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【掌編小説】『おかえり』#せりふ三題噺

 夜の闇に唸り声とともに吐きあげられた黒い煙が、果てしない荒野の闇に溶け蒸気機関車を走らせる。

「しかし凄いもんだよな、こんな大きな物をどんな原理で動かしてるのか、中身を見てみたいよ」

「俺はもう何度も乗ってるからなぁ、見た事があるぜ」

 列車の中、並んで座る身なりの整ったふくよかな二人の男が酒気を漂わせ、気持ちよさそうな赤ら顔で語り合う、その向かいあった席では帽子も被らない小汚い男が、腕を組みスカーフを口元まで上げ、目を閉じ揺られている。

「それにしても変な男の話だったな、惚れた娼婦の為に? あぁ〜なんだっけか? あのお茶の名前……」

 狭い座席で身振り手振りに、続ける言葉を思い出そうとする。

「ジャスミンだろジャスミン茶……何がいいんだろうね、あんな匂いがキツイ飲み物」

 大袈裟なまでの怪訝な表情で顔の前の匂いを払うように手のひらを振る。

「まあ、この辺りじゃ手に入りにくい代物だから探しに行ったんだと、その男も随分な風来坊みたいだから、戻ってくるかどうかわかったもんじゃないけどな」

 何が面白いのか唾を飛ばし大声で笑う、その笑い声で目を閉じていた男がゆっくりと顔を上げ、細めた目で二人に向けられた眼差しに酔いが一気に冷めおののく。

「な、なんだよアンタ……帽子も被らずにさ……」

「だから置いてきたんだよ、ハットをな」


参加させていただきました、はらとけいさんの ”せりふ三題噺” !

■セリフ
 「だから置いてきたんだ」
■三題
 ・ジャスミン茶
 ・原理
 ・風来坊

 お題を見させてもらった瞬間、なぜか西部開拓時代⛏ が浮かびまして、これはイケる! まとめられる! と根拠のない訳の分からない自信で描かせていただきました✨
 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました🙇

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