燃やされたやさしさ 🔥4
3千円が、燃やされた。
義祖母がくれたお小遣いだった。
「置いておく方が悪い」
そう言われた。
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私は、普段お小遣いをもらっていなかった。
年に一度あるかないか、義祖母が気まぐれにくれる程度だった。
義祖母は裕福な人だった。
そのお金は、哀れみでも特別扱いでもない。
妹たちと同じように、ただ渡されただけの3千円。
それでも私にとっては、奇跡みたいなお金だった。
お年玉は親に渡していたし、
お小遣いももらっていなかった。
自分だけの自由になるお金は、
ほとんどなかった。
私はその3千円を、袋に入れたまま、こたつの上に置いた。
大切すぎて、しまう場所を決められなかった。
翌日は学校だった。
そのまま家を出て、授業の途中でふと思い出した。
――こたつの上だ。
心が少しだけざわついた。
大丈夫。
帰ったら片付けよう。
そう思った。
家に帰ると、なぜか父がいた。
胸の奥が少しだけ固くなる。
こたつの上に、袋はなかった。
下を覗き、棚を探し、部屋を見回す。
どこにもない。
カタカタカタカタカタ……
私の心臓が、音を立て始めた。
やがて玄関の扉が開く音がした。
母が仕事から帰ってきた。
ざわついた心のまま、1階に降りる。
父はもう家にいなかった。
母は、台所で買ってきた野菜を冷蔵庫にしまっていた。
「お母さん、机に置いてあった袋、知らない?」
「その袋の中におばあちゃんにもらったお金が入ってたんだけど……」
母は、冷たい声で答えた。
「朝、お父さんがあの机の周りのものを
ゴミ袋に入れて、燃やしに行ってたわよ」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「……お金、入ってたんだけど。
中、見なかったの?」
私は、言葉を重ねた。
母は、呆れたように言った。
「片付けなかったあんたが悪いでしょ。
自分の失敗を、人のせいにするんじゃない」
その場に、崩れ落ちた。
3千円。
次にいつもらえるかも分からない。
誰にも触られない、私だけのもの。
それが、火の中に消えた。
「なんで……」
そこから先はもう、声にならなかった。
母は続けた。
「だから、いつも言ってるでしょ。
片付けないから、そうなるのよ」
吐き捨てるような言い方だった。
その言葉は、私の耳にはほとんど届かなかった。
ぱたん
私はそのまま、横に倒れた。
なにも感じられなかった。
泣き声も、言葉も、出ない。
それなのに、
目から涙だけが勝手に溢れてきた。
お金。
私だけのお金。
私が悪いの?
なぜ私は、今怒られているの?
倒れたまま、無表情の目から涙だけが溢れ、
顔を伝って耳に流れ込む。
その感覚を、
どこか冷静に感じている自分がいた。
しばらくして、母が洗濯物の入ったカゴを持ってこちらに歩いて来る音がした。
母の足が、私の横で止まった。
私が顔を上げると、無表情のまま母がこちらを見下ろしていた。
お母さん。
母の顔を見ると、心の中の感情が溢れそうになった気がした。
けれど、一瞬、目があったあと、母は無表情のまま私の横を通り過ぎた。
そして、何も言わず、お風呂場へ入っていった。
開きかけた感情はまた引っ込み、
また涙だけが一筋、頬を伝った。
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🫧この形の私

