51.日本が独立・自尊の国になるためにー勝海舟、屋根に昇って星を取る
勝海舟は文政六年(一八二三)本所亀沢町で、幕臣父小吉、母信の長男として生。まれた。
親のつけてくれた名前は麟太郎。
「父上、あの天上の星が取りたい。取ってください……」父親の小吉は、「良し、屋根に上れ、とってやろう」と言った。すぐに小吉と麟太郎の親子は熊手をもって屋根に上った。
「麟太郎、危ない!」と下から母のお信が叫ぶ間もなく、小吉と麟太郎は屋根から転げ落ちた。
という事実があったかなかったか、何しろ勝海舟の小さい頃からの手習いは、剣術と坐禅であった。「天上の星をとって来い」という難問は、禅問答だ。
お目見えの身分になれない勝家の嫡男麟太郎は、父母の愛情に恵まれ、素直な青年に育った。
高橋泥舟、山岡鉄舟の幕末の偉人二人に海舟を加えた3人はいずれも坐禅で心胆を練った。
薩長を中心とした討幕軍の大将西郷隆盛もやはり坐禅によって心の錬磨を積んでいた。
だから周囲の思惑に左右されずに、日本のために何が最善の策であるかを考えて打った策が、江戸城の無血開城である。
その結果、江戸の町民たちは戦火を免れ、西欧列強の植民地にもならずに済んだ。
自己の出世や周囲の思惑を気にしていたのでは、乱世での政治家は務まらないと知っておいた方が良い。
維新・幕末期はエンターティンメントの宝庫。
「政治家は辛い」のです。
いま上映中の白石和彌監督・池上純哉脚本の映画「十一人の賊軍」が面白い。薩長を中心とする新政府軍と奥羽越列藩同盟との板挟みになる新発田藩。
新発田藩は若い主君溝口直正(柴崎楓雅)に代わって政治の実権は城代家老溝口内匠(王阿部サダヲ)が握っている。
新潟へ迫る新政府軍、通過点として新発田藩内へ進軍してくる。
一方同盟軍も新発田藩の意向を疑って城内に監視役が入って来る。新発田藩はどちらに味方するのか?
新政府軍に疑われないように考え出されたのが、「十一人の罪人」を藩の砦に派遣し、「敵」と戦わせ、侵入を防ぐ策である。
最後まで戦いあり、恋あり、涙ありで黒沢映画を観ているようだ。
最後は新発田城下も新潟湊も戦火にまみえることなく「無血開城」だ。
そこにいたるまでは犠牲者も多数いる。
「大の虫を生かすために小の虫を殺す」物語だ。
江戸城の無血開城程大がかりではないが、政治家とはなんと阿漕な仕事だ、と考えさせる映画である。(つづく)
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