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短編小説「知ってる兄 しらないふり」

「今からお兄ちゃんが迎えにくるからさ、よかったら二人とも
どっかまで乗っていく?」と、あきこが言った。
 
せっかくひさびさに親友のあきことさつきと会えて、まだ募る
話もある。けど、あきこは今から家族で食事らしい。
しかも兄ちゃんが車で迎えにくるとのこと。

さつき「よき家族かよー」
私「あーそっちの世界線がよかった、あじわってみたいわー」

あきこ「えー? なに? 何が??」

私「うちも兄ちゃん迎えにこんかなーと願うわー。あ、奴は無免許やから 頼むことすらできんのだけど」

さつき「じゃ こないやろ笑」

私「そいいや、あきこさー高校の卒業の日
お兄ちゃんが ”おめでとう” て五線紙に書いたメッセージを部屋に置いといてくれたって言ってたよね」

さつき「言ってたよな。私は ”おめでとう” メッセージは百歩譲って良いとして、五線紙に書くのは、ありえへんなって当時思ったよ 笑」

あきこ「2人はそういうのない?」

私「あるわけない、こっちはこの間 また兄が職務質問うけて
もっとビジュに気をつけろって注意したばっかよ。
そんな妹に ”おめでとう” とかいう感じやったら
職質うける人になってないって」

私「高校卒業時も大学入学時もメッセージはさておき
 祝いをせがんだけど一円ももらえんかったわ」
 「兄妹でも金の貸し借りはあかんっていってたかな(遠い目)」

あきこ「いや 私はお金はせがんでないんだけど。しかも祝いだからお金の貸し借りではないんだけど、、、 
まあ それはそうと職質受けたって あんたの兄ちゃん何もしてないんだよね?」

私「うん何もしてない。 身なりが汚ないだけ。その日も普通に犬の散歩してただけらしいし。案外善良な市民よ」

さつき「えーなにそれ 笑」

私「でも私とあきこの兄ちゃんじゃさー偏っててどっちが正しいのかわからんよね?  さつき あんたん所はどうなん?」

さつき「えーなにが?? うちの兄?」

私「そうよ 兄が食事会の時に車で迎えにきたりする? もしくは卒業の時
 おめでとうって五線紙に書いたメッセージをそっと妹の部屋にしのばせたりする?」

さつき「あー兄はもう私が高校の時からヒモみたいな生活しちゃってるから
家にはおらんし、
たまに呼び出しくらって会ったとしても、実家からあれ持って来いとか
これ持って来いとか要求がある位。なんかいつも派手な女と暮らしてるわ」

私「え。上には上がいるんやけど! あんたそれ何も思わんの?」

さつき「まあ兄の人生やし、好きにしたらって感じ。女の人も面倒みたくて
みてるんだろうし」

私「クールやな。気持ちがいい位クールな妹やな」

さつき「そうよ家族と言えど、そんな事だってあるのよ」

私は、さつきとあきこと別れて三者三様の兄について考えながら、電車に揺られていた。
優しい兄が迎えに来る場面を想像してみたけれど、されたことがないから、うまく思い浮かばなかった。

最寄り駅について改札を出ると、警察とチャリに乗った怪しい男の人が話していた。

あれ? あの男って、ひょっとして……お兄ちゃん??

まさか、駅までチャリで迎えにきてくれたのか?


近くを通りすぎる時に、
兄はまたも職質をうけてる事に気がついた。


ここまで職質何度もうけてたら、そろそろ警察側もうちの兄の顔を覚えてほしい。

普通は顔見知りになるやろ。

私は笑いをこらえて、そのまま通りすぎてみた。

 

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