「通信講座をやりたい!」と思ったあの日
カタン──
郵便受けの音に、胸が高鳴った。
「きた!待ってた!」
私のお目当ては、たったひとつ。
通信講座の冊子だ。
付属の漫画が大好きで、ページをめくるたび
ドキドキした。
その子みたいに、私も笑える自分になれる気がした。
毎月届く冊子は宝物。
角は丸くなり、背は柔らかくなったけど、
それでも私は何度も読み返した。
漫画の女の子の笑顔を描くたび、
少しだけ近づけた気がした。
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“この教材に出会って、夢子は輝いた“
キラキラと成長していく女の子の物語。
漫画を持っていない私にとって、
それはまさに宝物だった。
読むたびに胸がドキドキする。
ページをめくるたび、
紙の少しざらついた感触が指先に残る。
冊子は毎月届いた。
その中でも、特にお気に入りの一冊があった。
それは、大切に机に置いて、
暇があれば何度も何度も読んだ。
ドジで、運動も勉強も全然ダメだった女の子。
その子が通信講座を始めて、
勉強ができるようになって、
友達が増えて、
最後にはキラキラと笑っている。
成功物語だった。
机の引き出しをそっと開け、
折れないように端を持ち、
休みの日には必ず取り出した。
角は少し丸くなり、
背の部分は何度も開かれて柔らかくなっていた。
それでも私は大事にめくった。
広告の裏に、主人公の女の子の顔を
何枚も何枚も描いた。
キラキラとした目。
ふわっと笑った口元。
上手に描けた日は、
少しだけその子に近づけた気がした。
「これをやれば、
私もこんなふうに笑えるかもしれない」
本気で、そう思っていた。
冊子には、入会者全員プレゼントも載っていた。
レモン色の布に、淡いピンクの縁取り。
女の子のイラストが描かれている上履き入れだった。
優しい色だった。
派手すぎないのに、ちゃんとかわいい。
今持っている上履き入れには、
習字の墨汁の黒いしみが残っている。
あのレモン色を持って、学校に行きたかった。
ある日、教室に入ると、
クラスの友達がそれを持っていた。
上からぶら下げるようにして、
得意げに揺らしていた。
「かわいい!」
私は息をのんだ。
写真で見るより、何倍もかわいかった。
レモン色とパステルピンクが、
光の中でやわらかく溶けていた。
その袋に入った上履きまで、
いつもの100倍かわいく見えた。
「それ…全員プレゼントでもらえるやつだよね」
そう言うと、その子は笑って言った。
「うん、これ通信講座のやつ。おもしろいよ。
わからないところも教えてくれるから、
勉強楽しくなった」
その子は算数の計算がとても早かった。
通信講座をやれば、怒られなくても
スイスイ問題が解けるようになるに違いない。
そう思った。
私は小学校1年生から
習字を“義務”として家でやっていた。
自分の意思ではなかったし、
楽しいとも思えなかった。
やめたいと思いながら、
ただ「怒られないため」に続けていた。
それに比べ、講座の漫画は眩しかった。
漫画の中のキャラクターたちは生き生きとして、
楽しそうで羨ましかった。
「お母さん、私これやりたい。頑張るから」
何度もお願いした。
「宿題もまともにできないのに、何言ってるの」
「やったってすぐやめるでしょ」
それでも私は諦めなかった。
やりたかった。
何をするのか分からなかったけど。
もしこれをやったら、
あの女の子みたいに、
ちゃんと笑える自分になれる気がした。
両手を合わせて、必死に頼み込んだ。
「お願いお願い、お願いします。お母さん」
母は呆れた目で私を見ていた。
「あんた、何もしないくせに、
頼み事だけはしつこいよね」
その後も諦めずお願いしてみたけれど、
私の願いが叶うことはなかった。
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🫧この形の私

