少しくらい不幸でいい|『自転しながら公転する』
別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにならないもいいのよ。
プロローグ
『自転しながら公転する』の感想を述べながら、少し自分の人生や恋愛についても振り返ってみようと思う。
2週間ほど前、帰省したときに母が読み終えたこの本を譲ってくれた。タイトルは聞いたことがある程度で、山本文緒さんの作品は初めてだった。一緒に『ノルウェイの森』の上下巻も貰い、この本を読む前にちょうど読み終えたところだった。
誰かから譲ってもらったり、勧めてもらったりして本を読むと、その人はこの描写のどんな部分に共感したのだろう、とつい考えてしまう。
母がこの本を読み終えたあと、どんな気持ちで私に手渡したのか、と今思ったけれど、そういえば私がただ「この本、読みたい!もらうね!」と言って貰っただけだった。
本作は、主人公・都の32歳から34歳までの人生を描く。私は都よりひと回りほど年下で、年齢や暮らし、学歴、職業、恋人など、都の人生は私とは離れている。だからか、ところどころ俯瞰して読んでしまっていた気もする。
しかし、ところどころでその距離感がグッと縮まり、都の抱える不安や痛みが、まるで私のすぐ隣にあるかのように感じられた。例えば、都が貫一と別れた後にマッチングアプリをしている描写など。
お洒落な人は狭量だ
お洒落な人は狭量だ。何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。
都は高校卒業後、東京のアパレルブランドで店長まで経験し、地元茨城でアウトレットのアパレルショップで契約社員として働いている。
私は、現在大学四年生で、来年からは会社員として働く。周りに高卒の子は生憎おらず、中卒・高卒で働く苦悩を知らなかった。
とはいえ、都とも共通点はある。私もファッションが好きで、大学一年生から現在までアパレルブランドで働いている。アウトレットではないが、ららぽーとで働いていたこともあるため、バッグヤードの話などには親近感を覚えた。
以前勤めていたブランドは、大手企業だったため意識したことはなかったたが、現在は駅ビルの女性スタッフだけのブランドで働き、店長や社員さんのお給料や暮らし、将来について話を聞いたり、考えたりしたことがある。きっと本当に、都と同じような暮らしや不安があるのだと思う。
「お洒落な人は狭量だ」という言葉も、自分も然り、一緒に働くスタッフのことも考えその通りだと図星だと感じた。視野を広く持ち、寛容であろうとすることは、私の大切にしている価値観のひとつである。その心持ちをそっと正されたような気がした。
学歴とか収入とか
都のお付き合い相手でもあり、結婚相手でもある貫一は、中卒の元ヤンだ。自分だったら彼とお付き合いするだろうかと考えてたが、答えは「付き合わないだろう」だった。
都も、貫一と別れた時にマッチングアプリを利用していたが、私自身も使っていたことがある。マッチングアプリはお相手の条件を絞って検索できる。私は、条件を大卒に絞って探していたことを思い出した。その条件を絞っていた理由はざっくりいうと二つだ。
①知性的な人が好きだから。中でも、自分の知らない分野を探究している人の話を聞くのが好きで、知的好奇心が満たされるから。
②結婚・子育ての際に、同じ学歴の人の方が価値観が合いやすいと思ったから。
私が、アプリを始めたきっかけは2年ほど付き合った彼とお別れしたことだ。別れたことを、知り合いの3歳と5歳のママさんに報告した際、衝撃的な言葉を言われた。
「〇〇ちゃんはその彼氏さんと別れだろうねってパパと話してたよ。彼は専門卒で、今はロードアシストの仕事をしていて、〇〇ちゃんは大卒で親も医者で大切に育てられたわけだし、結婚しないと思ってた。」
私は驚きと混乱で言葉が出なかった。まず、勝手に私と彼を評価していたことにショックを受けた。次に、学歴ってそんなに大事なのか、と考えさせられた。
このママさんは高学歴夫婦で、かなりの教育ママだった。
まだ学生だったこともあり、この件に関する答えは自分の中で完全には出ていない。それでも最近は、結局のところ、人は自分と似たバックグラウンドの人と連帯していくのかな、と考えている。
エピローグ
『自転しながら公転する』で刺激された過去の自分のエピソードをまとまりの無いまま書いてみた。
今日は、昨晩から好きな人が家に泊まりに来ていて、15時くらいにお別れした。その後、少しお昼寝をしたらまだ17:30なのに外はもう真っ暗だった。とても悲しい気持ちになった。好きな人と一緒に起きてアニメを見たり、お昼ご飯を食べたりして、素敵な1日を始めていたのに、一瞬で終わってしまったように感じて。
今は、江國香織さんの『ぬるい眠り』を読んでる。表題作の主人公は夏が嫌いらしいが、私は夏が大好きで、冬が苦手だ。暗くて、なんだか心も沈んでしまう季節を、今まさに生きている。それでももう二度とこないこの瞬間を懸命に生きてみようと思う。
今年の夏休みに短期留学でヨーロッパに行った時、帰りの便から撮った空の写真を添えて。
