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完璧なショート・ショート

第一章 完璧なショート・ショートを作る


完璧なショート・ショートを、作る。
一文で、世界をひっくり返してやる。

はじまりは、――「あ」。
それが、すべての根源。
息が、音へ。
音が、意味へ。
意味が、世界をかたちづくる。

そして、終わりは「ん」。
音の鎖の、最後の輪。
すべての物語は、そこへ至り、
やがて、静かに閉じる。
「ん」で終わる。それが、真理。



アイス。


アイス
スイカ
カモメ
メダカ

キジ

……「ジ」?

こういう場合、どうすんの?「ジ」?「シ」?
どっちでもいいことにする?

「し」「じ」、そして「ぢ」

鼻血は「ぢ」なのに、
地面は「じ」。

世界の線引きなど、曖昧なものだ。
決めるのは、私だ。
やりやすそうな「し」にしとけ。
迷うな。
「詩」を握りしめて、進め。

シンガポール

「る」。

「る」の選択肢は、少ない。
ルール? ルビー? ルーレット?

限られた選択肢の中でこそ、人は逞しく、ずるく、そして正直になる。

ルマンド

商品名は、セーフかアウトか。
そのギリギリのラインを、あえて私は行く。
齧ったルマンドは、私を肯定するかのように――
さくっと、甘い。
進め。

ドーナツ

って入力しようとしたら、予測変換で「ドーナッツ」が出てきた。
……ドーナツ? ドーナッツ?
どっちでもいい。
目を背けても、しりとりは進む。
でも、それでいいの?
違和感を見て見ぬふりして、おまえは進むのか。
そんなおまえが完璧を語るのか。
――いや、そこはいい。
キスだってキッスだって、いいじゃない。
カメラでも、キャメラでも、いいじゃない。
ねえ、アッコさん?
進め。


メダカ

…メダカは、さっきもう出た。
反復は美しくない。
同じ音を繰り返せば、世界は曇る。
ならば、ニュアンスを変えよう。
「目玉」であるべきだ。
音は、意味を失い変質してゆく――

目玉
マジック
臭み

臭み!?それ名詞!?(※名詞です)

もやる。
けれど、すべてのもやもやに刃を振り下ろすことのみが正義ではない。
グレーゾーンも掻き分けて、進め。

ミカン

世界は、終わった。

…ジュース。


世界はまた、回り始める。
完璧なんかじゃなくても。
何度でも。
何周でも。
ほんのすこしずつ、軌道を変えながら。


第二章 完璧なショート・ショートを壊す


ショート・ショートに挑戦してみました。
どうでしょう。

「ショート・ショート」。
この言葉を、私はnoteを始めてから知った。
(そしてnoteではやたら目にする。)

「ショート・ショートを知らない私が、完璧なショート・ショートを仕上げる」

うん、いいなこれ。

関谷天才!それnote的!(←AIがよく言うやつ)
メタ的構造!(←これもAIがよく言う。メタってなんですか)

とりあえず、仕上げた。
うん、完璧。

……じゃないな、

これ、登場人物も、物語の動機も経緯も、情景描写も、皆無。
情報がなさすぎる。
なんにもわかんないじゃない。
よって、リアリティ、ゼロ。

このままじゃだめだ。
まずは人物設定から詰めよう。
物語とは、常に“誰が語るか”に支配されるものだ。
しりとりだから、子どもだな。小1の女の子でいっか。

――いや、違う。

そもそもこの主人公は、なぜ、しりとりをしているんだろう。
やたら「進め、進め」うるせえ。
これは、いま身動きがとれなくなってしまっている自分への鼓舞だ。
子どもの精神性じゃない。
大人だ。
大人同士でしりとりなんてあんまりしないから(するかもしれないけどリアリティが損なわれるので却下)、大人と子ども。
母(37歳)と娘(6歳)でいこう。

母はなぜ、完璧なショート・ショートを作る必要があったのか。
“完璧さ”への憧憬?
あるいは、“そもそも完璧など存在しない”という、アンチテーゼ?
いや、そんな高尚な話じゃないのかもしれない。
母であり、妻であり、女であり、契約社員である人。
朝は弁当を詰め、昼は書類を詰め、夜は感情を詰め込んで寝る。
ごみの分別を守らない夫。
まだ洗濯していない服を「どうしても今日着る」と言ってきかない娘。
書類の中身も確認せずに判をつく上司。

そんな、完璧な日常。
そこから脱却したいのか、とどまっていたいのか。
しりとりのような、思考のループ。
終わらない、でもどこかで「ん」が来るのを、密かに待っている。

「母」の意図を解明しない限りは、「なぜしりとりをしているのか」という根本的疑問を抱えたまま最後まで読み進めることになる。
迂闊だった。プロット上の初期設定の欠落。これを放置するのは、怠慢でしかない。

なぜ、しりとりを――?

娘(6)が「ママ、やろー」って言った。オッケー、解決。

いや、でも、まだだ。
この物語の致命的なミス――。
それは、現実世界との整合性が著しく欠けている点にある。
「ミカン」によって世界が終わり、「ジュース」で再生する。
因果関係がよくわからない。
しりとりが終わっても世界は終わらないし、もちろんまだ終わってない世界は「ジュース」で始まることもない。
ここもまた、構造の脆弱さが露呈している。
完璧を目指すあまり、現実が追い出された。
現実のない物語に、完璧なんてあるのだろうか。

あと、「る」は「ルマンド」より先に「ルビー」からいけよ。
思いついてんじゃん。
ルマンドは最後の砦でしょうが。

「臭み」もだめだな、6歳の子どもにはむずい。
最近の子どもだし、「グミ」だな。
「じ」を「し」がオッケーなルールなら、「く」を「ぐ」もイケるっしょ。

よし、整った。
今度こそ、完璧な「ショート・ショート」が書ける気がするけど、台本がすり替わってる気もするんだけど気のせいですか。


第三章 進め。


そして最初の「あ」からまた始まる。
——ほんのすこしだけ、軌道を変えながら。


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