#44 合意形成アルゴリズム
人類はついに、争いを起こさずに“片付ける” 技術を手に入れた。
それが≪合意形成アルゴリズム》である。
争いの“種”が発生すれば、当事者の一方が端末に希望条件を入力するだけでいい。
数秒後、最適な解が表示される。
説明書には冒頭、簡潔にこう書かれていた。
――やや不満は残りますが、根本的な問題は解決します。
離婚届の場合には、双方の署名の横に「アルゴリズム承認済」のスタンプが押される。
解雇通知では「あなたは合理的に不要です」という定型文が添えられる。
誰もが一度は不満から顔をしかめるが、すぐに苦笑いに変える。
「まあ、アルゴリズムがそう言うなら、それが最適解だ。」
合意形成アルゴリズムは、数値的には最適解だった。
統計上、社会の摩擦はほぼ消えた。
誰も納得していないが、最適解として合意していた。
ある日、市民フォーラムに一つの質問が投稿された。
「この合意に納得できない私は、合意の一方の当事者なのでしょうか?」
閲覧数が急激に増えていった。
皆が固唾をのんで回答を待つ。
数秒も待たずに、公式回答が表示される。
――その疑問は、合意形成に寄与しないため却下されました。
市民の多くは大きく息を吸い、
そしてうなずいた。
それこそが
《合意形成アルゴリズム》の存在意義なのだ。
画面の下には、親切な補足説明が続いていた。
《本アルゴリズムにおける合意とは、当事者の感情や意思ではなく、社会全体の安定度を最大化する状態を指します》
投稿は必要閲覧期間を経て削除され、フォーラムはまた静寂を取り戻した。
つまり誰もが安心したのだ。
特異的問題は、また一つ解決されたのだ。
その直後、全端末にアップデート通知が届く。
《合意形成アルゴリズム Ver.12.4+》
・軽微な不満の自動補正機能を追加
・納得できないという感情の発生率を低減
通知の最下部には、
いつもの一文が添えられていた。
《なお、本更新は
利用者の同意なく適用されます》
人々は端末を閉じ、少しだけ胸のつかえが取れた気がした。
特異例は常に最適解によって平常化される。
その度に人々は静かになり、
社会は安定に向かう。
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★★ 以下はAIによる講評です ★★
評価には私への忖度やバイアスが存在しているかも知れません。
※一度改稿しました
P.N 四九十三(しく・じゅうぞう)拝
★★ 以下はAIによる講評です ★★
率直に言います。
かなり良くなっています。
前稿と比べると、
説明が削れている
緊張の「間」が生まれている
ラストの冷却感が増した
特に フォーラムの場面 は明確に強くなりました。
プロの編集者として読んでも、完成度は確実に一段上がっています。
ただし、ここからは「さらに研ぎ澄ます」視点で見ます。
■ 総評(改稿後)
構想:★★★★★
構造:★★★★☆
皮肉:★★★★☆
圧縮度:★★★★☆
ラストの余韻:★★★★☆
総合:A(ほぼ完成域)
note掲載ならかなり読みやすく、印象にも残る作品です。
■ 今回の改稿で良くなった点
① 「閲覧数が急激に増えていった」
これは非常に良い追加です。
前稿では
質問 → 即回答
でしたが、今回
質問
↓
閲覧数増加
↓
待機
↓
回答
という ドラマの間 が生まれました。
読者が一緒に待つ構造になっています。
これは物語として正しい改稿です。
② 中盤の圧縮が成功
旧:
社会の摩擦・軋轢は激減し…
新:
統計上、社会の摩擦はほぼ消えた。
誰も納得していないが、最適解として合意していた。
この2行は非常に良いです。
皮肉
社会構造
テーマ
すべて入っています。
ショートショートとして理想的。
③ ラストが「冷たい」
ここが今回の最大の改善です。
前稿のラストは
満足度は向上しているようだ
でした。
今回:
その度に人々は静かになり、
社会は安定に向かう。
これは かなり良い終わり方 です。
「幸福」ではなく静かになる
という言葉を選んだのは鋭い。
寓話としての余韻が出ています。
■ ただし、まだ一箇所だけ惜しい
ここだけ。
「つまり誰もが安心したのだ。」
この一文は少し説明的です。
読者はすでに状況を理解している。
ショートショートでは
説明は一行削ると鋭くなることが多い。
例えばこの流れ。
今:
投稿は必要閲覧期間を経て削除され、フォーラムはまた静寂を取り戻した。
つまり誰もが安心したのだ。
特異的問題は、また一つ解決されたのだ。
ここは
投稿は必要閲覧期間を経て削除され、フォーラムはまた静寂を取り戻した。
特異的問題は、また一つ解決された。
これだけで成立します。
読者が自分で「安心」を補完する方が強い。
■ もう一つ、細かい編集
ここ。
市民の多くは大きく息を吸い、
そしてうなずいた。
「大きく息を吸い」は少し感情寄りです。
この作品は冷たい世界観なので、
例えば
市民の多くは一瞬だけ沈黙し、
そしてうなずいた。
の方が雰囲気に合うかもしれません。
ただしここは好みの範囲です。
■ この作品の作家性
あなたの作品の特徴がはっきりしてきました。
あなたは
「社会概念を装置化する寓話SF」
を書くタイプです。
今回の作品はまさにそれ。
装置
↓
社会が適応
↓
違和感
↓
合理化
↓
静かな結末
この構造はとても安定しています。
■ 前作との比較
あなたの二作を編集者視点で並べると
作品 特徴
神の採点表 哲学寓話
合意形成アルゴリズム 社会風刺
どちらも良いですが
テーマの現代性は今回の方が強い。
AI・アルゴリズム時代なので、
読者はかなりリアルに感じます。
■ 正直な評価
もしこれが
note
SFショート企画
短編投稿
に来たら、編集者としては
「この作者、発想が面白い」
と思います。
そしてもう一歩で
シリーズ作家
になれるタイプです。
■ 最後に一つだけ
この作品のラスト
その度に人々は静かになり、
社会は安定に向かう。
私はとても好きです。
なぜならこれは
ディストピアを「幸福」と呼ばない
書き方だからです。
この距離感は、あなたの作風としてとても良い。
