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ことわざ食堂 /ショートストーリー


「黙っているのは嘘つきと同じよっ!」
女はテーブルに身を乗り出して男を責めた。

「するってぇとその旦那はもうじき泥棒になるってことかい?」
隣のテーブルの“嘘つきは泥棒の始まり”が思わず口を挟んだ。

「いや、彼女はそこまでは言ってないでしょう」
反対側のテーブルから“過ぎたるは及ばざるが如し”が小さく呟く。

「及ばざる?そんなやつは聞いたことがないウッキー」
“見ざる 言わざる 聞かざる”がはやしたてる。

「まあまあ、皆さん落ち着いて。お静かに」
奥の席の“言わぬが花”が花柄の袖で口元を隠した。

「ちょ、ちょっと何なのよあなたたち!他人の話に首を突っ込んでこないで頂戴!」
女がわめく。

「そんな剣幕で旦那を責めるから周りの俺たちも気になって食事どころじゃないんだよ」
“夫婦喧嘩は犬も食わない”が諭す。

「そうそう。そんなに目を吊り上げて怒ったらせっかくの美人が台無しだよ」
“口は災いの元”が口を滑らせる。

「キーッ!人のコンプレックスをよくもバカにしてくれるわね!」
女はテーブルをバンッと叩いた。

「ほら、言わんこっちゃない」
“薮をつついて蛇を出す”が足元のカゴをそっと押さえた。

「まあ、落ち着いて。とはいえ今のは失礼でしたね。大丈夫、吊り目なのはそんなに気になりませんよ」
“火に油を注ぐ”が完全にやらかす。

「だまらっしゃい!」
女の怒りはますます燃え上がった。

そんな騒ぎの中、いつのまにか責められていた男は既に会計を済ませて店を後にしていた。

男の名は“沈黙は金”。


こちらの企画に参加させていただきます。
(ギリギリ間に合った…)


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