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ひきこもり支援ハンドブックから考える「これからの不登校支援」、対話を通しての「自立」から「自律」へ。

スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)として学校現場に関わる中で、不登校に関する相談は一番多く、その背景は多様で重層的でみんな違うと感じます。

「どうすれば学校に戻れるだろうか」
「いつになったら動き出せるのだろうか」
「単なる甘えではないだろうか」
「このまま休んで、勉強の遅れはどうなるのか 」

そんな声もよく聞く中で、状況が中々変わらない時は、私自身も途方にくれてしまうことがよくあります。

「支援のゴールをどこに置くべきか」でゆさぶられる日々なのですが、2025年1月に厚生労働省から発行された
ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~
を参考に改めて考えてみたいと思います。

「自立から自律へ」という少しわからりずらいキーワードも出てきますが、ひきこもり支援の枠組みを超えて、これからの「不登校支援」にも重要な示唆を与えてくれていると思うので、自分なりにかみ砕いて整理してみたいと思います。

あくまでも、私の主観による作業なので、間違っていたらすみません。どうぞ借りの意見としてご覧ください。


1. ハンドブックがもたらした「ゴール設定」の転換

これまでの不登校支援やひきこもり支援では、無意識のうちに「学校復帰」や「就労・社会参加」が直接のゴールとして設定されていると思います。しかし、『ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~ 』では、支援の目標について次のように定義されています。

支援の目標は「自律」

「ひきこもり支援では、本人やその家族が、自らの意思により、今後の生き方や社会との関わり方などを 決めていくことができる(自律する)ようになることを目標とします。本人が社会参加を実現することや就労することのみを支援のゴールにはせず、自律に向かうプロセスとしてとらえることが必要です。 ここで言う自律は、「自身を肯定し、主体的な決定ができる状態」のことを指します。支援する際には、 支援者も本人やその家族も、ともに「自律」することができるよう、互いにプロセスを共有していきます。」 

p14 ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~

ここでの「自律」の意味は、「自身を肯定し、主体的な決定ができる状態」を指しており、本人が社会参加を実現することや就労すること」といういわゆる「自立」だけを目標にするのではなく、自律」に向かうプロセス自体を支援目標にしていると私は解釈しました。

それから、「支援者も本人やその家族も、ともに「自律」することができるよう、互いにプロセスを共有していきます。」という文章も印象に残ります。
支援者の「自律」をどうイメージすればいいのでしょうか。他の箇所に「自律」の説明で、『尊厳や主体性、自尊感情を回復する 』という意味合いもあるとのことなので、お互いに主体性や尊厳、自尊感情を尊重し合いながら、(それぞれで違うかもしれない)よりよく生きるための方向性を共有していくというイメージが私の中に湧いてきました。

「自立ではなく自律 」

「ひきこもり支援において目指すべき姿は、一人ひとりの背景や心情をとらえずに社会参加や就労のみを求めることではなく、本人のペースに合わせながら、本人やその家族が、自 らの意思により、自身が目指す生き方や、社会との関わり方等を決めていくことができるようになる こと(自立ではなく自律)としました。」

p14 ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~

とあります。私の中で、「自立」と「自律」の違いをまとめると、
「自立」 が、一人暮らし、就労・登校などが 「一人でできるようになること 」 を指しているのに対し、 
「自律」 は 「自分の人生のハンドルを自分の手で握れていること」 を指しているイメージです。

支援の目的を「自律」に置くことで、本人が自分のペースや希望に沿った形でステップを踏めるようになり、支援者も「焦らせずに寄り添う伴走」が可能になるという点が大事なのかなと思います。

さらに、ハンドブックにおける「ひきこもり(支援対象者)」の定義自体も、単に「6か月以上家庭にとどまっている」という期間ではなく、「社会的に孤立し、生きづらさを抱えている状態(期間は問わない)」へとアップデートされました。

そして、

「複合的な課題に対する 長期的な支援が必要な事例も多く、支援者が疲弊し、バーンアウト(燃え尽き)してしまうこともみ られることから、燃え尽き防止のための支援者へのサポートも急務」

P9 ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~

との文言もあります。 支援者にも負荷がかかり過ぎず、安心を感じながら支援を継続できる仕組みも大切になってくると思います。

表でまとめてみる

ここまでのことを、従来の引きこもり支援と比較しながら表にまとめてみました。



2・不登校支援に重ねて考えてみる

以上のことは、不登校支援においてもそのまま当てはまることだと思います。 「学校に行くこと」そのものをゴールにするのではなく、子どもが「自分を肯定し、自分の人生を自分で決めて歩み出せる状態(自律)」を目指せるといいなと思います。

