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湯気が消えるまで│夜に小さく灯る言葉

夜になると、

一日が終わったはずなのに、

気持ちだけが片づいていないことがある。

何か大きな出来事があったわけじゃない。

ただ、静かに疲れている。

音を立てずに、少しずつ。

ちゃんとやっていないわけでもないし、

かといって、胸を張れるほど元気でもない。

そんな状態のまま、夜が来る。

その感じを、

どう扱えばいいのか分からなくて、

私はよく、自分を急かしていた。

早く戻らなきゃ。

ちゃんとしなきゃ。

こんなところで立ち止まっていちゃ、だめだって。

湯船に浸かっていると、

いろいろなことが、

順番もなく浮かんでは消えていく。

家族のこと。

自分の体調のこと。

両親のこと。

友人のこと。

仕事のこと。

地域のこと。

どれも大事で、

どれも今すぐ答えが出るものじゃない。

この思考は、毎日繰り返す。

答えは出ない。


そして、

答えを求めているわけでもない。

湯気の向こうで、

それらは少し輪郭を失って、

しばらくすると、また静かになる。

考えが整理されたわけでもないし、

心配がなくなったわけでもない。

ただ、

全部を抱えたままでも、

こうして湯船に浸かっていていい時間が

確かにある、ということだけが残る。

前に進まなくてもいい。

元気にならなくてもいい。


今ここにいることを、

無理に意味づけしなくてもいい時間。

今なら、

あの夜の自分に、

もう少しゆっくりでいいと

言ってあげられる気がする。


遠くを照らすほどじゃない。


それでも、

立ち止まるには十分な灯りが、

ここにはある。


すぐに消えてしまってもいい。

また、同じことを考える夜が来てもいい。

それでも、

この場所があることだけは、

忘れずにいられたらいい。



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