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泥臭い問題解決の先に、本物のビジネスチャンスは存在する!

先日、仕事の関係で東京のとある下町を訪れた。いま、私は大きな仕事を取れるかどうか、ギリギリの攻防をしている案件を抱えている。

それは、下町にある大規模な工場跡地の有効利用に関する案件である。最寄り駅から歩くには少し距離があるものの、周辺は非常に閑静な住宅街が広がる好立地だ。所有者である企業は、工場を郊外に移転させ、この広大な跡地を有効に活用したいという意向を持っていた。

そもそも、この所有者から相談を受けたのは数年前のことである。とある既存のお客様から、長く付き合いのある会社の相談に乗ってやってほしいという連絡をいただいたのがきっかけだった。

初めて話を聞いた際、立地や規模といった表面的な要素だけを見れば、非常に魅力的な不動産に思えた。しかし、内実を紐解いていくと、極めて複雑で一筋縄ではいかない問題をいくつも抱えた案件であることが分かった。

まず、敷地の中央部に他人が所有する土地がいくつか点在していた。現在は、その所有者から該当する部分を借地して工場の一部として使用している状態だった。

次に、隣地から引き込まれている排水管やガス管が、敷地の中央を横切る形で埋設されていた。

さらに、土壌汚染の懸念もあった。彼らが工場用地として取得する以前の、過去の用途に起因するものらしい。現所有者にとっては甚だ気の毒な話であるが、現代の法律では所有者責任において処理する必要がある。

これらの不動産にまつわる問題は、戦前や戦後あたりから長く所有している事業用不動産には、ある種付き物といえば付き物である。配管を敷地の外周へと付け替えることや、土壌汚染を正しく調査・処理するという問題は、多少の時間とお金を覚悟すれば解決できることがほとんどだ。

しかし、他人の所有地をどうにかしなければならないという問題は、それらとは比較にならないほど厄介である。今回の事例では、敷地中央にある他人地を買い取るか、あるいは他の土地と交換するなどして、全体の権利関係を一体化させなければ、まともな開発は不可能であった。

ただ、相手は人様の所有地である。机上の計算通りにはいかず、お金の問題を超えて感情的になってしまう可能性が常に付きまとう。交渉がうまくいくかどうかは、その所有者の個人的な事情や、これまで当事者同士がどのような付き合いをしてきたかという歴史によるところが大きい。今回のケースでは、過去の地代の交渉において何度か意見の隔たりがあった関係だったため、当初からかなりの難航が予想された。

そこで、我々は日頃から馴染みのある弁護士事務所と膝を突き合わせ、綿密な作戦を練った。その他人地の所有者にとって、将来的に確実な利益になるような代替地をこちらで探し出したうえで確保し、その土地と現在の土地を交換してもらおうというスキームである。

これは言葉で言うほど簡単ではなく、非常に難易度の高い方法だ。しかし、全てのパズルが綺麗にはまれば、一気に解決へと導くことができる。まずは、相手がどのような土地であれば交換に応じても良いと考えるか、その本音を探らなければならない。

そして、その条件に見合う土地を市場から探し出してくる。その上で、今度はその代替地の所有者に対して、土地を譲ってくれるよう交渉し、買い取らなければならない。

交渉の途中で、登場人物のうち誰か一人でも気が変わったら、その瞬間に全てが白紙に戻る。そんな綱渡りのような交渉を粘り強く続け、実に3年の歳月を費やして、ようやく敷地の問題を全て除去する目処を立てることができた。

我々としては、当然ながら問題を解決した後は、我々の事業用地として利用させてもらうためにこれまで汗を流し、お手伝いをしてきた訳である。

しかし、問題が解決に向かったと分かった途端、それまで静観していた様々な金融機関や競合他社が急に囲い込みに入り込んできてしまい、状況は一変した。

つまり、我々は最も難易度の高い地上げや権利調整の部分を手伝ったものの、最終的にその土地で我々が望む事業ができるかどうかは、全く分からない状況に追い込まれてしまったのだ。

とはいえ、最初のお手伝いを始める段階で「問題を解決してあげたら、将来は我々だけと組んでくれ」というような図々しい契約を迫る話は、ビジネスの現場ではなかなかできるものではない。相手企業には相手企業の、組織としての事情がある。

我々は、まず最初にリスクを取って進んでお手伝いをすることにより、彼らとの関係を誰よりも深くし、真の事業パートナーとしての信頼を勝ち取るという、中長期的な作戦で臨んでいた。甘いと言われるかも知れないが、これから先、何十年という長いお付き合いをするのであれば、それが最善の道であると考えたのだ。

しかし、ある日、残念な連絡が入る。どうやら他社を公式なパートナーに決めたらしいという情報が、信頼できるある筋から入ってきた。

がっかりし、自らの戦略が甘かったのだろうかと自問自答しながら、工場を所有する会社の社長との面談に臨んだ。

面談の席で、私は自分の想いを率直に、しかし冷静に伝えた。

我々は問題を解決したからといって、無条件で我々をパートナーにしろとは口が裂けても言わない。ただ、もし他社と同じような条件なのであれば、どうか我々を選んで欲しい。 

静かに、そう語りかけた。

社長はまっすぐに私の目を見て、こう言葉を返した。

他社に決めたというのは誤解である。会社という組織である以上、経済合理性や株主への説明責任は当然必要になる。しかし、社内や関係者にしっかりと説明がつく形の条件を提示してもらえるのであれば、私はあなたと組みたいと思っている。

確約はできないという前提ではあったが、これまでの苦労が報われる、非常に嬉しい言葉であった。

やはり、我々のとってきたアプローチは間違っていなかったと確信した。不動産ビジネスの現場において、相手が困っている難しい問題、他人が嫌がる複雑な案件に進んで飛び込み、解決を提供することによって、必ずやその先に大きなビジネスチャンスが巡ってくる。

この一貫した信条を曲げることなく、これからも実直に事業を続けていきたいと思っている。

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