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褒め言葉が、刃物になる家

◎今更褒められても【考察】
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これは、大人になった私が
あの頃の出来事を振り返り、読み解く話です。

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褒められたのに、嬉しくなかった。

むしろ腹が立った。


それは、私が素直じゃなかったからではない。

その言葉には、褒め言葉として受け取れない
理由があった。

─────

父は言った。

「みのりは偉いなあ」
「自分で結婚式のお金を全部貯めたもんな」

言葉だけ見れば、
娘を認める優しい父親のようにも見える。

けれど、私の中では違った。

その言葉は、
過去に助けなかった人の口から出ていた。

困っていた時には何もせず、
自分に都合のいい部分だけを見て褒める。

私にはそれが、責任を引き受けないまま口にした感想に聞こえた。

─────

もうひとつあった。

その日は、妹の結婚式の前夜だった。

家族の中心にいるのは妹のはずなのに、
そこで突然、姉である私が持ち上げられる。

その不自然さに、
私は昔から見てきた家族の形を思い出した。

誰かを褒めることで、
別の誰かが傷つくこと。

父にそのつもりがあったのかは、
今でも分からない。

ただ、それは私自身が過去に経験したことのある
形だった。

「れいちゃんは、偉いね」
「ももちゃん、おいで」

私を無視する横で、笑顔で笑う父。


誰かを褒める言葉が、
別の誰かへの責める言葉になる。


「お姉ちゃんは、できたのに」

その言葉を、
直接言わずに伝えるような形だった。

─────

妹には妹の事情があった。

私はその事情を、詳しくは知らない。
けれど、その妹なりの
背景や苦しさは消されているように見えた。

残るのは、

姉は自分でやった。
妹はそうではない。

そんな単純な物語だけだった。

─────

人から褒められること。
それ自体は嬉しいものだ。

けれど、私が必死に積み上げたものが
誰かを傷つける形で
使われたこと。

そして、私の苦しみまで都合よく
利用されたように感じたこと。

それが、腹立たしかった。

─────

あの日の「偉いな」は、

私を認める言葉ではなく、

誰かを傷つけるために使われた
刃物のように見えた。

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