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「気持ちを出してはいけない…」頑張る看護師に必要な感情マネジメント

患者さんから強い口調で言われても、
冷静に対応する。

忙しくて余裕がなくても、
後輩には穏やかに声をかける。

不安や緊張を感じていても、
急変時には落ち着いて動く。

看護師は、さまざまな感情が動くなかで働いています。

それでも私たちは、

「感情を仕事に持ち込んではいけない」
「イライラを態度に出してはいけない」
「いつも冷静でいなければならない」

と、自分の気持ちを抑えようとします。

もちろん、患者さんに怒りをぶつけたり、
不安のまま行動したりしないことは大切です。

けれど、気持ちを抑えることだけを続けていると、心の中には少しずつ疲れがたまっていきます。

だから、看護師に必要なのは、感情を無理に押し込めることではありません。

自分の感情に気づき、受け止め、状況に合った行動を選ぶこと。

つまり、感情を「マネジメントする力」が必要なのです。

看護師の仕事は「感情労働」。

看護師の仕事は、
「感情労働」の側面が大きい仕事です。

感情労働とは
自分が本当に感じていることをそのまま表すのではなく、その場や役割にふさわしい感情表現を求められる働き方のことです。

たとえば、

患者さんから強い言葉をぶつけられても、
冷静に対応する。

自分も不安を感じていても、
患者さんやご家族には安心してもらえるように声をかける。

忙しくて余裕がなくても、
相手の話に耳を傾ける。

つらい出来事があった直後でも、
次の患者さんの前では気持ちを切り替える。

看護師は、知識や技術だけでなく、表情や声のトーン、言葉、態度まで使いながら働いています。

だから、患者さんに安心してもらうために、
自分の感情表現を整えることは、看護に欠かせない大切な力です。


けれど、それを毎日繰り返していると、

「本当はつらいのに、笑顔でいなければならない」

「腹が立っても、看護師だから我慢しなければならない」

「自分の気持ちは、あと回しにするしかない」

と、自分の感情を置き去りにしやすくなります。

表に出している感情と、心の中で感じている感情。
そのズレが大きくなるほど、心は少しずつ消耗していきます。


私も「感情を出さないこと」が正解だと思っていました

私自身も、看護師として、そして管理職として働いていた頃、自分の感情を抑えることが必要だと思っていました。

スタッフから相談を受ける時。

難しい判断を求められる時。

患者さんやご家族への対応に追われる時。

本当は不安でも、迷っていても、疲れていても、

「管理職なのだから、しっかりしなければ」
「私が動揺してはいけない」
「私が我慢すれば、現場は回る」

そう自分に言い聞かせていました。

何か問題が起きても、
不安な気持ちを抑えて、まず周りの人の気持ちを考える。

苦しいことがっても、
自分の気持ちは後回しにして、目の前の仕事を優先する。

それを繰り返すうちに、自分が何を感じているのかさえ、よく分からなくなっていきました。

「大丈夫です」

と口では言いながら、
心も身体も大丈夫ではなかったのだと思います。

不眠や頭痛、胃の痛みなどがあっても、「まだ頑張れる」と自分を動かし続け、気づいた時には、心も身体も限界に近づいていました。

今振り返ると、私は感情をコントロールしているつもりで、ただ押し込めていたのだと思います。

感情は、抑えれば消えるわけではありません。

気づかないままにしていると、心や身体を通して「もう苦しいよ」と知らせてくることがあります。

だからこそ、自分の感情に気づくことは、わがままでも甘えでもなく、自分を守るために必要なことなのです。

感情を抑えるだけでは、心は整わない

感情を表に出さず、目の前の仕事を続ける。

看護師にとって、それが必要な場面はたくさんあります。

けれど、

「イライラしないようにしよう」
「悲しくても、早く気持ちを切り替えよう」
「不安を見せないようにしよう」

と抑えるだけでは、
心の中にある感情まで消えるわけではありません。

その場では対応できても、
勤務が終わったあとに一気に疲れを感じたり、
家に帰ってからも出来事を何度も思い返したりすることがありますよね。

だからこそ大切なのは、ただ感情を表に出さないことではなく、

「今、私は何を感じているのか」
「なぜ、この感情が生まれているのか」


に気づくことです。

ここに、「感情コントロール」と「感情マネジメント」の違いがあります。

感情コントロールは、感情マネジメントができてこそ

感情コントロールとは、
湧いてきた感情をそのまま表に出さず、表情や言葉、行動を調整することです。

たとえば、

