疑惑と共犯者 🔥5
「みんなが集まるから来る?」
ある年末年始、妹から連絡が来た。
私は一人で実家に行った。
家に着くと、母はまだ帰宅していなかった。
台所では、伯母とコイケさんがいた。
2人で楽しそうに話しながら、ご飯を作っていた。
「あ、みのりちゃん、いらっしゃーい」
義祖母は居間の椅子に座っており、
その周りをいとこの子供たちが走り回っている。
いとこと妹がその近くでお菓子を食べながら、
他愛もない話に花を咲かせていた。
“普通”の光景だった。
しかし、その“普通さ”に異様なものを感じた。
私は貼り付けた笑顔で荷物をおろし、挨拶する。
「こんにちは。コイケさん、お久しぶりです」
何も言わなかった。顔にも出さなかった。
その瞬間、私も“異様な普通の世界の住人”に成り下がった。
母はまだ帰って来ない。
準備が整い、ご飯を食べることになった。
机の上には、乗り切らないほどの御馳走。
みんな嬉しそうに食べる。
母が苦しみ、泣き続ける原因だと、
当時の私が信じていた“コイケさん”。
それが当然のように家の中に入り込んでいる。
父と、楽しそうに笑い合う。
父のビールを注ぐ。
「お皿足りる?取ってあげようか?」
まるでこの家の女主のように振る舞っている。
しかも誰もそれに疑問を持たない。
やがて玄関が開く音がした。
あ、お母さんかな。
私は玄関に歩いていった。
そこには、誰もいなかった。
「あれ?帰ってきてなかった?」と、
伯母が少しだけ声に出した。
しかし、誰も·····父も義祖母もコイケさんも、
その場にいる誰一人として、何も言わなかった。
母の事を気に留める人は誰もいなかった。
そして、また楽しげに食事を続ける。
私は元の席に戻った。
箸を持ち、ご飯を食べ始めた。
どうしていいのか分からなかった。
何も無かったような、和やかにすぎる時間。
自分自身がその絵面の中に含まれているという、その、事実。
吐き気がした。
「どうして誰も何も言わないの?」
「え、怖い」
「何この空間」
その思いが頭の中でぐるぐる回る。
――
自宅に帰ってからも嫌悪感は消えなかった。
母の苦しみと、それを無視する家族の光景。
あの空間は、異常だった。
しかし、私が何よりも“異常”だと感じたのは、
あの空間ではなかった。
母の気持ちを聞いていながら
何も言わずにそこにいた
私、だった。
──────────
🫧この形の私

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