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またその季節か

先日、妻から職場での休憩時間の話を聞いた。

話し相手は20代の女の子らしい。

彼女いわく
最近はマッチングアプリで気軽に男性と
出会い、一度会ってみて「あ〜、ないな」と
思った相手は、アプリもLINEもそのまま
ブロックしてしまうのだという。

理由を聞くと、
「その方がコスパがいいから。」
とのことだった。

なるほど。
そういう時代なのかもしれない。
ただ、一度だけ会って、もう二度と連絡が
取れなくなるというのは、男性側からすると
少し切ない気もする。

そんな話を聞いていたら、高校時代の友人、
細田のことを思い出した。

細田は高校三年間で、同級生のアヤちゃんに
6回告白して、6回とも振られるという
なんともあっぱれな伝説を持つ男だった。

地元の夏祭りの前。
クリスマスが近づいた頃。
修学旅行の夜。

なにかイベントがあるたびに
告白していた気がする。

最初のうちは周囲も面白がって、
一緒になって盛り上がっていたけれど、
5回目、6回目あたりになると、
「ああ、またその季節か。」
という空気になっていた。

『球技大会』や『文化祭』と同じくらいの
定例行事になっていたような気がする。

細田は本当に一途だった。

彼は6回目の失恋の後も、
しばらくは引きずっていた。
その頃、小柳ゆきさんの
『あなたのキスを数えましょう』
が流行っていた。

細田はその曲を聴くたびに、

「アヤちゃんのこと思って
 切なくなんねん。」

と、ムダに感傷に浸っていた。

もちろん、
アヤちゃんとは1mmも付き合っていないので、
キスを数えるどころか手もつないだことが
なかったはずだ。

感情移入する曲のチョイスを少し間違ってる
ような気もしたけれど、そこについては
誰も触れなかった。
傷口に塩を塗るほど、
みんな意地悪じゃなかった。

そして、細田が振られるたびに、
周りの友人たちは缶ジュースをおごったり、
学食でパンをおごったりして励ましていた。
確か僕も学校帰りに、近くの精肉店で
揚げたてのコロッケを買って、
一緒に食べたように記憶している。

実は卒業式の直前、
同じ陸上部の後輩の女の子から
告白されていたこともあった。

「ごめん。俺、好きな子がおるから。」

と言って断っていた。
今思えば、なかなかできることじゃない。

ふと思う。

細田は6回、面と向かって気持ちを伝えて、
6回ともいい返事をもらえなかった。

6打数0安打だ。

それでも、一度も気持ちを伝えられないまま
ブロックされるよりは、案外幸せだったのかもしれない。

5回の完全シャットアウトにもめげず、
6回目に向かってバットを振り続けた細田は、今思うとなかなか格好良かった。



昔の恋愛の形と今の恋愛の形が
違うのかどうか、それは僕には分からない。

ただ、連絡先を交換することも、
関係を終わらせることも、
昔よりずっとカジュアルになった。
…ように思う。

それでも、細田の不器用な6連敗を
思い出すたびに、人を好きになるというのは
本来こういう少し面倒くさいものだったの
かもしれないと思う。


しょうもない独り言をダラダラと書いている
このnoteも、そのうち誰かに
ブロックされる日が来るのだろうか。
いや、もうされてるかも…。

細田なら、きっと6回くらい
読みに来てくれそうだけど。



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