「イライラしているけれど、きつい言い方をしない」
「不安だけれど、慌てずに確認する」
「焦っているけれど、一つずつ優先順位を整理する」

などです。

一方、感情マネジメントとは、
自分の感情に気づき、その背景を理解し、
どのように扱うかを選ぶ一連の流れです。

「私は今、何を感じている?」
「なぜ、そう感じている?」
「この感情は、私に何を伝えようとしている?」

そうやって自分の内側に目を向けたうえで、
次の行動を選びます。

感情そのものは、自由に選べません。

理不尽な言葉をかけられれば、怒りを感じることがあります。

急変が起きれば、不安や恐怖を感じます。

業務が重なっている時に声をかけられれば、「今は無理」と思うこともありますよね。

選べるのは、感情が湧いたあとの受け止め方や表し方、そして行動です。

たとえば、

患者さんから強い口調で責められ、イライラした時。

「怒ってはいけない」と抑えるだけではなく、

「私は今、怒りを感じている」
「一方的に責められて、理不尽だと感じたのだと思う」
「まずは呼吸を整えよう」
「必要な説明は、落ち着いて伝えよう」
「一人で抱えず、あとでリーダーに相談しよう」

と、自分の感情を理解したうえで行動を選びます。

感情コントロールは、ただ我慢する力ではありません。

感情マネジメントという土台があってこそ発揮できる、「自分の行動を選ぶ力」なのです。

感情を整える4つのステップ

感情が大きく動いた時は、
次の順番で自分の内側を見てみましょう。

① 感情に名前をつける

「イライラしている」
「悔しい」
「怖い」
「悲しい」

まずは、今の感情を短い言葉にします。

感情に名前をつけるだけでも、自分と感情の間に少し距離が生まれます。

② 感情の背景を知る

「なぜ、私はそう感じたのだろう?」

と、自分に聞いてみます。

怒りの奥に、「分かってもらえなかった悲しさ」や「大切に扱われなかった悔しさ」が隠れていることもあります。

③ 感情が伝えていることを受け取る

感情は、自分の大切なものを教えてくれるサインです。

怒りは「これ以上は無理」という境界線を、
不安は「少し立ち止まって確認したい」という気持ちを伝えているのかもしれません。

④ 次の行動を選ぶ

最後に、

「今の私にできることは何だろう?」

と考えます。

•深呼吸をする。
•少しその場を離れる。
•必要なことを落ち着いて伝える。
•誰かに相談する。
•その場では対応し、あとで気持ちを言葉にする。

感情を否定せず、自分で行動を選べるようになることが、しなやかな感情マネジメントです。

感情が動くのは、看護に向き合っているから

看護の仕事は、感情が動いて当然の仕事です。

命に関わる緊張。
患者さんやご家族の悲しみ。
思うような看護ができない悔しさ。
職場の人間関係の難しさ。

さまざまな感情が生まれるのは、
それだけ真剣に人と向き合っているからです。

だから、感情をなくそうとしなくていい。

感情に振り回されるのでもなく、我慢して押し込めるのでもない。

自分の感情を受け止めたうえで、どう行動するかを選ぶ。

その力は、自分の心を守るだけでなく、持っている知識や技術を落ち着いて発揮する力にもつながっていきます。

今日のしなやかワーク(1分)

心が動いた場面を一つ思い出してみてください。

そして、自分にこう聞いてみましょう。

「私は、何を感じていた?」
「その感情は、私に何を伝えたかった?」

答えを変えようとしなくても大丈夫です。

まずは、自分の感情に気づくことから。

感情を整える最初の一歩は、自分の心の声を置き去りにしないことから始まります。

最後に

看護師だからといって、いつも穏やかで、冷静でいられるわけではありません。

不安になる日も、腹が立つ日も、悲しくなる日もあります。

大切なのは、感情を出さないことでも、きれいに切り替えることでもありません。

「私は今、こう感じているんだね」

と、まず自分の気持ちを置き去りにしないことです。

自分の感情に気づき、受け止めたうえで、次の行動を選んでいく。

その小さな積み重ねが、感情に振り回されず、我慢しすぎない、しなやかな心を育ててくれます。

患者さんや周りの人の気持ちを大切にするように、自分の気持ちも大切にしていい。

感情マネジメントは、よりよい看護のためだけではなく、看護師として働くあなた自身の心を守るための力でもあるのです。

今日もさまざまな気持ちを抱えながら
患者さんの前に立っている看護師さんへ。

いつも誰かのために頑張っているあなたの気持ちも、置き去りにしないでくださいね。

あなたが感じていることも、大切にしていい。

今日も本当に、お疲れさまです。

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