2025月笑最終戦。
あんなに緊張しながら歩いたはずの家からの道は、たった数時間経っただけなのに、気持ち良いくらいにいつも通りの帰り道で。あまりにいつも通り過ぎる夜空を見上げて、僕は思わず笑ってしまった。
本番前まで、あんなに痛くて声がかすれていたはずの喉も、終わった途端、何事もなかったかのように通常運行。
どしどし日常に戻っていく。何事もなかったかのように。
「今日で人生変わらない。」
緊張しいな自分に、出番前、いつも心の中で唱えている言葉。
そうは言うたけど、ほんまに変わらんのかい。
12/15(月)。
太田プロライブ「月笑」クライマックスシリーズ。
年間ポイントランキング1位でファイナルに出場するも、2位通過の青色1号に敗れ、優勝を逃した。
毎月そうだった。舞台袖で聞こえてくる、青色さんの出番中の爆音。
でも、ここを超えなきゃいけない。この人達に勝つためにやってきたから。
ネタは、「カギ」。
今年作った漫才の中でもかなり思い入れのある一本。新ネタとしておろしたのが3月。およそ9ヶ月間このネタと向き合ってきた。
特に最後の1ヶ月。芸歴9年目でここまで追い込んだのは初めてだった。こんなにネタ作りをしたのも、こんなにネタ合わせをしたのも。何度も何度も向き合った。絶対に勝ちたい。その気持ちだけで積み上げた「カギ」の台本は、第12稿になっていた。
もう、このネタを当日100%の出来でやって負けたら、それは単純に実力が敵わなかった、と思えるまで追い込んだ。
きっと大丈夫。これなら勝てる。
そんな思いで、当日を迎えることが出来た。
あとは、本番でぶつけるだけ。
出番10分前。喫煙所に入った瞬間、先にいたモシモシ・まぐろさんに
「あーそれダメなときの顔だー!」
と言われた。緊張で飲み込まれてガチガチになっていた僕は、その一言で一気に心が軽くなった。まぐろさん、ありがとうございます。
先攻の青色1号さんを舞台袖で見る。爆音。
でも、諦めなかった。これを超えるだけのことはやってきたから。
絶対勝てると信じて疑わなかった。
そして迎えた本番。久々に立つイイノホールの舞台。満員のお客さん。
落ち着いて、楽しんで、のびのびと漫才ができた。
昨日の漫才は、間違いなく僕たちにとって、
今年一番の漫才でした。
完敗でした。
青色1号さん、本当におめでとうございます。
結果発表のあと、相方とふたりで喫煙所に行った。正々堂々と戦って完敗して、清々しい僕とは対照的に、珍しく相方がひどく落ち込んでいた。
あいつは「小林くんを勝たせてあげたかった。」とつぶやいた。
なんかもう、それが感無量だった。こんなところで書くのが痛いこともわかってる。でも、本当に、本当に嬉しくて。
そんなん思わんでええねん、お前の人生やねんから。
コンビ組んで10年目。サボりで、いっつも楽な方に逃げてたあいつは、もうとうにいなくて、いつからか目の色を変えて努力するようになってる。そんなことはもう、隣にいてひしひしと感じてるから。本気になってるの、知ってるから。
帰り際、「前見ていくしかないで。」と言われた。
誰が言うてんねん。
来年見返そう。
不思議なほど悔しくない。
だって、やり切ったから。
でも、
ああ、勝ちたかったなあ。
