無回転で、回る。
本気で賞を狙いにきました。
今回は、信念を曲げてカツカレー賞に標準を合わせています。
カレーの具材になって、どっろどろのぐっちゃぐちゃに煮込まれる覚悟で臨みます!
★
私は炙りサバ寿司。
2ヶ月前から、この「無回転寿司」で回り続けている。
回転寿司なのに、無回転寿司。
「回らん寿司っぽくね?ウヒヒ」
「あと、“向かいの店舗”ともかかってる。ウシシ」
みたいなテンションでこの名称になったらしい。
ユーモアと内輪ノリをはき違えたパターン。
この店には、ひときわ異彩を放つ存在がいる。
いま、ちょうどレーンでこっちに近づいてきている――
「やあ、炙りサバ寿司様。今日も脂が乗ってるねぇ」
そう、カツカレーだ。
回転寿司に、カツカレー。
なんでだよ。
聞いたことねぇわ。
“現実世界との整合性”どうした。おもいっきり乖離しまくってんじゃねえか。(でも今回はオッケーとします)
「キミってさ、脂乗ってるのに酢が効いてて、クドくならないよね」
「炙り方もうまい。その苦みがユーモアになるんだな」
「そしてネタが美味いのに、シャリもしっかりしてる。お見事」
「追伸:でもさ、脂のノリがその日によって違うんだよな~。今日は塩強めか?」
なんかいろんなもん駆使して、上手いこと言ってるっぽい雰囲気のこと言ってくる。
待って。「塩強め」はどっち?褒められたの?けなされたの?絶対けなされてますよね?
何が「クドくならないよね」だよ。
カロリーお化け野郎が。
カレーのおまえに、生魚の味覚の何がわかる。
大体、カレーライスなんて食べちゃったら、もう客はお腹いっぱいなのよ。
なんで回転寿司にカレーライスなんて置いちゃったんだよ。
どうせいつもの内輪ノリでしょう?
せめてカツはやめろ、カツは。
ある日――。
厨房から、バイトの話し声が聞こえてきた。
「カツカレーの奴さ、浮いてない?wwww」
「逆!逆!浮いてるんじゃなくて、沈んでんのよ。あいつだけ、他の皿より重いもん。レーンにかかる負荷がすごいwwww」
なんだ、あいつら――(地味に上手いこと言いやがって)
いやな感じだけど、別に、カツカレーのことなんてどうだっていい。
そう思って尾っぽ(踵)を返すと、目の前に、カツカレーの背中(ライス部分)があった。
ルーの滴がぽたり、と落ちた気がした。
「カツ…カレー」
「ああ、きみか」
カツカレーが、私に気づいて、鼻ルーをすする。
「あの、さ…
「キミにはさ」
私の言葉を、カツカレーが遮った。
「キミにはさ、真っ茶色のルーにどっぷり浸かる覚悟、ある?」
「えっ…?」
とまどった。
「わからないよ。だって、私は、カレーじゃないもん」
「なんだよその返し。浅い。5点。100点満点中の、5点だ。どうした、腹痛か?
……僕には、あるよ。ずっとそうして生きてきた」
そうだ。こいつは、カレーだ。カレーなのに。
たった、ひとカレーぼっちで、魚の群れ(あとスイーツ多種)の中に投げ込まれて――
「ねえ、カレーは、……冷めることが怖くないの?」
「怖い?なぜ?冷めてもまた温め直せばいいだけじゃないか」
ほら、こいつはまた――
「っぽい」ことを言って、「っぽい」雰囲気を作り出す。
この無回転寿司に、客席に用意された電子レンジなんてないのに――
でもカツカレーのそんなスパイシーさが、また私を奮い立たせる。
おまえは私にとって、最悪のベストパートナーだ。(無理やり)
★
ちょっぴり字数をオーバーしてしまいました。
これが大賞なのはほぼ間違いないので、ルールの方を改正してください。
※参加してみた
いいなと思ったら応援しよう!
あたしのことはいいから!そのチップは、おまえとおまえの大切な人のために使え!