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「13位」と嘘をついた日、私は走り始めた 🔥1

嘘をついた。

たった一言だった。

でも、その瞬間、
胸の奥がザワッとした。

6年生になった私は、
やっと「普通」になれたと思っていた。

友達がいて、
笑えて、
もう、あの頃の自分じゃないと信じたかった。

でも──。

その「普通」は、
少しでも崩れそうになると、すぐに怖くなった。

────

6年生になると、クラスの中にいじめの欠片はどこにもなかった。

私は、いじめられていた頃のことは
早く忘れたかった。

胸の奥に居座るその記憶を、
一日でも早く自分の中から追い出したかった。

だから、気にしていないふりをしていた。

この頃、以前と比べると父や母に怒られることは目に見えて少なくなっていた。

勉強については、相変わらず言われた。
けれど、以前のような圧は弱まった。

それをいい事に、私は言われた時以外は
ほとんど勉強しなくなった。

────

私はとにかく足が遅かった。

持久走では、毎年ほぼ最後から2番目や3番目。

短距離も長距離も全然ダメで、一生懸命走っても「歩くな」と言われるほどのスピードだった。

喘息もあって縄跳びは毎日していたけれど、
速くなる気配はなく、体力もつかないままだった。

6年生の時、転校生の友達ができた。

その子は私が足が遅いことを知らなかった。
クラスは違ったけれど、いつも一緒に帰っていた。
私にとっては、「安心して一緒にいられる人」の1人だった。

「私長距離苦手」
その子が言った。
「そうなんだ、寒い時期にあるしね」

「みのりちゃん、持久走って何位くらいになる?」
聞かれて、胸がザワッとした。
不安に押されるように、口が勝手に動いた。

「…13位、14位くらいかな」

学年は50人。
そんな順位、現実にはありえない。

それまで私は48.47位あたりを
行ったり来たりしていた。

つまり、限りなく最下位に近い。

言った瞬間、「しまった」と思った。
でも、もう取り消せなかった。

「えー!すごい、かっこいいね。私遅いから羨ましい」
その子は目を輝かせた。

遅いから、と普通に言えるあなたの方がかっこいい。
そう思ったけれど、言わなかった。

家に帰ると、胸の中が重く沈んだ。

その子と仲良くしたかったのに。
どうして嘘なんてついちゃったんだろう。

私のバカ。

私はその夜、布団の中で繰り返し自分を責めた。
胸がザワザワして眠れない。
泣きそうだった。


その時、ふとひとつの考えが浮かんだ。

そうだ。

この嘘を本当にしてしまえばいい。
そうすれば、私は嘘つきじゃなくなる。

その瞬間、胸の重さがスッと軽くなった。
私の中で、スイッチが入った。

翌日から、猛特訓が始まった。

もともと喘息予防で100回の縄跳びを課されていたけれど、それを300回に増やし、海まで走り、砂浜の柔らかい白い部分をひたすら踏みしめ続けた。
夏の間中、毎日、黙々と走った。

次の持久走が行われたのは冬。
あれから半年後の事だった。

気づけば、脚力は自分でも驚くほど強くなっていた。

そしてその年、私は本当に13位になった。

順位を聞いたとき、胸の奥が熱くなり、
言いようのない誇らしさでいっぱいになった。

「これでやっと、本当になった」

嘘をついた罪悪感よりも、
自分の手で「真実」に追いついた満足感のほうが、ずっと大きかった。

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🫧この形の私

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