重要人物の一人です。
特に、
ジギー・スターダスト(Ziggy Stardust)
シン・ホワイト・デューク(Thin White Duke)
期の、
宇宙人性
人工的人格
冷たい未来感
にはメトロポリス的影響が強くあります。
ボウイはそもそも、
「人間ではないスター」
を演じ続けた人物でした。
これは後のレディー・ガガやビヨンセにも繋がります。
クラフトワーク
クラフトワーク(Kraftwerk)は、“機械音楽”そのものです。
無表情
ロボット
機械化身体
未来都市
という表現は、完全にメトロポリスの系譜です。
彼らは後の、
テクノ
ハウス
エレクトロ
ヒップホップ
へ巨大な影響を与えました。
つまりルネサンスのダンスミュージック文化にも間接的に繋がっています。
クイーン
クイーン(Queen)の、
演劇性
誇張された身体
“人間を超えたスター”感
にも、メトロポリス的美学があります。
特にフレディ・マーキュリー(Freddie Mercury)は、
「舞台上の超存在」
として振る舞っていました。
これもビヨンセ的です。
マドンナ
マドンナ(Madonna)は、メトロポリス的女性像をポップへ持ち込んだ重要人物です。
特に、
金属コルセット
支配的女性像
機械身体
セクシュアリティ
は、後のビヨンセへかなり繋がっています。
ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)的未来身体美学とも接続します。
レディー・ガガ
レディー・ガガ(Lady Gaga)は、かなり直接的です。
ロボット身体
SF人格
人工生命感
“Monster”概念
などはメトロポリス的引用が非常に強いです。
ビヨンセは“ロック/グラム文脈”も継承している
ここが重要です。
ビヨンセのメトロポリス引用は、
単なるSFオマージュではありません。
彼女は実は、
グラムロック
SFロック
ファッションロック
シアトリカルロック
の系譜も吸収しています。
特に、
サーシャ・フィアース(Sasha Fierce)
『アイ・アム…(I Am...)』期
ルネサンス(Renaissance)
「エイリアン・スーパースター(Alien Superstar)」
には、
デヴィッド・ボウイ的な
“人間を超えたスター人格”
がかなり見えます。
ここからは、
ビヨンセ本人のキャリアを通じた具体的な“メトロポリス引用”の分析、Sasha Fierceの意味、Renaissanceでの逆転、
そして彼女が機械身体を繰り返す本当の理由について深掘りしていきます。
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