あまりの粘土でできたもの
兄の結婚式に、ちょっと変わったものを贈ろうと思った。
既成品じゃなくて、少しだけ意表をつくもの。
でも、不器用な私に出来るものなんてあるんだろうか。
悩みながら探して見つけたのが、
ポリマークレイ(オーブン粘土)だった。
もちろん、触ったこともない。
それでも、
「これならできるかもしれない。」
そう思えたので、さっそく材料を購入し、
新郎新婦のミニチュア人形を作ることにした。
初めての試み。
何度も作り直しては、オーブンとにらめっこ。
タキシードとドレスは手縫いで作り、
仕上がった人形に、着せては直し、着せては整える。
花嫁には、ちゃんとベールもつけた。
土台の中央に赤いフェルトを敷き、
新郎新婦のまわりを造花で飾る。
夫婦の約束ごとを書いたプレートも添えてみた。

あまりに可愛くできたので、思わず母に写真を送って見せると、
母は、それをすぐ兄に話してしまい、
サプライズプレゼントではなくなってしまった。
それでも式当日、
「例のヤツやな。」と笑いながらも、
兄夫婦はとても喜んでくれていた。
それ以上に、母が嬉しそうだった。
何度も何度も見ては、私よりも自慢気に笑っていた。
家には、まだ少しだけ粘土が残っていた。
使い道のない、半端なかたまり。
処分しようかと迷ったが、
ふとした遊び心から、
父と母のミニチュア人形を作ることにした。
父はカメラが趣味で、よく母の写真も撮っていた。
その場面を実際に見たことはないけれど、
なんとなく、こんな感じかなと想像しながら、
せっせと手を動かす。
今回はお遊びなので、服はつくらず、
焼きあがった父と母に、そのまま色をのせていく。
当時の母は、よく赤い服を着ていた。
赤い服さえ来ていれば、それらしく見えるはず。
いつもオシャレを忘れない人だから、
胸に小さなキラキラボタンもつけてみた。
父は……うーん、何色だろう?
思い浮かばない。
印象に残っていないから、
逆に思いつきで黄色にしてみた。
そして、外出のときには欠かさない帽子にも色をのせる。
これで何とか父に見えるでしょ…う…?
……何だろう。
何かが足りない気がする。
しばらく眺めて、気づいた。
メガネだ。
辺りを探して見つけた細い針金を、ねじる。
意外と細かい作業で苦戦はしたが、針金メガネを装着させると
「おぉー、それっぽいやん。」
なんとか父が出来上がった。
ただ、このままでは少し寂しい。
なにか、もう一捻りしたいと考えながら、
視線を移した先にあったのは、壊れかけの写真立て。
…意外と使えるかもしれない。
定年退職のあと、兄に連れて行ってもらったスイス旅行。
そのときの写真を背景にすれば、
ちょっと面白い構図ができる気がした。
写真立てのガラスを、人形の後ろに置いてみる。
そうすると、今度は手前の空きがすこし気になる。
とりあえず残っていた造花を添えてみる。
大きさが全く合っていない。
(まぁ、無いよりマシかな。)
そのままにした。
正直、出来は全然良くない。
寄せ集めで、どこかちぐはぐな仕上がり。
でも、それでいい。
飾り立てる必要もなくて、
ただクスッと笑えれば、それでいい。
実家に持っていくと、両親は思った以上に喜んでくれた。
さっそく写真を入れて、嬉しそうに眺めていた。
その様子を、今でもよく覚えている。
あれから、十九年。
写真は少し色褪せてきたけれど、
あの人形は、今も変わらず飾られている。
あの頃は、ただの遊びの延長で、
その時に笑えれば、それでいいと思っていた。
けれど今は、少しだけ見え方が違う。
手間ひまかけたものと、余り物で作ったもの。
その意図や工程が違っていても、
そこに誰かを思う気持ちがあれば
ちゃんと残っていくものになる。

だから、あれも確かに、贈り物だった。
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