夕焼けの書き換え/[夕焼けは ]シロクマ文芸部
夕焼けは嫌い。
あの日を思い出すから。
夕焼けの中、あの人は小柄の彼女を背にかばいながら言った。
「こいつのお腹には俺の子がいるんだよ。
俺がこいつを守ってやらないとダメなんだ。
こいつはおまえと違ってか弱いんだよ。お前は強い女だから大丈夫だろ」
彼女のいる男を寝取った女のどこがか弱いのよ。
「お幸せに」
ぐっと手を握りしめ、何とかそう告げて私はそこを立ち去った。。
音楽で食っていきたいという彼氏のためにいろいろ支えてきたのに。
彼と別れて二年後、新しい彼ができた。
付き合って一年、彼が私を連れてきたのは夕焼けがきれいだという名所。
夕焼けは嫌いだと伝えてあるのに。
「僕と結婚してください」
彼が夕日の前で私に指輪の入った小箱を差し出した。
「なぜ夕焼けが嫌いか知らないけど、そんな記憶、僕のプロポーズで塗り替えてよ。
僕と一緒にいろんな景色を好きになっていこう」
私は彼と結婚した。
いつでも景色の中に彼がいる。
私の嫌いな景色はもう、ない。
了
こちらの企画に
参加させていただきました。
小牧幸助さん
ありがとうございます。
見出しイラストはぽてさんに描いていただきました
