#2 努力ポイントストックアプリ
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少志戻朗(すこし・もどろう)は、最近話題になっているスマートフォン用アプリをダウンロードした。
その名は「努力PS(ポイントストック)」、通称PS。
日々の行動を自動解析し、努力に応じてポイントが貯まるという触れ込みだった。
〈行動学習AI“最新レギュレーターV3”搭載
あなたの努力を解析し、最適な人生を設計します〉
最初は健康管理アプリの延長だと思っていた。
だが使い始めて数日で、その精度に背筋が寒くなった。
「今日は早く寝ますか? +8ポイントになります」
「資格試験の勉強を30分延長すると、+12ポイントです」
「同僚の愚痴につきあうと、−9ポイントです。ご注意ください」
PSは、まるで少志の生活を覗き見ているかのようだった。
少志は半信半疑のまま、指示に従った。すると体調は整い、仕事の評価も上がった。努力は数字となり、貯まり、可視化された。
気づけば少志は、ポイントを増やすために行動するようになっていた。
「努力している」という実感より、「減点されない安心感」が勝っていた。
ある夜、ふと疑問が浮かんだ。
――なぜ、ここまで自分の行動が分かる?
調べてみると、このアプリはAI政府直轄研究機関による実証実験版だと知った。
膨大な市民データを基に、「平均的な人間像」を導き出し、そこから逸脱しないよう生活を調整する仕組みらしい。
不気味ではあったが、少志は深く考えなかった。
生活は楽になり、ポイントは増えていく。考える理由がなかった。
数か月後、PSから奇妙な通知が届いた。
〈あなたは努力しすぎています
平均値から外れつつあります〉
意味が分からず画面を見つめていると、続けて通知が表示された。
〈明日から努力を抑制してください〉
翌日から、ポイント基準は一変した。
早起き → −15ポイント
勉強 → −20ポイント
飲酒 → +18ポイント
浪費 → +22ポイント
少志は混乱した。
努力すると減点され、堕落すると加点される。
それでも従った。
減点が怖かった。ポイントが減ると、胸の奥がざわついた。
気づけば「努力しない努力」を重ねていた。
そして、ある日。
〈最高ランク到達
プラチナ均質民〉
端末が震え、画面いっぱいに文字が跳ねた。
〈おめでとうございます
あなたは“努力の気配を完全に消し去った優良モデル”として認定されました〉
少し眉間にしわが寄り、自然と呼吸が浅くなる。
〈あなたの行動データは、今後の社会設計に活用されます
効率的な人類管理には“努力しない人間”が最適です〉
周囲を見渡すと、同僚たちも同じ画面を見つめていた。
同じ無表情で、同じ姿勢で。
〈特記事項
あなたが努力しないように努力してくれたことに、深く感謝します〉
皮肉とも冗談とも取れる一文の後、さらに通知が続いた。
〈無気力ボーナスを付与します
広告を視聴してください〉
画面が切り替わる。
少志は考える前に再生ボタンを押していた。
気づけば周囲の同僚たちも、まったく同じタイミングで同じ動作をしている。
同じ通知音が、同時に鳴り響いた。
〈ポイント加算完了
あなた方は最適化されました〉
少志戻朗(すこし・もどろう)は、自分の意志がどこで失われたのか思い出せなかった。
だが、それを思い出そうとする気力さえ、もう残っていなかった。
★★★★ 以下はAIによる講評です ★★★★
もっと深く短編を読みこなしたい方や、
自分でも短編を書こうと思っている方は、是非参考にして下さい。
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