見出し画像

門限 🔥2

一人暮らしをしていた頃、自由に暮らしていた。


実家に帰省しても、夜中まで遊び、少し寝る。

そしてまた早朝からスノーボードに行く。

付き合っていた彼氏とも、
普通に会って遊んでいた。

実家に帰省しても
何時に帰ろうが、どこへ行こうが、
誰にも何も言われなかった。

それが、私にとっての”普通“だった。

─────

実家に戻って、半年が経とうとしていた。

私は以前と同じ感覚で、暮らしていた。

仕事を終えたあと、
会社の人たちと、ビリヤードに行ったり
飲みに行ったり。

お金はほとんど手元に残らなかったが、
一人暮らし時代の貯金があるから
大丈夫だと思っていた。

毎月5000円だけは貯金していた。

それ以外は、何も考えていなかった。

─────

そんなある日、父に言われた。

「お前、いつまで一人暮らしの気分でいるつもりなんだ」

私が黙っていると、父は続けた。

「今までは甘やかしてきたけど、
これからは門限は22時だ。

遅くなるなら理由を言え。
許可したものしか認めない」


……22時?
冗談でしょ。


あなたは、飲み会のとき何時に帰ってくるかも分からない生活をしていますよね。

そう思ったけれど、言えなかった。

「結婚前の娘が
夜中までフラフラしているのは良くない」

父のその言葉は、もっともらしく聞こえた。


ただ、その頃私がいた部署は、忙しかった。

定時で帰れることはほとんどない。
そんな中で、門限22時はきつかった。

「それだと、仕事が終わったら何もできないよ」
私は言った。

彼氏に会う時間もなくなるじゃないか。

父は言った。
「仕事が遅くなったなら、
まっすぐ帰るのが普通だろ」

私は、仕事をしたあと
遊ぶこと自体が許されないのか。


「わかった」とは、どうしても言いたくなかった。

─────

親の言う通り、正社員で仕事を見つけた。
毎月、言われた金額を父に渡している。
車も、買うのを我慢している。

それだけ守っているのに、まだ言うの。


このルールだけは、納得できなかった。
怒りが湧いてくる。

ただでさえ、家の中は居心地が悪い。
車を買いたいと言っても許されない。
不自由な生活の中で、
遊ぶ時間まで奪われたら、たまらない。

私は黙って、その場をやり過ごした。

─────

彼氏には、何も言わなかった。

それから1ヶ月後、母が言った。
「きちんと帰ったら?
お父さんが彼氏のことで怒ってたよ」

は?

心臓が、飛び跳ねる。

「なにそれ、どういうこと?」
「門限、言われたんでしょ。
お母さんも遅くまで帰ってこないのは違うと思う。きちんと話さないと」

あなたも帰ってきてないですよね。
そう思ったけれど、黙っていた。

「みのりと彼氏のために言ってるの。
彼氏を悪く言われたくないでしょ。
お母さんはあの人いい人だと思ってるの」

私は、仕方なく彼氏に伝えることにした。

─────


「お父さんが、先月から急に
門限22時とか言い出したんだよね。
信じられない。何歳だと思ってるんだろ」

愚痴混じりで彼氏に話した。
「そうなんだ」

彼氏は続けた。

「お父さんの言うことは、聞いたほうがいいよ。
俺といるときは、ちゃんと帰ろう」

「ええ~?」

嫌だったが、仕方ない。
こんなふうに言う彼氏を、悪く言われたくない。

私は黙って従った。

それからというもの、彼氏はきっちり
22時前に家まで送ってくれた。

電車のときも、必ず間に合うように
駅まで送ってくれた。

なんなの、この窮屈な生活。
暗い駅のホームで、ひとりため息をついた。

─────

それからも私は、彼氏といる時だけは
門限までに家に帰った。

けれど、それ以外では
ほとんど守ることはなかった。

会社の人たちや、友達と、
0時を過ぎるまで遊び、家に帰る。

そんな生活を、相変わらず繰り返していた。

「また遊んでるの?」
母に言われた。

「遊んでないよ。彼氏は何も悪くない
あの人はちゃんと送ってくれてる」

「彼氏とは仕事終わりには
会ってないから安心して」

「仕事の付き合いなんだから、いいでしょ」


冗談じゃない、知るか。

父は、何も言わなかった。


私は、遊び続けた。

──────────
🫧この形の私

▶  次の出来事へ(勝手にします)

←  この章の目次へ【崩壊|沈む】
←  この物語全体を読む【シリーズ一覧】

いいなと思ったら応援しよう!