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※ 作品は最後まで無料で読めます

 少志戻朗(すこし・もどろう)が転居したアパートの窓には、入居サービス品だという「特殊ブラインド」が取り付けられていた。
 パッケージには、こう書かれている。

――外の景色を、美しく、好ましく映し出します。

 安っぽい宣伝文句だ、と少志は思った。だが翌朝、半信半疑でブラインドを上げた瞬間、その考えは揺らいだ。

 窓の向こうには、どこまでも澄んだ青空が広がっていた。雲一つない、理想的な朝だった。

 ところが外へ出ると、現実の空は重たい雲に覆われていた。陽は鈍く、風も冷たい。
 振り返って部屋の窓を見ると、ブラインド越しの空だけが、変わらず晴れ渡っている。

 少志は気味の悪さを覚えながらも、その景色に次第に惹かれていった。仕事へ向かう前、帰宅後、そして眠る前。ブラインドを上げれば、そこにはいつも「望ましい世界」があった。

 数日後、異変に気づいた。
 景色の中に、人影が立っていたのだ。

 遠く、空と地平の境目に、黒い点のような影がある。じっとこちらを見ている気がした。
 だが窓を開ければ、そこにあるのは色褪せた街並みと、荒れた空気だけだった。

 翌日、人影は少し近づいていた。
 その翌日には、窓のすぐ外に立っていた。

 輪郭は歪み、細長い身体は微かに震えている。ノイズのように存在が揺らぎ、確かな形を結ばない。それでも“視線”だけは、はっきりとこちらに向けられていた。

 恐怖に耐えきれず、少志はブラインドを掴み、力任せに引きちぎった。

 ――その瞬間。

 窓の外に広がっていたのは、かつて見たことのない光景だった。
 大地は荒れ果て、空は黒雲に覆われ、建物は骨組みだけを残して朽ちている。そして、あの歪んだ生物たちが、複数、こちらを覗き込んでいた。

「気づくのが早すぎましたね」

 誰かが、そう言った。

 次の瞬間、少志は彼らに囲まれていた。
 彼らはため息交じりに言葉を交わしながら、淡々と告げる。

「あなたは旧人類の生存個体です。適応反応を観察していました」

 理解が追いつかない。だが言われてみれば、記憶の奥底に、ぼんやりとした白い部屋や、何者かの視線が蘇る気がした。

 そのときだった。

 空に、巨大な黒い格子が現れた。
 軋む音とともに、それがゆっくりと開いていく。

 荒廃した世界の“天井”がめくれ、その向こうに、無機質な構造物が姿を現した。巨大な研究施設のようだった。

「被験環境、第三段階を終了します」

 天井から、無感情な声が降ってくる。

 少志と観察生物たちは、ただ互いを見つめ合った。
 誰が観察者で、誰が観察対象なのか、すでに判別はつかなかった。

 突然、施設の照明が落ち、すべてが暗闇に沈んだ。

 次の瞬間――

 目の前に、眩い光が灯った。

 巨大な広告パネルだった。

『ご体験ありがとうございました!
 多階層没入型ブラインド “InSight-7” 無料お試しはここまでです。
 続きは有料版でお楽しみください』

 少志は呆然と立ち尽くした。

 視界の端に、転居したばかりの味気ないアパートの天井が見えた。
 窓には、新品同様のブラインドが、何事もなかったかのように掛かっている。

 そして今、その向こうに映し出されているのは、現実でも未来でもなかった。

 ただの――有料版への案内だった。

★★★★ 以下はAIによる講評です ★★★★
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      P.N 四九十三(しく・じゅうぞう)拝
★★★★             ★★★★

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