見出し画像

裏側で支える人から#54

カチャカチャカチャ……



矢久保「産科病棟なんて久しぶり」♪(*‘ω‘ ≡ ‘ω‘*)♪

松尾「ほとんど来ることないからねぇ。」(・ω・三・ω・)



この日、院内保育士の矢久保と松尾は産科病棟に呼ばれていた。これまでも何度か来た経験はあるが今回はかなり久しぶりであった。



矢久保「今回の子は2人とも聴覚障害の子ね、」



松尾「と言っても1人は言うて新生児だけどね。どんなものがヒットするかわからんけど……」



そう、この日は能條さんの事務的な手続きを全て行う日であった。手続きそのものは病棟内にある小部屋で行うのだが、2人はその間の子供たちの見守りを依頼されたのだ。




矢久保「こんにちは〜保育士の矢久保です〜」



斎藤ちはる「あ!忙しいところごめんねぇ。来てくれてありがとう🙏💦」



松尾「支援は病室で行いますか?」



ちはる「そうねぇ、授乳もあるからあまり病棟からは離れたくないけど……」



矢久保「例えば私が赤ちゃんの方について、松尾がもう一人の子について離れるのはOKですか?」



ちはる「それなら!」



矢久保「じゃあ打ち合わせ通りに。」



松尾「おっけー」



矢久保「こんにちは〜(」・ω・)院内保育士の矢久保です。よろしくお願いいたします。」



松尾「同じく院内保育士の松尾です。よろしくお願いいたします。」



「こんにちは。僕の名前は〜〜です」(指文字)



矢久保「私はやくぼみおだよ」(指文字)



能條「手話できるんですね」



矢久保「専門に勉強した訳では無いですが、仕事柄何度もやり取りを重ねて身についたって感じです。」



能條「流石です」👏




矢田「能條さーん、準備完了しました。」




松尾「ですと、能條さんと親御さんが先にお手続きをお願いします。その後櫻坂市福祉課の者がお声がけしますので、又従姉さんもお願いします。お子さんは我々が見てますので。」



能條「ありがとうございます」



又姉「初めての母子分離やね😂」



能條「短時間やろうけどなんだか怖いわぁ😅」



矢久保「授乳の時間までには終わるかと思いますので。」



能條「いってきます」



赤ちゃん(  ˊ꒳ˋ )ᐝスヤァ



矢久保「耳が聞こえづらい分気づかないね」



又姉「うちの子もそうでした。でも突然気づいちゃうんですよね。」




数分後


小西「お待たせいたしました。櫻坂市福祉課です。」



又姉「またお世話になります。よろしくお願いいたします。」



小西「ですと、能條さんのことと色々手続きがあるので食堂までお願いいたします。」



又姉「いい子にしてるんだよ」(手話)



「わかってる」



病室には矢久保と松尾、赤ちゃんとお子さんの4人。聴覚障害の2人がいることもあり静かな部屋である。



矢久保「だと松尾さんよろしく」



松尾「おっけー」



松尾「少し病院の中探検してみない?」(手話)



「え!?いいの?したいしたい!」*\(^o^)/*



松尾「じゃあ行こっか。まずは看護師さんに挨拶してからね。」(手話)



ナースステーションにいた矢田に声をかけ、1フロア下にある小児科病棟のプレイルームへ。



.*・゜,(*º∀º*)、゜・*.

ε≡≡\( ˙꒳˙)/シュタタタタ

ルン⋆⸜(* ॑꒳ ॑*  )⸝ルン



松尾「ちょうど誰もいなくて良かった良かった。」



このプレイルームには、大型ブロックや遊具などの他、光遊びができる小部屋がある。元々はスヌーズレン療法の一環で設置されていたが、難聴児にとっては格好の遊び場。



「遊んでいい?」



松尾「じゃあスイッチだけ押すね。このクラゲみたいなの触ってみたり光を追いかけたりすると面白いよ♬*。」




うってかわってこちらは病室



矢久保「そろそろ手続き終わるかな?」



能條「終わりました〜」



矢久保「お疲れ様でした。赤ちゃんずっと寝てましたよ👶」



能條「初めての母子分離緊張しました……」



矢久保「これまでずっと一緒にいましたもんね。」



能條「これから退院と思うと……(´•ω•̥`)」



矢久保「ご不安な点ありますか?」



ちょうど赤ちゃんが起きたため授乳をしながらの会話。



能條「生活に関しては色々チャレンジだなと思ってるんですが、これから補聴器とか人工内耳とかになるとどれくらいお金かかるのかなぁって。又従姉からは援助するから大丈夫とは言われてるんですけど、少しでも自分で働いてお金を払いたくて。」



