AIブームでも「一発屋」は生き残れない――OuraやWhoopのIPO議論から考える持続的成長
AI関連企業への期待が高まる中、米国ではヘルステック企業のOuraやWhoopのIPO(新規株式公開)が注目を集めています。
一見するとウェアラブルデバイスの話ですが、ウォール・ストリート・ジャーナルのポッドキャストでは、「ヒット商品を持つ企業は本当に長期的な成長企業になれるのか」という、より本質的な議論が交わされていました。
これは国内市場の成長が鈍化し、海外市場への展開を模索する日本企業にとっても、多くの示唆があります。
1. ヒット商品だけでは長期成長は難しい
Oura RingやWhoopは急成長している人気ブランドですが、投資家が見ているのは現在の商品ではなく、「次の成長」を生み出せるかどうかです。
番組では、過去にIPOした企業として、
・Fitbit
・GoPro
・Peloton
・Roomba
・Bird(電動スクーター)
などが紹介されました。
どれも市場を席巻するヒット商品を持っていましたが、その後は成長が鈍化し、株価が低迷したり、大手企業に買収されたりしました。
一方で、Garminはナビゲーション機器からスポーツウォッチ、航空機器、マリン機器などへ事業を広げ、長期的な成長企業へと変貌しました。
違いは、一つの商品を売る会社だったのか、それとも継続的に新しい事業を生み出せる会社だったのかです。
海外市場でも同様です。一つの商品が現地で成功したとしても、それだけでは持続的な競争優位にはつながりません。
2. AI企業ではなく、「AIへ入力するデータを集める企業」という見方
今回の議論で最も印象的だったのは、Ouraに対する評価でした。
一般的にはAI時代の勝ち組として語られることが多い企業ですが、番組に出演したヘルステックアナリストは異なる見方を示しました。
OuraはAI企業ではなく、AIへ入力するデータを収集する企業に過ぎないというのです。
確かにOuraは睡眠や心拍数、体温など膨大な健康データを収集しています。しかし、健康データそのものは既に電子カルテやスマートウォッチなどから大量に存在しています。
そのため、新たにデータを一つ追加したときの価値は徐々に小さくなっていくと指摘しました。
つまり、データを持っていること自体が競争優位になるわけではありません。
重要なのは、そのデータを使ってどのような価値を生み出すかです。
AI時代は「データが重要」と言われますが、より重要なのはデータを価値へ変換する仕組みです。
これは日本企業にも共通する課題ではないでしょうか。
IoTやDXによって取得できるデータは急速に増えています。しかし、本当に競争力になるのは、データを活用して顧客の課題を解決するサービスや、新たな収益モデルを構築できる企業です。
3. 海外で成長するには「商品」ではなく「仕組み」が必要
Ouraはリングの販売だけではなく、サブスクリプション収入も拡大しています。
売り切り型では成長が止まるため、継続収益を確保する仕組みを作ろうとしているのです。
さらに番組では、「OuraはAppleやAmazonの傘下に入った方が企業価値を高められるのではないか」という議論もありました。
巨大なエコシステムの中に入ることで、
・販売チャネル
・AI基盤
・顧客基盤
・データ活用
を組み合わせ、単独では実現できない価値を提供できる可能性があります。
日本企業が海外へ展開する際も、自前主義だけが正解ではありません。
現地企業との提携や資本提携、大手企業との協業などを活用しながら、自社の強みを最大限に生かす戦略も重要になってきます。
おわりに
今回のWSJの議論は、ウェアラブル企業のIPOを題材にしながらも、多くの企業に共通するテーマを投げかけていました。
・ヒット商品だけでは長期成長できない
・データを持つだけでは競争優位にならない
・AI時代はデータを価値へ変換する力が問われる
・海外では単独勝負だけでなく、エコシステムを活用する発想も重要になる
国内市場の成長が限られる中、多くの企業が海外市場へ活路を求めています。
そのとき問われるのは、「何を売るか」だけではなく、「どう成長し続ける仕組みを作るか」です。
OuraやWhoopを巡るIPO議論は、そのことを改めて考えさせてくれる興味深い事例でした。
https://youtu.be/M32c6Mmpx4U?si=_4VGCZpBYedT0sAq
