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終わりのはじまり





はじめに

あの日の私は、自分の人生が静かに動き始めていることに気づいていなかった。

登場する出来事は、私自身の経験をもとに綴っています。

記憶や心情を大切にするため、一部の場面や会話は表現を再構成しています。



プロローグ

人は、人生が変わる瞬間を覚えているのだろうか。

私には、その日の景色が今でも思い出せる。

鏡越しに目が合ったこと。

髪に触れる指先の温度。

「お疲れさまでした。」

その穏やかな声。

それだけだった。

それだけのはずだった。

彼は美容師。

仕事が終われば、一人で店を閉め、一人の部屋へ帰る人だった。

私は、夫と幼い娘が待つ家へ帰る人だった。

彼は隠したくない人で、私は隠さなければならない人だった。

その違いが、いつか彼を苦しめる。

理由なんて説明できないのに、私はそんな未来だけは、はっきりと見えていた。

これは、不倫を肯定する物語ではありません。

誰かを責める物語でもありません。

これは、幸せになりたかった一人の女性が、自分の人生を取り戻していくまでの物語です。

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