メモを取り、病室から出る矢久保。内線で梅澤に確認する。



矢久保「……ということなんですが。」



梅澤「それはちょうど良かった。又従姉さんの手続き終わったら掛橋さんと行くからその時話するよ。大丈夫。安心させといて。」



矢久保「そうなんですね!良かった良かった」



梅澤との内線の話をすると嬉しそうな能條さん。


その後又従姉さんの手続きも終わり、松尾と遊んでいた子どもも戻ってきた。



「すごい楽しかった!」(手話)



松尾「たくさん体動かしたから水分取ろうね。」(手話)



又姉夫「手話お上手ですね」



松尾「ありがとうございます。」



又姉「もしかして手話通訳士さんかご家族に手話話者の方いらっしゃいますか?日本手話お上手で……」



松尾「実は……私CODAなんです。両親が聞こえなくて、私と弟が聞こえる家族なんです。なので手話は家庭内の第一言語でしたね。」



又姉「そうなんですね…不束なことをお聞きしてすみません」



松尾「いいえ。皆さんとお会いできると知った時なんだか運命だなぁと思って。こんなに難聴関係の方が集合することも無いですし。」



和やかな雰囲気の中、仕事のため能條さんのご両親と又従姉さんの旦那さんがここで離脱。そこへ




梅澤「失礼します。お時間頂きありがとうございます。」



又姉「いいえ〜。色々聞かなきゃと思ってたので。」



能條「この機会にと。」



梅澤「ですと、もう一人紹介させて頂きますね。当院相談室の掛橋です。」




掛橋「掛橋と申します。よろしくお願いいたします。」



梅澤「掛橋は当院唯一の難聴当事者職員になります。普段から補聴器を付けて業務しています。」



髪をかき上げて補聴器を見せる掛橋。また1人難聴関係が揃って嬉しい病室一同。



梅澤「では掛橋の方から以前お聞きしていた補聴器と人工内耳について説明させていただきます。」



掛橋「よろしくお願いいたします。」


説明後

又姉「色々変わったもんだねぇ」ペラッペラッ



掛橋「カバーとか本当に増えました。1つのファッションアイテムみたいな感じです。」



能條「その分値段は張るのね……」( ・᷄〜・᷅ )ムムム



掛橋「メガネのように(耳の)形に合わせて作成する必要があるので安くは無いですし、人工内耳に至っては手術ですからね。あとココ最近の値上げの風受けて……。」



「僕これ欲しい」(補聴器ケースを指さす)



又姉「ああ、これか。掛橋さんこれってどこで売ってますか?」



掛橋「このカタログのこのQRコードから注文してもいいですし、ケースだけの購入は補聴器の形と型番を伝えれば電話でもいけます。」



又姉「へぇー。」カシャ



掛橋「一部の商品だけですが、ポップアップなどで売っている時があります。研究プロジェクトの一環として展開しているものもあるので、お出かけした先で、ということもあります。」



又姉「難聴のことが徐々に受け入れられているのかな…」



掛橋「はい。一昔前よりは確実に。」


CODA…Children of deaf adultsの略で、耳が聞こえない両親から生まれた健聴の子どものこと。家庭内で小さい頃から通訳として役割を与えられてきたため、精神的な負担や周囲とのギャップに苦しむ子どもも多い。

作者あとがき
遊びのプロである保育士2人に久々に登場してもらいました。松尾さんの設定は初めて入れましたがいかがでしょうか。当事者だからこそわかること、辛いことを皆で共有していたシーンでした。
なおこの後能條さん並びに赤ちゃんは無事に退院し、定期検診で通っています。

斎藤ちはる
産科病棟師長。院内の師長の中で1番歴が長く、統括の齋藤飛鳥とは同期。助産師資格も持ち、新人助産師の相談役でもある。矢田もお世話になっている。

いいなと思ったら応援しよう!

ゆらゆらゆうや よろしければ応援お願いいたします。