みのりちゃんって呼んで
「どうして、私だけ呼び捨て…?」
まだ小さな私は、胸にぽっかり穴が空いたような気持ちで立ち尽くした。
ただ笑ってほしかった。
ただ、愛されたいだけだった。
────
「あなたの名前は、お母さんがつけたのよ」
母はいつもそう言った。
私だけの名前――みのり。
「一番最初の子どもは、女の子ならみのりにするって決めてたの」
母は笑いながら言った。
「光り輝くみのりのある人生を、という意味なのよ」
おかあさんが、つけてくれた。
私はその名前が好きだった。
誇らしい気持ちでいっぱいだった。
――でも、妹たちが生まれた頃から、
胸の奥で違和感が芽生えた。
父が名付けた真ん中の妹「れいか」。
義祖母が名付けた末の妹「ももこ」。
「みのり、早くしなさい」
「みのり、起きなさい」
「れいちゃん、ももちゃん、こっちにおいで」
――その声、楽しそうな笑い声、優しい呼びかけ。
私はその輪の外にいる気がした。
なんで私だけ呼び捨てなの?
呼び捨てって、なんだか怒られているみたい。
いらない子みたいに感じて、嫌だった。
────
ある日、勇気を振り絞って母に言った。
「お母さん、私…みのりちゃんって呼ばれたい。
ちゃん付けが、いいの」
母は振り向かずに、少し呆れたように言った。
「みのりちゃんって長いでしょ。
お姉ちゃんなのに、ちゃん付けで呼ばれたいなんて、赤ちゃんみたい」
胸が縮む。
「でも…れいちゃんも、ももちゃんも、ちゃん付けで呼ばれてるよ。私もみんなみたいにちゃん付けで呼ばれたい」
母はため息をついた。
「なに?みのりっていう名前嫌なの?」
「お母さん、一生懸命考えてつけたのよ。
それなのに、そんなこと言うの?」
そうじゃないよ、お母さん。
わたしは、みのりっていう名前、すきなんだよ。
ちゃん付けで呼ばれたかっただけなんだよ。
でも、言葉は出てこなかった。
かわりに、涙がぽろぽろこぼれた。
────
それかるも、私は変わらず「みのり」と呼ばれた。
妹たちの呼ばれ方を耳にするたび、胸が痛んだ。
「ももちゃん、ご飯よ」
「れいちゃん、お風呂入るよ」
私はいつも怒られる。
妹たちは怒られない。
どうして私だけ。
ぽかんと胸に穴があいたまま、
私は”特別”な妹たちを横目で見つめた。
私だけ、外にいるみたいだった。
──────────
🫧この形の私

これからも、こんな話を書いていきます。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
