日本政府、ガチャ導入。1日1回、人生が変わる
「おはようございます。本日のあなたのガチャ結果は──“人生リセマラ券(1回限り)”です」
アラームの代わりにスマホから響いたその声で、俺の朝は始まった。
ついに来たか、当たりなのかハズレなのかも分からない“壊れガチャ”。
人生リセマラ券。
その効果は、「現在の人生を1回だけ巻き戻せる」というもの。
ただし、巻き戻す前の記憶は完全に消える。
つまり──“やり直したこと”すら、やり直した本人は知らない。
学校では、今日も話題は“人生ガチャ”一色だった。
「俺の昨日のガチャ、“全校女子から好感度+30%”だったんだけど、マジでクラスの雰囲気変わったわ」
「いいなー。私、“毎晩2時に謎のオカリナが鳴る”だったよ。寝れない…」
「てか、先生! ガチャ制度、マジで憲法違反じゃないんですかー?」
誰もが笑いながら、自分の“引き”を語り合っていた。
だがその裏で、“重すぎるガチャ”を引いた者たちが静かに消えていってることを、誰も気づいていなかった。
俺の友達、相良。
彼は一昨日、ガチャで“亡くなった人と1日だけ会える券”を引いた。
「どうすんの、それ」
「……まだ決めてない」
「え? てか、誰に会うの?」
「母さん」
相良の母親は、1年前に事故で亡くなっていた。
彼はそのチケットを“使わない”まま、次の日──転校していた。
ガチャのせいか、彼自身の意思かは分からない。
でも、あれ以来、俺は気づいてしまったんだ。
“ガチャは、当たりか外れかじゃない。選択だ。”
夕方、部屋に戻るとスマホの通知が光っていた。
《ガチャ詳細:
【人生リセマラ券(1回限り)】
効果:現在の人生を“あなたが無意識に後悔しているタイミング”まで巻き戻します。
記憶は失われますが、身体は“学習された反応”を保持します。
※注意:チケットは48時間後に自動適用されます。使用しない場合、効果は強制発動されます。》
──後悔してる、俺は。
でもそれが、どの瞬間か、思い出せない。
もしかしたら、もう巻き戻したことがあるのかもしれない。
そして、何度も、何度も。
夜。スマホの通知が再び鳴った。
《おすすめガチャ:
「消された記憶を思い出せる券」
「君が死ぬまであと何日か分かる券」
「“誰か”の人生と入れ替われる券」
抽選チャンスまであと30分──》
頭がくらくらした。
誰かが、遠くで笑っている気がした。
たぶん、この制度の本当の目的は──
「人間の自由意志が、どこまで“運”に負けるか」っていう、でかい実験なんだ。
翌朝。
「おはようございます。本日のあなたのガチャ結果は──
“自分が引いたガチャを、他人が引いたことにできる券”です」
もう、俺は自分が誰だったかも分からない。
でも、なぜかそれが、ちょっとだけ楽しかった。
