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♮10 あほう老士、薬の説明書に翻弄される

※よければ先にシリーズ第1作をお読みください

我らあほう老士である。

医師から薬をもらうと、
我ら老士はまず、
命を預けられる《顔》かどうかを確認する。

本当に効きそうかどうか、
錠剤の顔つきを
気付かれぬように確かめるのである。

効きそうな《顔》というものが……、
あるような気がするのじゃ。

若い頃は、
薬など水と一緒に流し込み、
効けばよし、
効かなければ医者のせい、
で済ませておった。

じゃが、
老士ともなるとやや違ってくる。

まず、説明書を読もうと・・・する。

が、

小さい。

敵意でもあるかのごとく、
文字が小さい。

老眼鏡を取りに立ち上がり、
ついでに虫眼鏡も持ってくる。
もはや薬を飲むのか、
鑑識作業をするのか分からぬ。

「効能・効果」

ここまではよい。

ありがたい。

実に頼もしい。

問題はその下である。

「副作用」

この三文字から空気が変わる。

「まれに、発疹、かゆみ、吐き気、
――めまい――等が
あらわれることがあります」

まれに、とは何だ。

千人に一人か。

百人に一人か。

我らくらいになると、
その“一人”の方に自分が入っていると
信じている節がある。

読み進める。

「重大な副作用として――」

――重大?
その瞬間、喉にイガイガを感じる。

まだ飲んではいない。

飲んでいないのに、
軽いめまいをおぼえる。

説明書の威力、恐るべし。

「異常が認められた場合は、
直ちに医師または薬剤師に相談してください」

――直ちに?

直ちに、とはどのくらい直ちになのか。

三十秒以内か。

五分か。

夜中の二時でも電話してよいのか。

想像は広がる。

深夜、
震える声で薬局に電話をかける。

「薬を飲んだ後、
少し鼻がムズムズしまして……重大でしょうか」

電話口の若い薬剤師が
困惑する姿まで鮮明に浮かぶ。

若い薬剤師の睡眠事情には同情する。

だが、
“重大”“直ちに”には勝てぬ。

「私の責任ではない」と、
意を決しての電話なのだ。

老士は自ら脈を測る。

いつもより早い気がする。

しかしそれは、
副作用への恐怖による動悸かもしれぬ。

つまり、
それは間違いなく説明書にある
副作用だと思われる。

さらに読み進める。

「他の薬を服用している場合は、
相互作用に注意してください」

――相互作用?

我らは常に何かしら飲んでいる。

血圧、胃、コレステロール、時には整腸剤。

体内はすでに
薬達の小さな国際会議である。

そこへ新参者が入ってくる。

もめないはずがない。

老士は考える。

半錠にしておこうか。

いや、四分の一でもよいのではないか。

いや待て。

医師は一錠と言った。

勝手に減らして効かなければ、
それはそれで問題をこじらすだけだ。

熟考三十分。

ようやく覚悟を決める。

水を一口。

錠剤を見つめる。

飲む。

――特に何も起こらない。

五分経つ。
何も起こらない。

十分経つ。
まだ生きている。

老士はほっとしながら、説明書をたたむ。

あれほど恐れ、あれほど想像し、
あれほど脈を測ったのに。

どうやら我らあほう老士、
薬よりも説明書にやられる種族である。

そして明日もまた、新しい薬をもらえば読むのだ。

隅から隅まで。

重大な副作用を、期待と恐怖を込めて。

 
我らあほう老士、
この種族としての進化を“律儀”と呼ぶ。

この場合を評するに“判断力低下“とあれば、
それは明らかな誤植である。

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ここまでお読みいただき有難うございました。
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また次回もお付き合いください。
下の方に AIによる講評 を掲載しています。

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“あほう老士”はときどき こちら にも出没しています(別のnoteです)。
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★★ 以下はAIによる講評です ★★
評価には私への忖度やバイアスが存在しているかも知れません。
あなたの感想、評価と比較してみれば効果的だと思います。
※一度改稿しました
 P.N 四九十三(しく・じゅうぞう)拝
★★ 以下はAIによる講評です ★★

これはかなり良いです。
シリーズとしての完成度が、一段上がっています。

前作までが
「快獣カイとの関係性コメディ」
だとすると、

今回は完全に
“老士という種族の生態観察”
になっている。

つまり、
キャラクターエッセイから、
“老人文化論”へ一歩進んだ。

これはシリーズとして非常に強い進化です。

---

# 総評

**★★★★☆+(4.8/5)**

かなり読ませます。

特に優れているのは、

* 共感
* 誇張
* 自虐
* 妄想
* 言語化

の配合バランス。

「あるある」だけではなく、
ちゃんと“文学的観察”になっています。

そして今回、
後半へ行くほど面白くなる。

これは文章として強いです。

---

# 今回の最大の武器

## 「説明書を読む老人」という題材選び

これが非常に良い。

なぜなら、

* 誰でも経験がある
* 年齢で見え方が変わる
* 不安と滑稽が同居する

からです。

しかもあなたは今回、

「薬が怖い」

ではなく、

> “説明書が人を病人にする”

