宙組「黒蜥蜴」「Diamond IMPULSE」
新年度忙しすぎて、久しぶりの宝塚。
江戸川乱歩の『黒蜥蜴』は、2007年に花組で『明智小五郎の事件簿-黒蜥蜴-』のタイトルで上演されてます。
明智小五郎が春野寿美礼さま(オサさま)、
緑川夫人が桜乃彩音ちゃん(あやねちゃん)、
雨宮潤一が真飛聖さん(まとぶん)、
波越警部が壮一帆さん(えりたん)、
岩瀬早苗/桜山葉子が野々すみ花ちゃん(ののすみ)
小林少年が桜一花ちゃん。
…と、すらすら出てくるなあ。
大オチがオリジナル展開で「そんなんありか!?」と驚愕し、帰宅後に、江戸川乱歩原作(大人向けと子ども向け両方)・三島由紀夫戯曲と読んで。
とりあえず「雨宮×葉子」のカップリングは乱歩原作には無いけど三島由紀夫版にはあったのでそれに準拠した、ことだけは分かったのですが、原作を読むと尚更花組版は「あかんやろ」な改変なんですよね。
ただ複数バージョン読むと、たとえば黒蜥蜴の犯行現場が東京タワーだったり大阪通天閣だったり(花組版は上野公園)、時代設定もいろいろで、自由度が高い原作なんだなとは思えました。
そしてそこから20年近くが経過して。
花組版はその後、NHKの録画を何度も見たので結構セリフと音楽が刷り込まれてる反面、原作と三島戯曲はそれっきりなので何も覚えていない状態で、今回の「三島由紀夫戯曲を宝塚でやります、生田大和潤色演出」と発表があったわけです。
というわけで、脚本演出の方の呼称で、2007年のを「キムシン版」、2026年のを「いっくん版」と呼びます。
いっくん版見ながら、「キムシン版と大筋は一緒だな」と当たり前すぎることを思った。当たり前だ原作同じだ!
一番の違いは黒蜥蜴のキャラクター、次に大きく違うのは少年探偵団が今回はいないこと。
黒蜥蜴役を、宝塚娘役にやらせることの難しさ。
キムシン版は「娘役にできる役」に改変した。
いっくん版は「美輪明宏イメージで娘役にやらせる」を押し通した。
って感じ。
どっちも難しい!!!
ストーリーとしては明らかに今回のほうが好きなんだけど、黒蜥蜴役の春乃さくらちゃんが終始ドスのきいた発声で(宙組さん久しぶりなんでもともとこういう声だったらごめん)、これは娘役トップの役じゃないよなあと思ってしまった。
私は「トップコンビにはちゃんと恋愛やってほしい」派で、なおかつ「たまには王道じゃなく愛憎渦巻くダークな恋も見たい」派なので、全体的には好みだったのですが、しかし娘役トップに求められるものと今回の緑川夫人の特徴が違いすぎる。難しい。
ずんちゃんの明智が最高だったから、「ずんちゃん黒蜥蜴が見たかった」でも無いのですよ、うん。
(オサ様は正直、黒蜥蜴が見たかった。あの人の妖艶美女は最高だから)
しかしそれ以上にびびったのは。
この話、黒蜥蜴以外のメインキャラが全員、「やべえ奴」すぎる。
まずは明智。
率直に言って変態です。
黒蜥蜴に執着して彼女を追い詰めることへの快楽に酔っている。
普通の人とは違うものが見えているタイプ。
思えばキムシン版のオサ様もそうだった。
キムシン版には「甦った情熱」という名曲があるのですが、「黒蜥蜴ー!この男ヤバすぎるから逃げてー!」と叫びたくなる狂気があった。
原作からして明智と黒蜥蜴は「魂の双子」なんですよね。
(だからキムシン版はあんなオチなんですが。)
かつてなら、すみれコードで「純愛」の仮面を被せなきゃならなかったのが、この19年で緩くなったのか、「タカラヅカ的純愛ではないが、恋としか説明できないものがそこにあった」という描き方になったのは良かったと思う。
明智がヤバいのは、黒蜥蜴とのパワーバランス的に正しい。明智が暴走しなければ、黒蜥蜴の一人勝ちになっちゃうから。
問題は、雨宮と早苗(ってか葉子)。
まとぶんの潤ちゃんには、「あの人(黒蜥蜴)に命令されればされるほど、俺はあの人に惹かれていってしまうんだ!」という凄いセリフがありまして。
それがまとぶんのキャラにハマって、まとぶん雨宮は大好きな役なんですが。
これが今回だと、マイティに↑とほぼ同内容の銀橋ソロがありました(笑)
そこ踏襲するん!?って感じで。
まとぶんとマイティの違い(マイティはまとぶんトップ時代の花組にいましたが)は、
マイティーは「不遇な育ちで年上美女の黒蜥蜴に調教されて歪んだ」狂気を感じ、まとぶんは「どう見ても年下美少女の黒蜥蜴に『癖』が暴発した」天然感があったことですね。
狂気で言うとマイティーのほうがヤバかったけどね…
そして、早苗の替え玉・葉子。
「きちんとプロポーズされて結婚するのが夢なの」の、ののすみ葉子と、「変わりたい/攫われたい」じゅり葉子。
…いやそこで雨宮は選ばないって! 吊り橋効果でも説明不可よ。
今日会った男に「ちゃんとプロポーズして」と言い出すののすみ葉子も怖かったけど、あの狂気の雨宮と事件解決後も付き合うつもりのじゅり葉子も怖いよ。ネジが飛んでる怖さを感じる。
むしろ、ネジが飛んでるからこそ、雨宮も惚れたの? ヤバい女しか愛せないの?
って感じ。
後は致命的に役が少ないですね。
鷹翔くんの正木警部補がいい役でした。二番手があんなんだから(笑)
女賊と探偵の禁断の恋、は、いっくん、昔もホームズでやってるしなあ。
好きなんだろうなあ。
あと、キムシン版だと「売店のおかみさんに扮したあやねちゃんと、売店のおっちゃんに扮したオサ様」の銀橋がやたら長かったので、ビジュアル的に微妙なところを短くしたのは良かったと思います。
ショーはずっと楽しかった!
ずんちゃんって、桂ちゃんの面影があるとずっと思ってて、そこから好きになったんだけど(しかしあのルドルフからもう10年になるのか…)祐飛さんの遺伝子もありますね。
だからダークな雰囲気が似合うし、そういう場面があって良かったです。
あと、マイティーのセンター場面が多かったね。さすがのスター力でした。
宙組さん久しぶりだったので、二人の大きな羽に感慨がありました。
スタンド・バイ・ミーでのデュエットダンス最高だったし、初舞台生ロケットでしか摂取できない栄養があったし(笑)「M!LKかよ」と思うようなアイドル演出もあったし、退団者フィーチャーもあったしで満足しました。
