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穀雨、まだ途中の景色

暦の上では「穀雨」。

「百穀を潤す雨」の名の通り、
田んぼにはたっぷりと水が張られています。

まだ少し頼りない苗。

でも確実に、
「これから育つぞ」という生命の準備が進んでいました。

出番を待つ苗代(ななしろ)

水鏡となった田んぼには、周りの景色が映り込んでいて、
この時期にしか見られない静かな始まりを感じます。



そして、今の時期に外に出て気づくのが、
どこからともなく漂う「独特の甘い香り」です。

誘われるように山へ目を向けると、
そこには黄金色に輝くシイの木々。

遠くから眺めると、なんだかモコモコしたカリフラワーのように見えます。

この濃厚な香りは、遠くにいる虫たちを呼び寄せるための『誘惑の香り』。

昆虫(アブや甲虫など)に花粉を運んでもらうために、
たくさんの花を咲かせて
「ここに蜜があるよ!」とアピールしているかのようです。

シイの木は、ブラシのような房状の花を大量に咲かせます。


この甘い香りがふっと消えると、
山は一気に深い緑色に変わっていきます。



今回、一番心惹かれたのが、逆光の中で光り輝いていた竹林です。

思わず、車を停めてシャッターを切りました。

ふと足元に目を向けると、
そこには、もう「たけのこ」と呼ぶには少し背が伸びすぎた、
でも「竹」と呼ぶには、まだあどけない「竹の子」の姿を発見。

「たけのこ」じゃなくなっていく「竹の子」
これから皮を脱ぎ捨てて、ぐんぐん伸びていきます。

穀雨の時期に降る雨は、
たけのこを一気に成長させることから、
「筍流し(たけのこながし)」という言葉もあります。

この力強く伸びる竹。じつは木ではなく『草』の仲間なんです。
だから成長が早いんだな、と納得しました。

種類によっては、1日に1メートル近くも伸びることがあるそうです。

そして、調べてみて驚いたのですが、
一見たくさんの竹が集まっているように見える竹林。
じつは、地下で茎が繋がった『ひとつの生命体』なんだそうです。

「たけのこ」じゃなくなった「竹の子」も、地下で親竹としっかり繋がって栄養をもらっているからこそ、あの爆発的な成長ができるんですね。

そんな竹が一生に一度だけ、
ひっそりと花を咲かせることがあります。

それは数十年、時には100年に一度の『ビッグイベント』のようなもの。

示し合わせたように一斉に咲き、そして種を残すと、役目を終えたかのように一斉に枯れていきます。

それは、とてもミステリアスな現象です。

私が見た竹林の奥でも、その壮大なネットワークが、今も静かに情報をやり取りしているのかもしれません。


「穀雨」の変化の途中にいるのは、自然界だけの話ではないのかもしれません。
私たちもまた、目に見えないところで根を張り、誰かと繋がりながら、出番のときを待っているのではないでしょうか。

そう思うと、
この季節の景色が、少しだけ違って見える気がします。

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