不登校支援においては、

「不登校児童生徒への支援は、『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」

「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日

と明示されています。ここでは「自立」という言葉が使われています。

ここに「自律」のイメージを加味すると、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えたり、社会的に自立するというプロセスにおいて、「自分はこれからどう生きたいのか」「社会とどう関わりたいのか」を自分自身の意思で決められるようになるために、本人のペースに合わせて伴奏支援するというイメージになると思います。

(「自律」という考え方においても、価値観としては、社会との関わりを持つことや、主体的に意思決定するということには肯定的な意味づけをしていると私は思います。)

私の中での「自律」を尊重する支援では、「本人がどうしたいか」を対話を通じて一緒に探し(本人の気持ちを聞きながら、押し付けで無い形で、こちらの気持ちや大切にしている価値も共有する。)、そのプロセスの中で、子ども自身がどうするかを決めていけるといいイメージです。


3・本人やその家族、支援者がお互いに自律しながら行える伴走支援とは 

お互いに主体性や尊厳、自尊感情を尊重し合いながら、よりよく生きるためのプロセスを共有していくには、具体的にはどうすればいいのでしょうか?支援者も「焦らせずに寄り添う伴走」をするには、具体的にはどうしていけばいいのでしょうか?

ここからは私の持論ですが、「オープンダイアローグ(対話型支援)」の考え方がとても参考になると思っています。対話型の支援は、本人だけなく、家族や支援者の肩の荷もおろしながら、関わる人達が安心を感じながら実践できる支援だと思います。

私自身が、不登校支援において「対話型支援」を取り入れて実践する際、大切にしているポイントを整理してみました。


① 1対1ではなく「関係者みんな」で集まる

支援者と本人の1対1だと、緊張やコントロール性が生じやすくなるので、本人・保護者・教員・SC・SSW等が一緒に集まり、安全な対話の枠組みと対等な関係性の中で、お互いの価値を尊重し合いながら、オープンな場で対話を重ねられるといいなと思います。安全な対話の枠組みのイメージは、例えば、「・聞くことと話すことを明確に分ける・お互いの世界観を尊重する・ゆっくり、落ち着いて話す・価値観の押し付けをしない」などです。


② 本人を「協力者」として招待する

「あなたのために話し合う」のではなく、関係者みんなが、不安やあせりを抱えた当事者だと思います。例えば、保護者の方の不安やあせりについて話し合う際の関係者として、「私の心配ごとに関して、あなたの気持ちや意見を知りたいから力を貸してほしい」というスタンスで本人を対話の場に招待することができると思います。「聴くだけの参加」や「オンライン参加」「沈黙」「途中退席」「参加しない選択」も考慮し、本人や関係者が安心して参加できる場を作れるといいなと思います。


③ 保護者も「不安や焦りのある当事者」

不登校の背景には、保護者自身の不安や焦り、孤立感が大きく影響していると感じます。保護者の方の不安や焦り、辛さを丁寧に聴き、ご夫婦やご家族と一緒に対話を重ねることで、家庭内の空気感が和らぎ、本人の安心感につながることがよくあると思います。仮に本人が参加できない状況でも、保護者の方、できれば夫婦の場合は夫婦での対話の場が継続して作れるといいなと思います。「透明性」という観点では、話し合いの内容を本人にも共有できるといいなと思います。


④ 「やめさせる」のではなく「やむ」状態へ

不登校を無理に「やめさせる」のでもなく、ただ放置するのでもない。安心できる他者との交流(対話)の中で、心のエネルギーが溜まり、子どもが自分の意思で動き出せる「やむ(自然と動き出す)」状態を待つことが大切だと思います。

私の作ったイメージ図はこちら

⑤広い意味での対話

「対話」を安心できる他者との交流と捉えると、例えば、一緒にゲームをしたり、一緒に料理をしたり、散歩をしたり、スポーツをしたり、雑談をしたり、歌ったり、踊ったりと、色々な一緒に行う交流が「対話」になると思います。ただ、その際に気を付けないといけないのは、交流の中でコントロール性や、価値観の押し付けが起きないようにすることです。


おわりに:子どもが自らの意思で未来を選ぶために

子どもを無理に引っ張るのではなく、子どもが「自分自身の人生」を主体的に選び取っていけるよう、そのプロセスを一緒につくり、寄り添う伴走者になれるといいなと思います。それには、まず周りの大人が、自分自身に安心を感じて「自律」していることが大切だと思います。

(筆者:スクールカウンセラー / スクールソーシャルワーカー / 戸田周公)


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