見出し画像

玄関に黒い靴があるだけで、息ができなくなった 🔥5

玄関の扉を開ける。

まず最初に見るのは、靴だった。

黒い革靴があるかどうかで、
その日の“安全”が決まる。



黒い靴がある。

その瞬間、背筋がざわついた。

心臓が、ぎゅっと縮む。



私はゆっくりと、音がしないように扉を開ける。

中を覗き込む。

父がいる。

それだけで、
家の空気が一気に変わる。

────

玄関の扉を開ける。
まずは、玄関の靴の確認。

黒い靴がある。

私はゆっくりと音がしないように扉を開け、
中を覗き込んだ。

背筋がざわつき、心臓が縮む。
父の存在が覆いかぶさってくるようだった。

忍者のように身を翻し、なるべく音がしないよう
ゆっくりと閉める。
靴を脱ぎ、玄関に上がる。

廊下を歩く音、階段のきしむ音、わずかな物の振動――
どれも父に私の存在を知らせてしまう信号のようだった。

足裏で床の振動を感じ取り、膝を柔らかく使って衝撃を吸収する。
呼吸を整え、体の一部を動かすたびに、反射的に耳を澄ます。

気づきませんように。

階段のきしみが、地雷のようだった。

ようやく部屋に着いた。
私は荷物を置くと、はぁ、と息をひとつ吐いた。

ようやく少し呼吸ができるようになる。

父がいる日は、誰かが帰ってくるまで、
部屋から出ることはできなかった。

家の中では、どこにいても安全ではなかった。
私にとって家の中全体が、戦場だった。
気を抜ける場所はどこにもなかった。

──────────
🫧この形の私

▶ ︎  次の出来事へ(私は普通の高校生)

←   この章の目次へ【崩壊|逆襲】
←   この物語全体を読む【シリーズ一覧】

いいなと思ったら応援しよう!