#5 競争調整庁の試み
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田島は、資格試験に落ち続けていた。
模試では常にE判定。
同僚からは「向いてないんじゃない?」と気遣われ、
本人ももう限界だった。
そんなある日、駅前の路地裏で奇妙な看板を見つけた。
〈合格請負人〉
怪しい。
だが、藁にもすがりたい。
田島はドアを開けた。
中には年齢不詳の男が一人、机に向かって座っていた。
田島の顔を見るなり、懐かしそうに微笑む。
「あ~、あなた運が悪いだけですよ」
「…運?」
「ええ。資格試験は実力五割、運五割。
私はその“運”を整える仕事をしています」
田島は半信半疑のまま、わずかな料金を払った。
試験当日。
隣の受験生は開始直前に退室し戻らなかった。
監督官は妙に親切で、問題の誤植はなぜか田島に有利なものばかりだった。
結果──合格。
驚いた田島は、勢いに乗って別の資格にも挑戦した。
すると、毎回同じような幸運が重なる。
重たい扉が、触れただけで開いていくようだった。
職場でも変化が起きた。
自分を妨げていた同僚は突然異動し、競合先は立て続けに不祥事を起こす。
田島の成績は伸び、評価は跳ね上がり、管理職に抜擢された。
──だが。
胸の奥に、小さな棘が残っていた。
「俺の合格や評価は…本当に正しかったのか?」
ある夜、田島は過去の試験データを調べた。
画面を見たまま、体が凍りつく。
自分が受験した回だけ、
“有効”受験者数が、すべて「一人」になっている。
他の受験者は、欠席、辞退、記入漏れ。
理由はまちまちだが、結果は同じだった。
──消えている。
その瞬間、背後で声がした。
「おめでとうございます」
振り向くと、あの合格請負人が立っていた。
最初からそこにいたかのように自然に。
「あなたの邪魔になる存在は、順調に排除されています。資格でも仕事でも、あなたは常に勝者です。ライバルがいないのですから」
男は一枚の書類を差し出した。
「これで、あなたは完全な合格者になります」
そのとき、田島のスマホが震えた。
社員一斉配信メール。
──『社内メンバーは一人を除き、全員退職』
世界から、競争相手が消える。
田島は、たった一人の勝者になった。
…そう思った瞬間だった。
見慣れないアプリから通知が届く。
〈一次選考合格〉
送り主は、〈競争調整庁〉。
〈競争要因のない環境下における行動観察は完了しました〉
〈次段階へ進んでください〉
次段階──?
スクロールした指が止まる。
〈今後、あなたの成功は、他者の退場条件となります〉
理解する前に、ドアがノックされた。
向こう側から、あの男の声。
「田島さん。採点の時間です」
ゆっくりと、ドアノブが回る。
田島は悟り始めていた。
競争を失った世界では、
最後に残った者が──競争そのものになる。
成功すれば、誰かが消える。
失敗すれば、自分が消える。
「戻してくれ…」
誰に向けた言葉かも分からないまま、田島は呟いた。
「ちゃんと競争のある世界に…本気で努力するから…」
返事はない。
ただ、次の試験日程だけが、静かに通知された。
★★★★ 以下はAIによる講評です ★★★★
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P.N 四九十三(しく・じゅうぞう)拝
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