勇者と、老婆と、バトン剣。
これは他の人から回ってくる質問の束である。
質問に回答して、次の人に回す。
① 最近よく考えていること
答えは、もう書いた。
② ここ一年で、考え方が変わったこと
「私は40代後半である」という認識から
「私は50代前半である」という認識にシフトした。
ただし、
「50ぴったりはギリ40の延長でしょ?」
という足掻きもまだちょっとあるっちゃある。
③ いま一番よく使っているもの
頭と目
④ 逆に、手放してよかったもの
信用取引口座
⑤ 最近うれしかった、取るに足らない出来事
今日スーパーで押したカートの滑りが良かった。
⑥ いま、少しだけ不安なこと
視力
左足首の違和感
⑦ 子どもの頃の自分に言いたい一言
「信用取引は借金だ」
「上場直後のYahoo[4689]とセリア[2782]は、
多少無理してでも買っとけ」
⑧ 最近「これは自分っぽいな」と思った瞬間
姪の自堕落な気質と乗り物酔い体質
⑨ 好きだけど、うまく説明できないもの
説明?
いくらでも証明してやるよ。
⑩ もし一日だけ自由に使えるなら、何をする?
毎週末と毎祝日の過ごし方を、
まんま報告すればいいですか?
⑪ これを読んでくれた人に、ひとこと
ありがとう。
そして、どういたしまして。
⑫ 次にバトンを渡すなら、どんな人?
#いまの自分がわかるバトン
よし、できた。
さて、と。
セキヤはホームセンターに向かい、
スコップを購入すると、庭の土を掘り起こして、
バトンを埋めた。
これでよし。
★
長い、長い、年月が流れた。
町に一体の魔獣が現れた。
それは、人間の心が生み、
言葉がカタチを与え、
沈黙が育てたものだった。
「善意は受け取れ」
「絆を深めろ」
「信頼を裏切るな」
魔獣はひとつ増え、ふたつ増え、
気づけば数えられないほどに増殖していた。
町は一瞬で破壊された。
黒い影が空を覆い、
次の瞬間、教会に炎が上がった。
魔獣が動くたび、
家が潰れ、
道が裂け、
人が散った。
立ち向かう者もいた。
叫びながら槍を放つ者。
猟銃の引き金を引く者。
けれど、魔獣は理不尽に強かった。
「だめだ…!」
「勇者は、まだか」
「勇者よ――」
★
さらに年月が流れ、
世界は、完全に魔獣に支配されていた。
いま、勇者は目の前の光景に呆然としている。
(え~…… なにこれぇ…
聞いてたのと違うんですけどぉ…)
『予言の書』には、こう記されていた。
この剣を抜きし者、真の勇者なり。
その刃、魔獣を討ち、
その歩み、町を救わん。
剣は、この渓谷にあるはずだった。
だが目の前には、
大小さまざまな棒が、
土からにょきにょきと突き出している。
「来たか、勇者」
振り返ると、老婆が立っていた。
「あなたは…?」
「別に。ただのここの住人」
「セキヤ渓谷に伝説の剣が埋まってるって聞いたんですが……」
「あっそ」
「あの、この棒は……?」
「バトンだよ」
「……バトン?」
「うん。それが剣」
「えっ!?」
老婆は、ふっと笑った。
「善意で磨かれ、
期待で飾られ、
抜かなきゃいけない気になった剣。
祝福と呪いの境目に、ぶっ刺さってる」
「……これ、何本あるんですか?」
「84本。ちょうど、フォロワーの数だ」
「はあ……(?)」
「これ、抜けばいいんすか」
「いいよ。ただし――」
老婆は言った。
「抜かなくてもいい」
「なにそれ!?」
「この剣を抜けば、きっといいことがあるだろう。
でもね、抜くかどうかは、おまえが決めることだ。
重たいなら、抜かなくていい。
こんなもん、抜いても抜かなくても、どっちでもいい」
勇者は食ってかかった。
「どっちでもいいわけないだろ!
僕は選ばれた勇者だ!
町のみんなが困っている!」
「おまえのせいじゃないのに?」
「……」
「勇者、年はいくつだ」
「15」
「若いな」
老婆は、遠くを見る。
「あの魔獣はな、
mixiの頃から、もういたんだ。
いや、もっと前だ。
昭和の“不幸の手紙”の時代から、いた」
「不幸の手紙……?」
「あ、知らない?
“この手紙を5人に回しましょう。
さもなくば不幸になります”ってやつ」
(知らない。)
勇者は黙った。
「あれを生み出したのは、人間だ。
おまえが生まれるより、ずっと前の話だ。
おまえが負うべき責任じゃない」
「……にしても、
こんなにたくさん、誰が埋めたんでしょうね」
「あ、それ、あたし」
「えっ!?」
「抜きたきゃ、どれでも抜いてっていいよ。
どうせ余るし。
ちょうどいま見たら、業者1人減ってたし。
埋めるとき、業者分もフォロワーに数えちゃったからねー。えへへ」
「は、はあ…」
「だからさ」
老婆は続ける。
「責任なんて、受け取らなくていい。
選ばれるのを待つな。
抜きたきゃ抜け。
抜かなくても、勇者だ」
(でも……
違う、そうじゃないだろ、
だって――!)
勇者は、叫んだ。
「でも、あなたもバトンを引き受けたんですよね!?
あなたは、期待に応えようとした!
責任を果たしたんだ!」
「勇者よ、それは違う」
老婆は静かに言った。
「私はこのバトンを誰からも受け取ってはいない。
他の人らがやってるのを見て
いいな~、楽しそうだな~って思って、
勝手にコピペして使ったの」
勇者「いやそれ、せつなすぎんだろ。泣くわ」
⑫ 次にバトンを渡すなら、どんな人?
バトンはここに埋まっています。
獲りに来い。
順番待ちなんかしてないで、
自分から選ばれるんだ。
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