少女の待ち人(上)
ここは太陽の町。
もともとは太陽の光が他の町よりも長く照らしているため、昔からこのように呼ばれている。しかし、町は枯れたりすることなく、人々はそれなりの生活はできている。
だが、誰しもというわけではない。食べていくだけで精一杯の者や、苦しい家庭もあるのが現実だ。
この町に血の繋がらない5人で住んでいる家族がいる。彼らは戦災孤児だった。
1人は20歳の青年レン。まだ少女のあどけなさが残るユリィ。そしてまだまだ子供の男の子ヤムと女の子のミン。最近まで赤ん坊だったクム。この5人でなんとかこの2年ぐらいは食いつないできた。だが、
「やはりもう無理だ、ユリィ。俺1人ではみんなの面倒はみられない」
「なら私も働く。それならなんとか」
「バカ言うな。君まで働いたら毎日誰がこいつらの面倒みるんだよ」
「でも、そうしたらどうやって」
「近くに王宮がある。また昔の俺に戻るだけさ」
「ダメよ!盗みはもうやめて!」
レンは盗みやスリの腕は超一線級の腕だった。この町に着いた時も最初はなかなか働き口が見つからず、盗みやスリで食いつないだ。だが、ユリィの良心が良しとせず、真面目に働き口を探そうと言い、レンは今の職についている。
「じゃあどうするんだ!このままだとみんな飢え死にだぞ」
「わかっている。でも、やっぱり盗みはダメよ!」
結局その日は考えがまとまらずに夜は過ぎた。
レンとユリィ。家族だが、2人は恋人同士でもある。そんな2人にヤムとミンは「いつ結婚するの」と、いつもせがんでおり、レンとユリィが口に出せずにいることを代弁してくれた。
次の日には家賃の取り立てのおばさんが家にやってきた。
「すみません。もう少し待ってもらえませんか。あと少しでお金が入るので」
「またかい。あんた達が大変なのはわかるけど、これ以上家賃払えないようじゃ、本当に出て行ってもらうよ!」
ユリィはもう限界だと感じていた。このままではなにも変わらないと。
そんなある日のこと。レンはいつも通り畑で仕事をしていると、
「そうかぁ、ついに東の王国で戦争が始まったのか」
「あぁ、東の王国は人手が足りないらしく、この辺りからも兵を募集しているらしい」
「戦争に行くのか。俺はどんなことがあったって嫌だね。今でもなんとか食っていけるし」
レンは聞いていないフリをして聞き耳を立てていた。そして仕事が終わると帰り道でそのポスターを見つけた。前金だけでもかなりの額である。そしてその夜。
「ダメよ!そんな危険な仕事」ユリィが声を荒げて言う。
「大丈夫だ。兵隊になるわけじゃない。荷物や物資を運んだりするだけの楽な仕事だ」
「でも、戦争に行くのよ!もしなにかあったら私…」
「わかっている。でも…ユリィだってわかっているだろ。このままではこの家にも住んでいられない」
「でも、でも…」ユリィは今にも泣きそうだった。そんなユリィを抱きしめレンは、
「大丈夫、契約は2年。そうしたら必ず帰ってくる。うまくいけば王宮の仕事にもつけるかもしれない」
「…うん」ユリィは頷くことしかできなかった。
「そうしたら、俺と結婚しよう」
「…うん」かすれた声で言ったが、ユリィはこの時ほど幸せな言葉はなかった。
「じゃあ、2つ私のわがままを聞いて」
「2つ?」
「1つは絶対生きて帰ってくること。もう1つは、出発前にこの町に着いた時に見た花畑をもう一度5人で見に行きたい」
「わかった。出発は明後日。明日にでも見に行こう」
次の日は5人で町はずれにある花畑を見に行った。
「レン兄、今日はどこ行くんだ」
「この町に着いた時に見た花畑さ」
「やったぁ!私花好きー」
ヤムもミンも嬉しくて先に駆け走って行った。クムはまだ1人では歩けなく、ユリィに抱っこされてはしゃいでいる。
「わー、きれい!」
初めて見た時も5人は花の美しさや数に圧倒されたが、2年前よりも数は増えていて、花の美しさも増していた。
「きれいね」
「そうだな」
ヤムとミンは大喜びで花畑の中を駆け走った。クムは自分の周りに飛び舞う蝶を一生懸命に腕を伸ばして捕まえようとした。
「ユリィ、必ず帰ってくる。その時はこの花畑で待っていてくれ」
「うん、約束よ。絶対帰ってきてね」
レンとユリィはこの花畑で会うことを約束した。その日は夕日が沈むまで花畑を眺めていた。
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※2006年~2007年頃書いた作品を一部改訂しました。
