青
彼に会いに行くと、
きまって絵を描いていた。
ブルーな色彩の抽象画だ。
事故に巻き込まれて彼は、
両膝から下と左腕を失った。
車椅子に座りながら、残された右手で絵筆を握り、キャンバスにブルーを重ねていく。
今日も彼は絵を描く。
心象風景を描いている。
ブルーにブルーを重ねていく。
残された右手で。
キャンバスにサインを記し、
彼はタイトルを告げる。
僕は、何も言えなかった。
彼の片方だけの腕は、
『海と空』を描いていた。
僕はその青に、勝手に憂鬱を見出していた。
塗り重ねられた青は、
ただ静かに佇む海と、どこまでも続く空と、
そして星空へとグラデーションしていた。
そこにあったのは、ただ美しい青だった。
可哀想なのは彼ではなく、
僕の方だった。
こちらの企画に参加中です。
今回のマスは「青」でした。
