断ったら、ひとりになると思っていた 🔥1
夕方になると、
胸の奥が少し重くなる日があった。
義父や義妹から、食事の誘いが来る日だ。
結婚してから、そういう日は
月に三、四回あった。
口は悪いけれど、私のことも誘ってくれる義父。
夫と仲良しの義妹。
関係が悪いわけではない。
むしろ、まずまずうまくやっていた方だと思う。
それでも、なぜか疲れてしまう。
嫌なことはない。
ただ、『またきた』と反射的に心が曇った。
─────
「父さんが、ご飯行こうって言ってる」
その日も夫はスマホを覗き込みながら言った。
ああ、また来た。
どうしよう。
「せっかくだけど……うーん」
私は言葉に詰まった。
本当は毎回行くのが辛い。
行かないといけないというのも辛い。
「行きたくない」と言いたい。
そう言ったら、怒られるかな。
「弱いな」
義父の笑う顔が頭に浮かんだ。
─────
夫に守ってほしい。
でも、どうして欲しいのか分からない。
「行きたくない」
それを、言ってもいいのだろうか。
それを伝えたあと、私はどうなるのだろう。
心臓が自分でもわかるほど脈打つ。
これをいったら、もう、
相手にされなくなるかもしれない。
また、ひとりぼっちになるかも。
でも、
でも。
私は夫を見つめた。
「本当は、行かないといけないと思うけど、
もう今日はやだ。
行けなくて、ごめんなさい……!」
言葉と一緒に、涙がどんどん溢れ出る。
心臓はバクバク鳴り、
口が渇き、全身に圧力がかかる。
怖い。
夫が、少しの間、黙っていた。
そのまま、表情を変えずに言った。
「……?
泣くほどのことじゃないと思うけど」
「まあ、みのりも疲れてるんだろ。
わかった。じゃあ三人で行ってくるわ」
想像以上に軽い反応だった。
─────
私は家でひとりご飯を食べ、お風呂に入った。
とてもゆったりした時間だった。
しかし、頭の中は別のことでいっぱいだった。
みんな、怒っているんじゃないだろうか。
「せっかく誘ってやったのに」
「来たくないって何?」
頭の中に声が響く。
私は、やってはいけないことをしてしまった。
ごめんなさい、
ごめんなさい。
静かな家の中で、頭を抱えた。
─────
2時間後、夫が帰宅した。
私は思わず駆け寄る。
「みんな、怒ってた?」
夫は少し笑って答えた。
「なんで怒るの?
別に気にしてないでしょ。
行きたい人が行けばいいんじゃない」
もう誘われないかもしれないと思った。
でも、次も義父は普通に誘ってきた。
その時、私は初めて知った。
人の言う通りにしなくても、
怒られない場合があるということを。
─────
でも、だからといって
私の気持ちが楽になったわけではなかった。
誘われたい気持ちもある。
けれど、行きたくない気持ちも消えない。
今回、怒られなくてよかったと思うだけだった。
──────────
🫧この形の私

