見て、光ってる /ショートストーリー
家族で冷製スープを味わっている時、娘が唐突に言った。
「ねぇ、今度ホタル見に行こうよ」
聞けば仲の良いクラスメイトがこないだ行ってきたらしい。割と近場で見られる場所があるようなのだ。
そんな訳で、我が家のホタル見物が計画された。
約束の金曜日。
学校から帰った娘はいそいそと準備をしている。虫よけ対策もバッチリだ。
「ホタルって昼間も光るのかな?」
子どもは面白いことを考える。
どうなんだろうね。光るのかな?
そんなことを考えていたら出発予定時刻が近づいていた。
ホタルの見られる場所は、割と近場とは言えそれなりに豊かな自然が確保された場所だ。
自家用車で向かう道中、娘は「蛍の光」を何度も口ずさんでいた。もっとも「蛍の光 窓の雪」以降は毎回ハミングだったが。
目的地に到着した時には、ちょうど陽も落ちていた。
駐車場から順路に沿って水辺の方へ歩いて向かう。
辺りは真っ暗。娘と手を繋ぎながら進んでいくと、おそらくここが目的の場所であろう地点に辿り着いた。
じっと目を凝らしていると、ふわりふわりと小さな光が点滅するのが見えた。
周囲の人々からも小さな歓声が上がる。
娘もわきまえていて、ヒソヒソ声で話す。
「あ、光った!きれいだね」
その時、おそらく本日のクライマックスであろうタイミングが訪れた。
複数のホタルが同時期に瞬いたのだ。
周囲からも、今夜一番の歓声が漏れる。
「すごい!宇宙みたい」
目の前には、本当に小さな宇宙が広がっていた。
「見て、光ってる。お月様かな?」
娘の指差す方を見る。
そこには、限りなく毛髪がゼロに近い紳士の頭部が、スマホのわずかな明かりに照らされて浮かんでいた。
…娘よ、キミには詩人の才能があるぞ。
はらとけいさんの「せりふ三題噺」に参加させていただきたく、執筆しました。
