【SS】積ん読部|#ストーリーの種
積ん読部の標準的な練習メニューは、「タワーリング」と「ノンリーディング」で構成される。
僕はそれまで帰宅部に所属していた。筋肉体操部や缶蹴り部、バーゲンチラシ研究会、闇鍋グルメ同好会等、個性的な部活が揃う学校にせっかくいるのだから、もう少し何か積極的に活動をしてみたいと思い「これだ!」と感じた積ん読部へ転部した。
積ん読部、そこは『好きなものに囲まれて過ごす快適な空間作り』が目的の部活だ。部室には夥しい数の本が、そこかしこに毅然とした様子で積まれていた。乱雑そうに見えながらも凛とした空気が漂っている。僕の部屋は積ん読部と似たような環境だが、ここできちんと学び、ただの整理整頓できていない部屋から卒業したいと思う。
入部すると、まず先輩が用意した箱の中からくじを10本引き、そのくじに書かれている本を部室内から探し出す。けっこう大変だ。大体が小説系だが、中には辞書や図鑑も混ざっている。知らない文字が並ぶ本やイラストのきれいな絵本もあった。ちょっと読んでみたくなったが、先輩から「本は読まないように。」と注意された。
本を揃えたら、自分専用の栞を作る。自分の本に常に挟み、持ち主が誰であるかを示すためだ。本に直接記名するのは美しくない行為であるし、栞を挟むことにより読書を楽しんでいる途中のアピールにもなる。僕は、割り箸袋をくるりと丸めるように折り畳み、栞にした。先輩は「積ん読の精神を、良く理解している。」と褒めてくれた。レシートを流用している部員が割と多かったようだ。そして、作った栞は適当…真ん中より前辺りのページに挟んだ。これで準備が整った。
さて、栞を挟んだ10冊の本をいかに積むか「タワーリング」の練習だ。まずは自由に積んでみるよう先輩に促され、なんとなく安定感が大事なんじゃないかと思い、大きくて重たい本を下の方に、軽そうな本は上の方に…と積んでみた。「美しくないな。」先輩はそう言って、本の並び順をササッと変えた。どこをどうしたのかわからないが、さっきよりは全然美しくてかっこいいと思った。「生花と同じだよ。」僕は生花を習ったことがないから、ちょっと意味がわからなかったが、先輩が直して積んだ順や本の向きを覚えて、同じように積む。それを繰り返して覚えるのだ。奥が深い…
次は「ノンリーディング」の練習だ。単に本を読まない…という意味ではないらしい。そもそも、何故本を積んだ状態にしてあるのか… そこを考えれば、ノンリーディングでは何をすれば良いのか自ずとわかるはずだ、と先輩は言う。深い。深すぎる… 僕は全く想像が追いつけず、思わず積んである本の1番上を手にとって、表紙をボーッとながめてしまった。「筋が良いな。」僕は褒められたが、正直まだ理解ができない。奥が深い…
他にも積んだ本の色や高さ等を考察する「CHマッチング」とか、この部活には学ぶことがたくさんある。目から鱗が落ちるとは、正にこのことだと思った。
家に帰ったら、部屋に山積みの本を使って復習してみたいと思った。
多分、部屋がますます散らかりそう…
今回のお題は、Sheafさんの『ストーリーの種』シリーズの10からいただきました。
