だって、まだ売れてないから。
2024年の秋頃から、僕たちライオンロックも参加しているネタ見せ会がある。太田プロの若手漫才師数組が、とある作家さんに毎週ネタを見てもらうというもの。
主に1〜5年目の若手漫才師を対象にしたネタ見せ会に、ずいぶんと芸歴を重ねてしまった僕たちが、直談判の末、恥ずかしげもなく毎週参加している。
初めて参加したのは、昨年のM-1グランプリ二回戦で落ちて間もない頃。
芸歴8年目にして、M-1二回戦落ちはほんとうにきつい。このままじゃだめだ。なにか変えないといけない。と思っていた矢先に、太田プロの若手漫才師がネタ見せ会を行なっているという情報を聞きつけ、僕たちは藁にもすがる思いで参加希望の連絡をした。
ネタ見せ会は、養成所の校舎のひとつの教室で行われる。久々に来た。この場所に来ると、在学中を思い出す。なにもわからない中で必死だったあの頃。毎週出される新ネタの宿題を必死で作って、これでもかとダメ出しされて、それでも必死でもがいて、そして授業終わりはいつもお決まりの居酒屋でみんなで飲んだ。笑笑 新宿西口店。
そこにいた同期は、もうほとんど辞めた。
それでもなんとか今日まで続けている。しがみついている。結果は出ないし、だからこうして藁にもすがる思いで若手向けのネタ見せ会に直談判して参加させてもらってるわけだけど、それにしても、8年も続けてこれた。それだけは胸を張っていいんじゃないか。そんなことを考えながら、僕は教室の扉を開いた。
だだっ広い教室に、5組の漫才師。僕たちが入ってきたことで、先に教室で準備していた後輩たちが、少しピリッとするのがわかった。ごめんよ。急にこんなにも芸歴の離れた先輩が参加したら緊張するよね。申し訳ない。
ほどなくして作家さんが入ってきた。その作家さんは、元漫才師。僕は彼の現役時代の漫才が好きだった。子どもの頃、テレビで見ていた。芸人を辞めてから出版された彼の本も読んでいた。そんな方に自分たちの漫才を見てもらえるなんて、どんなに幸せなことだろう。嬉しい気持ち半分、怖さ半分。でも、彼はとても気さくで、「怖かったらどうしよう」と思っていたのが馬鹿らしくなるほどに明るくて優しい人だった。
後輩たちが順にネタを披露していく。何度か挨拶程度の会話をしたことはあるが、まだネタを見たことがない後輩ばかりで、「どんなネタするんやろ。」と思いながらネタを見た。
みんな、おもしろかった。本当におもしろかった。僕は気付けば声を出して笑っていた。
笑ってる場合じゃない。自分たちの順番が廻ってきた。後輩たちが見ている前でネタ見せ。養成所の教室。ライブとは全然違う、独特の緊張感。
最初の授業は、「ストロー」でいくと決めていた。M-1二回戦で落ちたネタ。正直に言って、自信のあるネタ。
なんて言われるんだろう。
「このネタやったんか。そら落ちるわ」じゃありませんように。
それだけを願いながら漫才をした。
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