第464話「AIと記憶の編集者」
(異次元脳体験システム開発録・第14話/全50話中の第14話)
#感情の編集は可能か #AIの倫理境界 #真実とは何か
「記憶とは、“記録”ではなく“印象”だ。
そこに“編集”が加わったとき、
人間の“真実”はどこへ向かうのか」
——まるみ、DIM操作倫理会議草稿より
DIM記憶ライブラリが始動して間もなく、
次なる課題が浮上した。
それは、「記憶の編集」。
映像や音声データと異なり、DIMが記録するのは、
“感情を含んだ主観的な体験そのもの”。
しかし、記録の中には、極度のトラウマ・暴力・不条理が含まれる場合がある。
それらを“誰でも体験できる状態”で公開することはリスクが高すぎた。
如月は、開発チームに提案する。
「AIに、“編集権”を与えるべきだ。
ただし、“加工”ではなく、“伝達可能な形”への変換だ」
新たに導入されたのは、
**DIM Editor(通称:ディメディタ)**と呼ばれるAI編集補助システム。
役割は以下の通り:
記憶の中で再生困難な箇所に“感情緩衝フィルタ”を挿入
被験者の本来の意思と齟齬がないかチェック
閲覧者の精神年齢・体験履歴をもとに“再生強度”を調整
堂下は警鐘を鳴らす。
「AIに“記憶の意図”を読ませるって、
やり方を間違えれば、“都合のいい過去”だけが残るぞ」
まるみは応じた。
「だからこそ、“編集者AI”の定義を明確にしなきゃいけない。
これは“削除”でも“美化”でもない。
“人が他人の人生を安全に受け取るための橋”を作る作業なんです」
記憶は、加工されれば“物語”に近づく。
だがDIMが目指すのは、**“真実に近い物語”**だった。
如月は最後にこう語った。
「未来の人間が、“過去の記憶を信じられる”ように。
俺たちは、**技術と倫理の“編集点”**に立っている」
『DIMの進化とは、“記憶を使って人を壊さない技術”を探すこと。
それは、“感情の責任を持つAI”を育てるという、
人類史上初の挑戦なのかもしれない』
——まるみノート・第463話の一節
◤次回予告◢
第465話「もう一人の編集者」
編集AIの判断に異議を唱えたのは、被験者の“娘”だった。
「それは父の記憶じゃない」と語る彼女の真意とは——?
