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名誉の推し破産とはなんぞや

わたしの友達の友達の友達の話だが、彼が推し破産しそうらしい。

推し破産とは、給料を全て推しに使い切り、銀行ローン、消費者金融、リボ払いに手を出し、多重債務に陥って破産することを表すという。


趣味とは本来、プラスアルファ。おこづかい等、給料から生活資金を引いて、余ったお金で楽しむものだと思っていた。
推し活していない人間からしたら、目から鱗だ。


彼は推し活で銀行に150万、カードローン2社で数十万、奨学金と車のローンも残っているらしい。
らしいというのは、彼女が彼の部屋の机の上にあった返済の明細を見てしまったからだそうだ。
無防備に机の上に表を向けて放置してあったらしい。


彼は彼女にも、ライブの予定は絶対譲れないと言っている。「ライブの予定が決まっていれば、その日までは生きられる」らしい。
彼女と過ごす予定は、彼女の都合を調整してもらえばいいし、「彼女も俺にばかり会ってないで他の予定も入れたり趣味を見つけた方がいいよ」とありがたいアドバイスいただいたこともあったそうだ。推しの予定は調整できないけれど、身内の予定は調整できる。


本当は、推しは待ってくれるけど、現実世界の人間は去っていく。彼は自分が主人公の世界に生きているから、周りの世界が彼に当然あわせてくれると思い込んでいる。
しかし、どんな人にも心があり、選ぶ権利がある。優しくて理性的な人から順番に、静かに離れていく。


彼は「この間はアイドルに会える抽選券のために新曲のCDを20枚買った」とか「夏のボーナスは全額推しに貢ぐ」「俺の推してるグループのCD売上がオリコン上位だった」といつも誇らしげにしている。


推しに貢ぐ瞬間のために、毎日辛くても長時間残業で小銭を稼ぐ。借金は利息を返すので精一杯で、電気代は督促状が届いてから、強制解約の期日間際にようやく振り込むらしい。


そうやって自分の行動を正当化して、彼の小さなプライドを守っているのだろう。


推しの笑顔のために、彼は自分の時間と周囲の人たちからの信頼を切り売りしているみたいだ。しかも、そうやって売った時間は残酷なまでに安い。推しは彼に小言も言わないし、体調や機嫌が悪い時は画面の前に出てこない。常に完璧な女神。


その代わり、女神は彼の方を振り向くことはないし、神様には体温がないのだ。


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