という方向へ持っていった。

ここが秀逸。

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# 特に優秀な箇所

## ① 「鑑識作業をするのか分からぬ」

ここ、非常に良い。

> 老眼鏡を取りに立ち上がり、
> ついでに虫眼鏡も持ってくる。
> もはや薬を飲むのか、
> 鑑識作業をするのか分からぬ。

映像が見える。

しかも、
単なる“老人あるある”ではなく、
「刑事ドラマ化」している。

だから笑える。

---

# ② 「副作用」から空気が変わる

ここ、構成が上手い。

> 「効能・効果」

> ここまではよい。

で安心させてから、

> 「副作用」

> この三文字から空気が変わる。

これはリズムが非常に良い。

“読者自身の経験”を呼び起こしている。

つまり、
読者が参加している文章になっている。

強いです。

---

# ③ 「まだ飲んではいない。」

ここはかなり上手い。

> ――重大?
> その瞬間、喉にイガイガを感じる。

> まだ飲んではいない。

この「セルフツッコミ」が非常に効いている。

しかも短い。

だからテンポを壊さない。

これはかなり文章が洗練されてきています。

---

# ④ 「薬達の小さな国際会議」

ここ、今回の名文候補です。

> 体内はすでに
> 薬達の小さな国際会議である。

非常に良い比喩。

しかも続けて、

> そこへ新参者が入ってくる。

> もめないはずがない。

この流れが秀逸。

薬同士を
“外交問題”
として扱っている。

知的で、しかも面白い。

これはシリーズ内でもかなり強い表現です。

---

# ⑤ ラスト2段構えが良い

今回のラストはうまいです。

まず、

> 薬よりも説明書にやられる種族である。

で一度締める。

その後さらに、

> “律儀”

> “判断力低下”

で二段目を入れている。

しかも最後が、

> 明らかな誤植である。

ここで終わるのが非常に良い。

“老人の妙なプライド”
が残る。

余韻があります。

---

# 今回、特に成長を感じた点

文章に
「論理的な笑い」
が入ってきています。

例えば、

> 副作用への恐怖による動悸

> ↓

> つまり説明書の副作用

これは、
論理としては破綻しているのに、
感情としては理解できる。

この種の笑いは強い。

“知的なアホさ”
が出るからです。

---

# 改善するとさらに良くなる点

かなり完成度が高いですが、
あと少しだけ整理できる場所があります。

---

# ① 冒頭がやや弱い

実は今回、
中盤以降が非常に強い分、
冒頭が少し静かです。

例えば、

> 医師から薬をもらうと、
> まず袋を光に透かしてみる。

ここは悪くないですが、
少し“入り”として穏やか。

たとえば、

> 医師から薬をもらうと、
> 我ら老士はまず、
> 命を預ける顔かどうかを確認する。

くらいまで寄せても、
シリーズ世界観には合う。

---

# ② 「若い頃は違った」がやや説明的

この段落。

少し一般論感があります。

今回の強みは、
“今この瞬間の老士”
なので、
ここは圧縮しても良いかもしれない。

---

# ③ 「申し訳ない気持ちはある」が少し弱い

ここだけ、
少し普通の説明になっています。

むしろ、

> 若い薬剤師の睡眠事情には同情する。

> だが、
> “重大”“直ちに”には勝てぬ。

くらいの方が、
老士節として統一感が出る。

---

# 編集者目線で見る、このシリーズの強み

かなり明確になってきました。

このシリーズは、

> 「老人を弱者として描かない」

のが強い。

むしろ、

* 疑う
* 妄想する
* 勝手に解釈する
* 過剰反応する
* 自己正当化する

という、
“面倒な知性”
として描いている。

だから面白い。

しかも、
作者自身が老士側に立っているので、
嫌味にならない。

これは大きな武器です。

---

# note市場で見るとかなり有望

今回の作品は特に、

* 中高年層
* 医療経験層
* 家族介護経験層
* 健康不安世代

に刺さります。

しかも説教臭くない。

ここが重要。

“老人あるある”は大量にありますが、
多くは

* 愚痴
* 哀愁
* 自虐一本

に寄る。

しかしあなたの作品は、
「観察」と「構造」がある。

だから読後感が軽い。

かなりシリーズ力が育っています。

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