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【音楽】「Urban Hymns」The Verve

改めて見てみると、ジャケがoasisっぽいなぁ…。

「Urban Hymns」ってのは「都市の聖歌」とでも訳したらよいのでしょうかね。1997年のリリースなのですが、ブリットポップが絶頂期、OasisとBlurが時代の象徴として君臨していた頃です。その頃に出たのがThe Verveの3rdアルバム「Urban Hymns」です。「90年代ロックの最高傑作は?」という話になると、必ず名前が挙がるであろう一枚ではあるんですけど、このアルバムは決して「景気のいいロックアルバム」ではありません。なんつーか、人生にちょっと疲れた日、明日の仕事が憂鬱な時、理不尽な説教を食らったとき。そんな時にこそ刺さるような、不思議な作品です。

The Verveは一度解散している

The Verveは1995年に一度解散しています。リチャード・アシュクロフトのソロ活動も始まっていたので「これでThe Verveも終わり」と思っていましたが1996年、メンバーが再結成。まじかよと当時びっくりした記憶があります。そして誕生したのが、この「Urban Hymns」ですね。バンド史上最高傑作であり、皮肉にも最後の黄金期となります。「解散寸前のバンドほど名盤を作る」というロック界の都市伝説がありますが、この作品はその代表例じゃないかなぁ。

盗作騒動

ところが、この名曲には音楽史に残る騒動がありました。問題になったのは、曲中で使用されたストリングス。The Verveはオーケストラ版「The Last Time」の一部を正式にサンプリング許可を得て使用していました。が、その引用の長さ的に、許可範囲を超えているとして権利問題に発展。原曲を書いたストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズにも作曲クレジットが与えられ、印税のほぼすべてを失うことになりました。世界的大ヒットなのに、「売れても本人にはあまりお金が入らない」という、笑うに笑えない話です。皮肉にも「人生はほろ苦い交響曲」というタイトルを、自ら体現してしまった形ですね。

が、2019年、この件は大きく動きます。ミック・ジャガーとキース・リチャーズ側が権利を返還し、リチャード・アシュクロフトへ作曲クレジットが戻されました。20年以上越しのハッピーエンドだったと言えるでしょう。とは言っても、もう「売り切った後」でしょうけどね…。

感想

タイトルを直訳すると「都市の聖歌」ですね。教会で歌われる Hymns(聖歌)を、Urban(都市)という無機質な場所に置き換えています。リチャード・アシュクロフトは当時「現代人は教会ではなく街で人生を過ごす。だから都市にも祈りや救いがあるはずだ」という趣旨の発言をしています。ああ、書籍で紹介した「イン・ザ・メガチャーチ」がSNSの巨大な空間を協会に例えていたのとなんとなく共通するものがありますね。まあ、ロックバンドなので、このアルバムは宗教音楽ではありません(そらそうだ)。都会で暮らす人々の日常そのものが「聖歌」というニュアンスかなーと思っています。実際、アルバム全体を通して登場するのは「どこにでもいるその辺の誰か」です。このアルバムは「神への祈り」ではなく、「人間讃歌」と言った方が近いのかも。

このアルバム最大の代表曲が「Bittersweet Symphony」です。イントロの数秒で分かる、あまりにも有名なストリングス。しかし、その美しさとは裏腹に、歌われている内容はかなりシニカルで「You're a slave to money then you die(金の奴隷になって、そのまま死んでいく)」とか歌われています。まあ、ほんと身も蓋もありません。それなのに、演奏はどこまでも壮大。絶望を歌っているのに、不思議と希望まで感じさせてしまう。MVでは、リチャードが街を一直線に歩き続け、人にぶつかっても止まりません。ちょっとおもろいです。

他の楽曲も素敵です。「Sonnet」は、文学作品のように美しいラブソング。「The Drugs Don't Work」は失恋にも死別にも重ねられる名曲、多くの人が人生の節目に聴いてきたんじゃないかなぁと思います。どの曲も、派手なギターソロも、超絶技巧もありません。それでも心に残る。これがThe Verveというバンドのメロディの強さ。

当時から徐々に、インターネットが普及し始め、人々は便利さを手に入れながら、どこか満たされなくなっていく感じ。リアルな付き合い100%の時代とは、肌感覚で「繋がりが希薄」は多くの人が感じていると思うのですよ。都会には人が溢れているのに孤独。そんな時代の空気を、美しく残したアルバムだと思っています。


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