採集へ行きたい

鉱物関連のささやかな匿名オンラインコミュニティに半分身をおいていたことがあり、
今でもたまにそこへ顔を覗かせて何か呟くことはあるが、
そこの人間たちはミネラルショーや競りで石を買うことの話をおもにしていて、
私のような自然に分け入って(※1)採集することの話はそこではほとんど目につかなかった。

私は石を買ってガラスケースに入れて名札などを添えて飾ることに興味が無い。

自分で採集したものを木箱か菓子箱にひっそり仕舞ってときどき取り出して日光に透かすなり簡易顕微鏡で眺めることにしか心が躍らない。

まるで自分が生娘しか受け付けない性的主義の人間のような気がして我ながら一種の恥ずかしさや面倒臭さを感じるけれども、
誰かが先に見つけた石というものに、まったくと言って良いほどに、ときめきを感じないのだ。

古着や古本にはこのような否定的な感覚は湧かないのに、こと石については処女主義なのは、自分でもなぜなのか興味深い。
そういうわけで私は採集へ行きたくて堪らないのだが、良い石の出るところというのは決まって

めちゃくちゃ熊出る


ここらへんでいえば最近とてもショッキングな人喰い事故の起きた地域がちょうど玉髄や水晶を始めとした様々な鉱物の産地で、
五年程前に参加した廃鉱山トレッキングツアーでは許可を得てそこで水晶や人工鉱物をいくつか採集した。

こうしたトレッキングツアーなどに参加すれば山林へ行くのにもいくらか安心はあるけれど、個人ではなかなかそうはいかない。
また、当然だが私有地に無断で入ることは許されない。

危険については河川もそうだ。

石拾いに夢中になり急な増水に巻き込まれるかもしれないし、水を飲みに来た熊にバッタリと遭遇する可能性は高い。

私が一方的に存在を知っているだけだが、県南在住の筋金入りの好事家はこれまでにこの趣味のために三度も熊に遭遇し、増水にも巻き込まれかけたことがあるようだ。
それでもこの趣味をやめない姿勢には畏敬の念が湧く。

私にはそこまでの勇気は無い。

そういうわけで、
『結局はその程度の情熱なのだ』と言われれば返す言葉もないが、

最近は採集へ行くことに二の足を踏み、炬燵でもぞもぞしながら、これまでに拾った石たちを眺めている。
今回の正月はなんとなく実家へ帰省する気力もわかないから、一週間こうしてアパートで石を眺めていることだろう。

ちょうど餅も高いことだし、餅のような白石を三つ重ねて、その上に蜜柑を置き、鏡餅とすることにしようと考えている。


私はロックバランシングも好きなのだ。



(※1)自然に分け入ってなどと格好のいいことを書いたが、採集はおもに出掛け先のひらけた河原や海岸でしており藪漕ぎのようなことはツアーでしかやらない。筆者が悪質な私有地荒らしで無いことをここに明言しておく。








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