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笑わなかったエリザベス一世

だいぶ前にテレビで聞いたことがある。

「中世のヨーロッパ貴族の食事は1回だった」と。

これは、1日中食べていたから1回という意味らしく、
1日1食という意味ではないらしい。

中世の貴族も庶民も食事は昼と夕方の2回。

貴族は、お客人やらおやつやらと、
食べ物が常に用意されていたから
食べる物にも、事にも困らなかったという。

「1日中食べてるんじゃ、歯を磨かなくていいね!」

とんでもございません。

これが恐ろしい地獄の入り口となります。


簡単に虫歯のでき方をおさらいします。
人のお口の中の細菌が、食べ物(糖分)を
エサにして酸を作り出し歯を溶かすことです。

つまり、食べ続けるということは、
歯を酸の中にずっと漬けておくこと。

おそろしい話です。

中世の貴族に虫歯が多かったのかと言うと
実はそうでもないらしいのです。
砂糖がまだなかったから。

歯の衛生状態は悪かったと想像できますが、
虫歯以上に口臭がすごかったらしいのです。

考えるだけで、白目向きます。 

その当時の貴族は、今でいうジビエを客人に
振舞うことがステータス。

猪や鹿を狩る際、弓矢を向けるより、
貴族の人の口臭をかけたほうが、獲物も気絶して、
簡単に捕まえられたかもしれないですね。


そして時は大航海時代。
船に乗ってやってきたのは、
甘い誘惑を放つ砂糖でした。


ヨーロッパ人はあっという間に砂糖の虜に。

イギリスのエリザベス一世も砂糖に魅せられた一人。
砂糖を歯磨き粉にして使っていたのだそう。

そして、彼女の歯は真っ黒に……。


美しいバラには棘がある。
甘い砂糖には毒がある。

それを知ることになるのは、
エリザベスが亡くなってから何百年もあとのこと。

この当時の歯科治療なんて、
歯を根元から抜くことぐらい。
まさに生き地獄。


歯は黒くなり、抜け落ち、四六時中痛くて、
夜も眠れない。
その痛みを忘れるために、また食べる。

逃げようにも逃げ道は巨大なペンチだし。

エリザベス一世は笑った肖像画を残さなかった。
歯が真っ黒だったから。
女王としても女としても、許せなかったのかもしれない。


砂糖に骨の髄までしゃぶられて、弄ばれて捨てられる。

弄んだ罪は砂糖にあるのかって?

自分で選んだんでしょ?
甘くてとろけるような思いを。

代金が後払いだっただけ。



──笑わなかったエリザベス一世──
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